読後感

歴史小説、ホラー、エッセイ、競馬本…。いろんなジャンルで、「書評」までいかない読後感を綴ってみます。

意地悪な食卓

2013年08月29日 | ホラー
         新津きよみ      角川ホラー文庫

 ホラーといっても化け物は出てこない、食べ物にまつわる心理ホラー短編集。

 「嗅覚」 家庭環境のせいで以上に嗅覚が鋭くなった女性の恋愛の顛末。う~ん、ありがちな結末でちょっとがっかり。「珍味」自然派志向の食生活にはまって携帯もほとんど圏外の長寿村に引っ越した友人を訪ねた女性は…。私、自然派志向、苦手です。この人もちょっとはまりすぎ、と思ったら案の定。結構面白くなってきた。
 「遺品」 亡くなった女性を偲ぶ会に集まった妹や友人たちは遺品の梅酒を飲むが、その梅酒には自白作用が。亡くなった玲子さん、めちゃ嫌われてるじゃん(^_^;)。 「弁当箱」 プライドを傷つけられたOLが男性の弁当箱にちょっとしたいたずらを。ところがその男性が交通事故で亡くなって…。奥さんが中身を見ても、そんなに悲惨なことにはならないんじゃないかと思う。うっかり何かを入れる場所じゃないし。 「給食」 お年寄り向けデイサービスで介護を担当する女性のもとに入居してきたのは、昔給食を無理やり食べさせられた元教師。念とかじゃなくて、具体的にぐちぐち意地悪した方がリアルに怖かったと思う。
 「手作り」 恋人の男性は、他人の作ったものは一切受け付けない体質だった。岡本かの子の「鮨」でも似た症状の人が登場するけど、この人はコンビニや外食は大丈夫なのね。主人公は子供を作り家族になることで壁を越えようとする。その後について、一番悪い予感がするのは、この話だな。「珍味」も軟禁だから怖いけど。「お裾分け」30年連れ添った旦那さんのお葬式。実は2人は、食生活の食い違いからこじれた、ダブル不倫のカップルだった。あそこまで好みが違えば、最初の旦那さんと別れたのは正解かも。
 「怖い食卓」 OLさんの茶飲み話で、まったくホラー色はないけど、ダントツで面白くて怖かった。注意書きのやたら多い店、水のおかわりもおしゃべりも禁止って、入りたくね~~。焼き鳥を8本頼まないと出てこない人気のラーメン、ラーメン屋に転業しろ~。こだわりでしょう油を置かない寿司屋(TT)。客の前でバイトや奥さんを怒鳴る店。耳に入ってくる他人の知ったかぶり話…等々。どれも小さい奴は経験してるなぁ。でかいのに逢ったら、ホント怖いです。
 

粘膜人間

2013年08月05日 | ホラー
    飴村 行                角川ホラー文庫

 タイトルと、日本ホラー大賞長編賞とあるのに魅かれて購入。いやー、日本にもこんなのがあったのかと思うくらいのグッチャングッチャンどろどろのスプラッタホラー。
 著者が子供のころ、腐臭をはなつ河童の生首の夢を見て、巨大な小学生と河童の殺し合いをイメージしたという。非凡だ。下卑て戦いの本能に優れる河童たちと、それをも圧倒する怪物小学生雷太の迫力がすごい。
 雷太も、その兄達も父親も憲兵たちも、森の妖精のような存在も、そろいもそろって下衆でありクズである。だから誰が殺されても心が痛まない。中盤で理不尽に拷問される女性だけが気の毒だが、彼女もそれなりのことはしてたんだね。
 ラストの雷太と河童の長兄との対決は、エイリアンvsプレデターを連想しました。