読後感

歴史小説、ホラー、エッセイ、競馬本…。いろんなジャンルで、「書評」までいかない読後感を綴ってみます。

コンスタンティノープルの陥落

2007年01月14日 | 歴史小説
                      塩野七生        新潮文庫

 いわゆる3部作の「ロードス島戦記」「レパントの海戦」も素晴らしいが、一つ選ぶとすればこれ。歴史的な攻城線を、両君主はじめ、ヴェネチアの医学生、ジェノヴァの商人、ギリシャの宗教家、トルコ占領下のセルビアから駆り出された兵士、スルタンの小姓など様々な人の目から描いている。
 何といっても魅力的なのが両国の君主。トルコの若きスルタン・マホメット2世は、巨大な軍事力は祖先から受け継いだものの、強力な意思と頭脳で覇業を完成させるのは秦の始皇帝を思わせる。そして初老のビザンツ皇帝・コンスタンティヌス11世、この人が格好いいんだ。利害が錯綜しまくっているギリシャ・ヴェネチア・ジェノヴァの3勢力が曲がりなりにも協力できたのは、この人の潔い人格のせいだろう。両者が城壁を挟んでお互いを確認する場面は、名シーンだと思う。
 「ウルバンの巨砲の咆哮」や「艦隊の山越え」といった歴史的名場面も十分に堪能できる。