読後感

歴史小説、ホラー、エッセイ、競馬本…。いろんなジャンルで、「書評」までいかない読後感を綴ってみます。

天の光はすべて星

2009年03月03日 | SF
           フレドリック・ブラウン     ハヤカワ文庫

 正直、これがブラウン?と思った。奇想天外なスト―リーの短編やショート・ショートでならしたブラウンの、静かな、静かな長編。これもいい。
 57歳の老ロケット乗りが、木星探査計画を公約に掲げる女性議員の立候補を知り、ともに計画実現に向けて動き始める。ひそかな野望や挫折、恋、死を挟みながらも、プロジェクトは現実的に、実に現実的に実現に向けて動き続ける。卓越したロケット技術者でコスト感覚にも優れた主人公は、苦手な分野は人に任せてしまえる度量の広さを持つ。こんな人と仕事ができたらいいね。
 20世紀末、人類は月、火星、金星に降り立ち、宇宙ステーションが存在し、長距離輸送の主役は大型ジェット機だが、大陸間輸送にはロケット(スーペースシャトル型?)も少数使われている。1953年の近未来予想としては立派なもんでしょう。
 何よりタイトルがいい。よくぞこのタイトルに訳した。