読後感

歴史小説、ホラー、エッセイ、競馬本…。いろんなジャンルで、「書評」までいかない読後感を綴ってみます。

真田騒動

2006年09月16日 | 歴史小説
                           池波正太郎   新潮文庫

 信州真田藩を舞台にした、いわゆる「真田もの」短編集。

「信濃大名記」
小野のお通の仲立ちで、大阪の陣の合間に弟・幸村との対面を果たした真田信幸。お通への恋情と、おのれの信条から徳川についたものの、胸の奥に燃える武将の血…。
「碁盤の首」
真田藩に潜入し、脱出した隠密が、囲碁で負け越した同僚に再戦を挑みに来るという話。

 そう、この2編は『真田太平記』に組み込まれて、話にふくらみを持たせているのです。

「錯乱」
真田藩に潜入した隠密をめぐっての、老中・酒井と真田信幸との息づまる謀略戦。ううん、池波さんは(私と同じく)信幸が好きなんですね。
「真田騒動ー恩田木工」
 若き日は治水工事の断行で名をあげながら、次第に殿様に享楽を提供することで出世する原八郎五郎、原の失脚後に殿様が思いつきで採用した自称節約名人(実際は無策かつ酷薄)の田村半右衛門の後を受けて、絶望的な真田藩の財政再建に挑む恩田木工。痛みを伴う改革の成功は、木工の人格・覚悟・頭脳もさることながら、「前のふたりがひどすぎたから」っていうのは、社会人として実感ですね。
「この父その子」
 超節約生活を余儀なくされた殿様の、50過ぎてのロマンスとその後。田村半右衛門はここにも登場して、しょうもない節約術を披露してある男(書くとネタばれ)に張り倒される。