読後感

歴史小説、ホラー、エッセイ、競馬本…。いろんなジャンルで、「書評」までいかない読後感を綴ってみます。

反・関が原

2006年07月03日 | 歴史小説
                       工藤章興      学研

 いわゆる歴史シミュレーション小説である。類似のものと比べて不自然さがなく、すっきり読める。それもそのはず。歴史シュミレーションは歴史のイフをどこに設定するかが難しいのだが、これは、戦いの流れを決定付けた小早川の東軍参戦が逆だったらという、明快なイフがあるからである。ビデオ戦争で、「松下がベータを出してたら」みたいな感じかな。
 ここでは、小早川の西軍参加とともに、歴史とは逆のなだれ現象がおき、現実には東軍に味方した大名や、戦いを傍観した毛利や長宗我部までが西軍に回り、東軍惨敗となる。そこで家康が戦死して話が終わっても良かったのだが、関が原を脱出した家康は、体勢を立て直して全国を舞台にした合戦を繰り広げる。真田や上杉の活躍も見られるのでよしとしよう。
 ただ、シミュレーションはどうしても作者の好みというか評価がストーリーに反映する(作者が好きな武将が活躍する)。この本を読むと、作者が上杉景勝と直江兼続のコンビが大好きなのがよくわかる(私もわりと好きなので抵抗は無い)。当然納得できない部分もある。個人的には、黒田如水が加藤清正に負ける訳はないと思うのだが…。