地方のローカル線を舞台に鉄道にまつわる人々の人生をつづった、
ヒューマンドラマである。
かつて、
『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』(中井貴一主演、2010年)
『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』(三浦友和主演、2011年)
と、2年続けて映画『RAILWAYS』シリーズが公開されたので、
(映画のタイトルをクリックするとレビューが読めます)
以降、ずっとシリーズが続いていくのだろうと思っていたら、
その後は音沙汰がなく、(笑)
〈もうやらないのか……〉
と諦め、忘れかけていたところ、
前作から7年も経って、
やっとシリーズ3作目が公開となった。
それが本日紹介する、
『かぞくいろ-RAILWAYS わたしたちの出発-』
である。
長いタイトルは健在で、(笑)
相変わらずサブタイトルを書くスペースがあまりない。(爆)
前2作は、シニア世代の鉄道員を主人公にした作品だったが、
シリーズ最新作は、若い有村架純が主演で、
鉄道の運転士を目指すシングルマザーの女性を演じており、
私の大好きな桜庭ななみも出演しているという。
〈見たい!〉
と思った。
で、12月某日、
午前中に山登りを終えて、
午後から映画館へ向かったのだった。
晶(有村架純)は、
夫・修平(青木崇高)と、
その連れ子・駿也(歸山竜成)と東京で幸せに暮らしていたが、
修平の突然の死で生活は一変。
残された駿也と共に夫の故郷・鹿児島へ向かい、
まだ会ったことのない義父の節夫(國村隼)を訪ねる。
節夫は、運転士の仕事一筋で家族を顧みずに生きてきたが、
突然やってきた晶たちを戸惑いつつも受け入れ、3人の共同生活が始まった。
そして晶は、
亡き修平の子供の頃の夢でもあり、電車好きな駿也のため、
鉄道の運転士を目指すことに。
「このままじゃダメだって分かってます。変わりたいんです。」
血のつながらない息子の母として、
そして運転士になるため真っすぐに生きようとする晶の姿に、
これまでの人生で見出せなかった“大切なこと”に気づいていく節夫。
温かい人々との出会いや絆が、
愛する人を亡くし、一度家族を失った晶・節夫・駿也の3人を、
“かぞくいろ”に染めていく……
シリーズ1作目の『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』(2010年)は、
島根県の宍道湖沿いを走る私電、一畑電車(愛称「バタデン」)、
2作目の『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』(2011年)は、
富山県を走る富山地方鉄道(愛称「地鉄」)を舞台としていた。
そして、3作目の本作『かぞくいろ-RAILWAYS わたしたちの出発-』には、
九州の八代海沿いを走る第三セクターの肥薩おれんじ鉄道が登場する。
新幹線開業に伴う経営分離で発足した第三セクターの鉄道会社では唯一、
主たる営業エリアが複数の県(熊本県・鹿児島県)にまたがっている。
一畑電車も富山地方鉄道も電車であったが、
肥薩おれんじ鉄道は、電車ではなく、気動車(ディーゼルカー)だ。
鹿児島本線時代に、すでに電化されているが、
第三セクターになって、(おそらく経費削減のために)気動車になったようだ。
亡くなった夫・修平(青木崇高)は鉄道好きで、
息子の駿也(歸山竜成)も負けじと鉄道好きで、
晶(有村架純)が「電車」と言うと、
駿也がすかさず「気動車だよ」と訂正するシーンもあり、
会話の中で、肥薩おれんじ鉄道がどういうものかを解らせる工夫もなされている。
私は、一畑電車にも、富山地方鉄道にも乗ったことがあるが、
本作に登場する肥薩おれんじ鉄道にも乗ったことがあった。
私の父の生まれ故郷が、ここより少し南にある坊津という町なので、
風景にも馴染みがあり、懐かしさのようなものを感じた。
監督・脚本は、
『バースデーカード』『旅立ちの島唄 十五の春』の吉田康弘であるが、
吉田康弘監督は、この辺りの風景を、実に魅力的に撮っている。
この映画を見た者は、誰しも、
〈肥薩おれんじ鉄道に乗ってみたい!〉
と、思うことだろう。
先程も書いたが、
この映画は、若い女性運転手を主人公にしている。
(正確に言えば、女性運転手の誕生までを描いている)
シニア世代の男性運転手は見慣れているので、
制服姿の女性運転手は新鮮で、凛々しく、美しく見える。
それが有村架純であれば、なおさらだ。(コラコラ)
有村架純ファンならずとも、
彼女の肥薩おれんじ鉄道の制服姿を見るだけでもこの映画を見る価値はある……と断言しておこう。
この映画には、
駿也の担任教師・佐々木ゆり役で、桜庭ななみが出演している。
教師でありながら、不倫の挙句、シングルマザーになるという難しい役であったが、
普通はドロドロした不潔な感じになるものだが、
桜庭ななみは凛とした美しさと清潔感を保ちつつ好演していた。
私は、かつて、
映画『最後の忠臣蔵』のレビューを書いたとき(2010年12月23日)、
……桜庭ななみの比類無き美しさが傑作を生んだ……
とサブタイトルを付し、
次のように桜庭ななみの美を絶賛した。(全文はコチラから)
……それにしても、
それにしてもだ。
あの可音の美しさはどうだ。
最初にスクリーンに登場した時から、私の目は可音にくぎづけになった。
可音の美しさは、とりもなおさず桜庭ななみの美しさでもあるのだが、なんと宝石のような女の子をよく見つけてきたものだ。
あれから8年。
〈もう8年も経つのか……〉
という感慨もあるが、
桜庭ななみはやはり美しかった。
『最後の忠臣蔵』以降は、映画ではあまり出演作に恵まれなかったが、
今年(2018年)、
中国語が絶賛された『マンハント』(2018年2月9日日本公開)
演技力が評価された『焼肉ドラゴン』(2018年6月22日公開)
が公開され、本作までもが公開されたことで、
彼女の努力が一気に報われた感じがする。
桜庭ななみファンとしては、嬉しい限りだ。
この映画には、もう一人、私の好きな女優が出演している。
奥薗節夫(國村隼)の妹・楠木幸江を演じた筒井真理子だ。
『淵に立つ』(2016年)を見て、
素晴らしい女優であることを再認識させられたのであるが、
以降、TVドラマも含め、彼女の出演作はなるべく見るようにしている。
脇役であっても存在感があり、見ていて楽しいのだ。
修平(青木崇高)の父・節夫を演じた國村隼は、
前2作の流れならば、主役となる筈であったが、
今回は、若き有村架純が主役ということで、
彼女を立てつつ、確かな演技で作品を締めていた。
この他、
晶(有村架純)の夫・修平を演じた青木崇高、
肥薩おれんじ鉄道の職員・相羽雅樹を演じた木下ほうか、
試験官として晶の指導にあたる先輩運転手・水嶋徹を演じた板尾創路などが、
若い有村架純を支えていた。
昔、『青い鳥』(TBS系 1997年10月10日~12月19日)というTVドラマがあり、
主演の豊川悦司が鉄道員を演じていたこともあって、
度々、駅舎や電車の中での撮影が行われていた。
ドラマの後半、
柴田理森(豊川悦司)と誌織(山田麻衣子)が、
鹿児島県の、
干潮時になると由良岬から砂のかけ橋ができて歩いて渡ることができる島(知林ヶ島)や、
JR指宿枕崎線開聞駅などを彷徨うのだが、
ロケ場所が本作『かぞくいろ-RAILWAYS わたしたちの出発-』の舞台とそれほど離れていないため、鉄道&鹿児島県つながりで、懐かしく思い出してしまった。
『RAILWAYS』シリーズの他にも、
九州新幹線を題材にした、
是枝裕和監督作品『奇跡』(2011年公開)や、
我家から近いJR筑肥線「駒鳴駅」でロケされた、
森田芳光監督作品『僕達急行 A列車で行こう』(2012年)など、
鉄道がらみの映画は数多くあり、
今後も同じような作品は作られていくだろう。
今年(2018年)の11月23日に公開された、
『えちてつ物語~わたし、故郷に帰ってきました。~』は、
お笑いタレントの横澤夏子の映画初主演で、
福井県を走る「えちぜん鉄道」を舞台にした作品のようであるが、
九州は来年(2019年)になってからの公開なので、
期待して待ちたいと思う。
『RAILWAYS』シリーズも、
今度は7年も待たせるようなことはせず、
シリーズ4作目を早く作ってほしい。
そのためにも、
第3作目の『かぞくいろ-RAILWAYS わたしたちの出発-』を、より多くの人に見てもらいたい。
『RAILWAYS』シリーズでは、
極私的には、本作『かぞくいろ-RAILWAYS わたしたちの出発-』が一番好きだ。
映画館で、ぜひぜひ。