一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『くるみ割り人形と秘密の王国』 ……マッケンジー・フォイに逢いたくて……

2018年12月19日 | 映画


今の私はもう、新しい知識の習得や人格の向上などなくても一向にかまわないのである。

とは、誰の言葉であったか……
この一文だけをメモして、誰の、何という本から書き写したのかが分らない。
60歳を過ぎた今の私の心境を言い当てており、
〈そうだよな~〉
と、最近、これほど納得した文章はなかった。

今の私はもう、新しい知識の習得や人格の向上などなくても一向にかまわないのである。

開き直っているのでも、諦めたのでもない。
この文章に、私は、
〈もうそろそろいいだろう……〉
という、人生の“好い塩梅”を教えてもらったような気がした。

今の私が行うすべてのことは、
仕事も、読書も、映画も、登山も、純粋に“楽しみ”だけである。
新しい知識の習得や、人格の向上などのためにすることは、ひとつもない。
老い先短いので、もうそんなことをしている暇はないのである。

そんな私なので、
映画館で見る映画を決めるときは、
ほとんどの場合、出演している女優で決める。
女優で決めるのが7割、
監督で決めるのが3割くらい。
作家の小林信彦も同じようなことを言っていたと思うが、


大好きな女優が出演する映画は必ず見るし、
いくら評判が良くても、好きな女優が出ていなければ敬遠してしまう。
「難解だが、重要な映画である」とか、
「芸術的に優れており、現代人は見ておくべき映画である」などという作品は、
今の私にはもはや必要ない。
映画は、私にとって純粋に“楽しみ”だけなので、
「好きな女優が出演しているか、否か……」
が重要なポイントになる。
だから、このブログの映画レビューのサブタイトルが、
……○○○○に逢いたくて……
という風になる場合が多い。(笑)
やや、言い訳じみたが、
本日紹介する映画『くるみ割り人形と秘密の王国』も、
サブタイトルを、
……マッケンジー・フォイに逢いたくて……
としている。(コラコラ)

マッケンジー・フォイを知ったのは、
『インターステラー』(2014年)という映画であった。
そのレビューで、私は次のように記している。(全文はコチラから)


極論すると、『インターステラー』は、
宇宙を舞台にした、「父と娘」の物語であった。



二人の娘と、二人の孫娘を持つ私は、
「父と娘」の物語に極端に弱い。(笑)
「父と娘」の物語というだけで、感涙するほどに……



父親を演じたマシュー・マコノヒーも良かったが、


私は、娘を演じたマッケンジー・フォイの方に、より感心した。


かつて、エル・ファニングを初めて見たときのような衝撃を受けたのだ。
演技力があり、しかも美しいのだ。



【マッケンジー・フォイ】
アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス市に、
2000年11月10日生まれる。14歳(2014年12月5日現在)。※
幼小のころからバレエ、ジャズダンス、タップダンスなどを習っていた。
2004年の頃からモデルとして活動し始める。
マテル、ゲス、タルボ、ターゲット、ラルフ・ローレン、H&M、ギャップ、ディズニーなど、いくつかのブランドのプリント広告にモデルとして登場。
ついで、バーガーキング、ティージーアイ・フライデーズ、BlackBerry、コムキャスト、バービー、パンテーンなど、その他数多くの企業のテレビコマーシャルに出演を果たした。
9歳から女優活動をはじめ、
SFテレビドラマシリーズ『フラッシュフォワード』や、
刑事テレビドラマシリーズ『ハワイファイブオー』など、
いくつかのテレビシリーズにゲスト出演。
2011年に公開された『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part1』
で、長編映画に初出演を飾り、また、
2012年公開の映画『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part2』
に出演した。

※今は18歳(2018年12月現在)


エル・ファニングと共に、
マッケンジー・フォイの女優としての成長が本当に楽しみだ。
映画『インターステラー』を見ての収穫は、
このマッケンジー・フォイに逢えたことが一番かもしれない。




私は、
「エル・ファニングを初めて見たときのような衝撃を受けたのだ」
とまで書いている。
私にはとっては、エル・ファニングを引き合いに出すほどの女優であったのだ。
そのマッケンジー・フォイの新作にして主演作が『くるみ割り人形と秘密の王国』なのである。
この映画には、私の好きなキーラ・ナイトレイも出演している。
見ないわけにはいかないではないか。
で、ワクワクしながら映画館へ向かったのだった。



14歳の少女クララ(マッケンジー・フォイ)は、
聡明で、豊かな想像力を持つ少女。


機械をいじることが大好きで、
ほかの子と遊んだりお洒落をしたりすることが不得意だった。
“女性は女性らしく”
というこの時代特有の風潮にも戸惑いを感じている。
ある日、彼女の豊かな想像力と聡明さを認めてくれていた母親が亡くなる。
寂しさから心を閉ざすクララであったが、
母が遺したメッセージを探すうちに、


「花の国」「雪の国」「お菓子の国」「第4の国」から成る《秘密の王国》に迷い込む。


そこでクララは、
自分のことをプリンセスと呼ぶくるみ割り人形フィリップ(ジェイデン・フォーラ=ナイト)や、


シュガー・プラム(キーラ・ナイトレイ)と出会う。


だが、すぐに、
「第4の国」の反乱によって起きた戦いに巻き込まれていくのだった……




チャイコフスキーのバレエで広く知られる『くるみ割り人形』であるが、
実写映画化された『くるみ割り人形と秘密の王国』は、
従来のバレエの物語とは別物と思えるほどにアレンジされた作品であった。
「くるみ割り人形」というより「不思議の国のアリス」といった感じで、
14歳の少女クララの不思議な国への冒険譚であった。
くるみ割り人形に導かれて不思議な世界に迷い込んだ少女を、
マッケンジー・フォイは実に巧く演じていた。
『インターステラー』のときもそうであったが、
その演技力と存在感は、持って生まれたものであるのだろう。
加えて、その美貌。
たった4年の間に、マッケンジー・フォイは美しく成長していた。


正直、ストーリーにはあまり新鮮味はなかった。
見るべきは、
本物の花やお菓子を使って実際に建てられたきらびやかなセットや、
マッケンジー・フォイやキーラ・ナイトレイが着用している趣向を凝らしたドレスの数々だ。


殊に、マッケンジー・フォイの衣装は、女の子なら一度は夢に見るような美しいドレスで、
ため息が出そうな美しさであった。


衣裳を担当したのは、
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(これは本当に素晴らしい作品であった)などで、
2度のオスカーを受賞したジェニー・ビーヴァン。
本作では、1870年代イギリス、ヴィクトリア朝時代をイメージしており、
クララのドレスは当時のスタイルだという。


特に印象に残ったのは、兵士の制服。
シックで可愛い。


これ、安室奈美恵もコンサートで同じようなものを着ていたな~と思った。


シュガー・プラムを演じたキーラ・ナイトレイの、
ロシアの陶器人形をイメージした衣装も素晴らしかった。


この映画は、吹替版と字幕版が上映されているが、(吹替版だけの映画館もある)
お子様連れならともかく、
大人が見に行く場合は、字幕版の方が良いのではないかと思った。
なによりも本人の声を聴くことができる。
それに、キーラ・ナイトレイなど、(声色を変えたりして)声でも演技をしているからだ。
マッケンジー・フォイだけでなく、
キーラ・ナイトレイの美貌と衣裳と演技を楽しむことができ、
そういう意味で素晴らしい作品であった。


その他、
クララから大切な鍵を奪い、王国の支配を企んでいるように見える、
住民たちの恐怖の象徴であるマザー・ジンジャーを演じたヘレン・ミレンや、


クララの名付け親で良き理解者・ドロッセルマイヤーを演じたモーガン・フリーマンなど、
ちょっともったいないようなキャスティングも凄いし、


世界的なトップダンサーが出演しているのも、見どころのひとつ。
アメリカン・バレエ・シアターで、黒人女性初のプリンシパルダンサーとなった、
ミスティ・コープランド、


英国ロイヤル・バレエ団で史上最年少男性プリンシパルとなった、
セルゲイ・ポルーニンとの二人によるスーパー・バレエ・ダンサーのバレエシーンには、
バレエファンならずとも目を奪われてしまうことだろう。


マッケンジー・フォイとキーラ・ナイトレイに逢いに行ったのだが、
他にも楽しみが一杯詰まった“おもちゃ箱”のような作品であった。
映画館でぜひぜひ。

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