一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

海抜0メートルから登る富士山② ……村山浅間神社から新六合目まで……

2011年08月01日 | 海抜0mから登る「富士山」単独行
雨は夜半過ぎに止んだ。
夜空には、ときおり星の瞬きが見えた。
今日は曇りの天気予報。
雨は降らないだろう。
この時期の静岡県の日の出は午前4時40分頃。
4時を過ぎると、次第に明るくなってくる。
4時15分頃に起き、昨日の残りのバナナやおにぎりを食べる。
山本商店の自販機で、水を購入。

今日の行程は、村山浅間神社から新六合目まで。
村山古道のすべてを歩く。
すごく楽しみ。
昨日、山本商店で買物をしたとき、店番をしていたおばあさんと話をした。
私と同じように村山古道を歩くという登山者が時々店に立ち寄るそうだ。
でも、道に迷い、引き返してくる人も少なからずいるとのこと。
気を引き締めてかからなければ……

5:09
村山浅間神社を出発。(標高500m)


村山浅間神社に向かって左(西)に舗装道路が北に向かっている。
この六道坂が、村山古道の出発点。


掲示板「富士山表口真面之図」や、
「富士山」と陰刻された石碑などが、
ここが登山口であることを知らせてくれる。



5:21
「村山口・富士山登山道石畳」に入って行く。


しかし、この道を5分ほど歩くと、また元の舗装道路に出た。


5:28
四つ角で、おばあさんに出会った。
「ここからひとりで富士山に登るの?」
「はい」
「それはすごいね~、でも気をつけるんだよ」
「はい」
後ろ姿をパチリ。


5:29
このルート最後の民家・鯛津さん宅前を通過。
これ以降、民家は一軒もない。


5:41
判断の難しい分岐に出合う。(標高640m)


「村山道」の道標は左を指しているので、そのまま広い道を左に上がって行こうしたのだが、なんだかおかしい。
道標に近寄ってみると、広い道と一段高くなった杉林との間に、窪みがある。
どうやら、ここが村山道のようだ。


その窪みをしばらく登り、振り返って写真を撮る。
〈間違えなくて良かった~〉
と安堵。


6:05
林道(富士裾野線)を横切る。


6:10
「し」の字形のスギから右の溝路へ入って行く。


溝路をしばらく歩くと、ロープが張ってあり、右のヒノキの植林帯へ上がる。


6:34
札打場跡の大ケヤキに着く。(標高840m)
村山古道に入って最初の村山修験の遺跡。


6:46
タマアジサイに出逢う。(標高920m)
この辺りはタマアジサイが群生していた。


6:59
薄暗かった林に、突然、陽が差してきた。


光が創り出す神秘的な風景に恍惚となる。


7:15
天照教林道(富士山麓線)に出る。(標高1000m)
向かって右の道へ入って行く。




龍の形をした倒木に出合う。
今にも動き出しそうだ。


この辺りの苔は見事だ。


7:40
「富士山麓山の村」に出る。(標高1060m~1140m)
正面に見えるのは、緑陰広場。


ここで地図を広げて見ていたら、通りかかった車から降りてきた中年男性が話しかけてきた。
「富士山麓山の村」の職員さんであるその人と、しばし談笑。
佐賀から来たことを告げると、「長崎県出身の同僚がいるよ」と、その人を連れてきた。
早岐出身とのことで、私の郷里と近いことに驚く。
ここで水を補給させてもらい、出発。
本には、水の補給場所はないと書いてあったが、ここが唯一の補給場所かもしれない。
ただ、いつも職員さんがいるとは限らないので、水は必要分はしっかり持って歩こう。




8:07
オリエンテーリング路を横切る。


8:45
中宮八幡堂跡に到着。(標高1280m)
ここは昔「中宮馬返し」と言われていたところで、
村山より派遣された社人が常駐しており、
登山者の総ては、ここより馬で登ることは許されなかったとか。


この広場のようになっている場所には、 バイケイソウがたくさん咲いていた。


ここから先も、見事な苔の道が続いていた。


9:22
富士スカイライン横道を横切る。(標高1350m)


両側はすべて苔の絨毯。
この苔筵は、駿河湾からの上昇気流が育て上げたものだとか。
屋久島の苔も素晴らしかったが、富士山の苔もそれにまったく引けを取らない。


小さくて可憐な白い花が咲いていた。


10:14
富士スカイライン縦道に出る。(標高1600m)
疲労困憊。
しばし休憩。


ここから先は、
「高鉢駐車場・御殿場庭」分岐を過ぎると、
宝永遊歩道(標高2360m)までエスケープルートがないし、
ケータイも通じない箇所もあるので、
特に単独行者は要注意。


10:39
「高鉢駐車場・御殿場庭」分岐通過。


カニコウモリがたくさん咲いている。


10:59
下山する人に出会った。
今日、唯一すれ違った登山者。


ヒヨドリバナが増えてきた。
アサギマダラが乱舞している。


11:09
笹垢離跡に到着。(標高1860m)


この周辺は、立ち枯れした木々や倒木、それにヒヨドリバナが、一種独特な雰囲気を醸し出している。
ヒヨドリバナやアサギマダラを「生」とすれば、立ち枯れした木や倒木は「死」の象徴と言えるかもしれない。
この世ではないような風景だ。
とても居心地が良く、ずっとここに居たいと思った。


足許に、ヤマオダマキが咲いていた。


この辺りの倒木は凄かった。
1996年(平成8年)9月に東海沖を通過した台風17号の風損らしいが、
これほどの倒木の中にも、しっかりと登山道がある。
見た目ほど歩行も困難ではない。
畠掘氏らが道を見つけて歩けるようにして下さったから、こうして歩いて行ける。
感謝してもしきれるものではない。


コバノイチヤクソウを発見。
嬉しい。


11:40
日沢左岸から右岸へ渡る。

13:04
二合目石室跡。
宝永遊歩道を横切る。(標高2360m)


13:17
ガレ場に出て、新六合目の山小屋が見えた。
足取りも軽くなる。


タイツリオウギ、イワツメクサ、メイゲツソウ、ムラサキモメンヅルなどがたくさん咲いている。
お花畑だ。



13:33
新六合目の山小屋に到着。(標高2500m)
村山浅間神社から8時間半ほどで到着。
いや~素晴らしいルートだった。
この村山古道を現代に蘇らせてくれた畠掘操八さん、ありがとうございました!


14:00
新五合目まで下りて野宿できそうな場所を探すが見つからず。


新六合目まで戻り、宝永山荘へ宿泊申し込みをする。
ここ宝永山荘は、『富士山・村山古道を歩く』の著者である畠掘操八氏の常宿。
著者にあやかって私もここに泊まることにする。
山荘の方にいろいろ訊かれたので、
「田子の浦から村山古道を歩いてきた」
と答えると、
「昨夜、畠掘さんがここに泊まられたのよ」
と教えて頂く。
「今朝4時にお仲間と登られたから、もうすぐ下山してこられる筈ですよ」
とも。


山荘の二階で休憩していると、
「お客さ~ん、畠掘さんがみえましたよ~」
との声。
急いで階下に降りる。
15:28
畠掘操八氏と感激の対面。嬉しかった~


私が海抜0メートルから富士山に登るキッカケを作って下さった恩人。
感謝の言葉を伝える。
まさか、富士山で、畠掘氏に出会えるとは思ってもみなかった。
不思議な縁を感じる。
きっと山の神様が引きあわせて下さったのだろう。

今夜0時にはこの山荘を出発し、富士山頂で御来光を拝むつもりでいるので、早めに夕食を作ってもらい、ひとりだけ食べて、早々に就寝。

明日は、どんな一日になるだろう……
海抜0メートルから登る富士山③ …新六合目から富士山頂を経て御殿場へ…(←クリック)

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