道しるべの向こう

ありふれた人生 
もう何も考えまい 
君が欲しかったものも 
僕が欲しかったものも 
生きていくことの愚かささえも…

1/14完全休足日(誰だって独り…)

2023-01-14 18:55:00 | 日記

AirPodsの音楽が不意に止まった

ん?
メールか?
じゃなさそうだ…

ポケットからiPhoneを取り出してみると
覚えのない番号からの着信画像
090…だから誰かの携帯番号

知らない番号
いつもなら
出ないで放っておくのだが…

不覚にも?
なぜか出てしまった

〜○○○○さんですか?

フルネームで僕の名前を確認する女性の声

〜はいそうです

〜わたし○○です

なんだイトコの○○ちゃんか
3〜4歳年下の…
どおりでオバちゃんっぽい声だと思った

〜あぁどうも
 この間の葬儀は失礼しました

〜いえいえこちらこそ失礼しました
 ○○さんから携帯の番号教えて貰って…

彼女は年上の親戚女性の名前を挙げた

〜お渡ししたいものがあるんだけど
 いまおウチにいますか?

〜うんいるよ
 庭掃除してるよ

〜じゃあ
 もう少ししたらお伺いしていい?

〜いいよ

そう答えだけど
ん?彼女って僕の家どこだか知ってたっけ?
まぁたぶん知ってるんだろう

僕個人はほとんど付き合いはなかったけど
死んだバアさんや僕の妹とは昔から
それなりに行き来があったはずだから…

でも僕は彼女の家は知らない
どのあたりなのかくらいしかわからない
訪れたこともないし…









〜この辺も
 お母さんがいた頃と全然変わっちゃって
 わからなかったわ

〜そうだね
 バアさんの離れ壊して息子が新築したし
 周りにも何軒か増えて様変わりしたからね
 どう?まだ忙しいんだろ?

〜そう!やることがいっぱい!

〜オレも一年前はそうだったから
 よくわかるよ
 役所とか郵便局とか手続き大変だろ?

〜そうそう
 もう少し頑張らないとね

お互い笑顔を交わすものの
日頃ほとんど会話したことがないから
彼女と何を話していいのかわからない

親戚だけど
しょっちゅう顔を合わせてるわけでもなく
冠婚葬祭で親戚のみんなと一緒のときは
むしろ喋る必要もないから…

〜ねぇどうしてそんな長い髪してるの?

〜学生の頃は伸ばしてたんだよ
 ずいぶん昔の何十年も前の話だけど…
 今は仕事やめたから昔に戻っただけ…

〜そうなんだ…
 染めてるの?

〜染めてるっていうか脱色?
 白髪と薄毛を誤魔化してるだけ…
 みんなからいろいろ言われるけど
 もう好きなようにするだけさ
 あと何年健康でいられるかわかんないし…

〜そうね…








とりとめのない話
20分ほどしただろうか?

肝心の僕が訊きたかった
彼女のプライベートには全く触れず…



小さい頃から脚が悪くてまともに歩けない
不自由な生活をしていた彼女…

そのせいなのか
これまで結婚もせず…

加えて
彼女の若い頃に
母親が若年性の認知症になってしまい
そんな母親の世話をするだけで
精一杯の暮らし…

父親も
たしか彼女が30代の頃に亡くなって…

今までどんな暮らしをしてきたんだろう?
親戚の誰かに訊けばわかるかもしれないが
あらためて尋ねるのもなんだか…

それに
知ったところで何になるというのか?

それでも…

これからどうやって生きていくんだろう?
独りになって…

60年以上も生きてきたんだから
僕には知らない
彼女の世界があるとは思うけど…

弟が一人いるものの
弟は弟で家族を持ち
実家を出て別に暮らしていて…

いい歳になった姉と弟の関係
日常的に行き来があるのかどうか?

60歳をまわってから始まる
正真正銘の独り暮らし

いまはまだ元気な様子だけど…

まぁ
誰だっておんなじか?

僕自身だって
身の回りにはカミさんやチャラ息子
そして初孫くんがいるけど…

初孫くんがまだ小さいうちは
彼を中心に賑やかな日々が続くだろうが…

あと数年経って大きくなれば
我が家との行き来も減り
寂しい暮らしになってしまうんだろう

実際に
初孫くんがこども園に通うため
我が家で朝夕の面倒を見る前までは
僕とカミさんだけの冷え冷えした
暗い1年間が続いていたから…

家族がいようといまいと…

結局は
誰だって独り…

ただ
独りで年老いていくことが問題か…