外科医(9年目)日記

自分さえ我慢すればいいと思って頑張ってきた。そんな僕には家族が出来た。患者も大切、家族も大切。わがままだろうか?

うつ病

2007年05月31日 15時45分07秒 | 日記

先輩医者が、自分のモチベーションが上がらないとのことで、病院を

 休んでいる。詳しいことはわからないが、自分の居場所がない。自分のやりたい

 仕事じゃないというのが理由らしい。。。

 

 医者が仕事を休むというのはかなりのことだ。バイトを休むのとは違う。

 病院が成り立たなくなる可能性がある。そうならないようにカバーするほかの

 医者には多大な迷惑がかかる。そんなことはお互い、わかっているので、

 風邪のときですら無理して病院に出る。そんな世界だ。。。

 

 僕もその先生と飲んだりしていた関係なので、今回の件が本当に、

 やる気がなくなってしまったのか、ただのわがままなのかはわからない。

 

 ただ、自分も気分の乗らないときがあるのは確かだ。。。

 医者は患者を助け、命を救って、感謝されれば、言葉では伝えられないほど

 の達成感を感じる。それが言葉の時もあり、お金の時もある。

 それが感じられないとき、ただのストレスだ。。。

 

 手術はうまくいけば感謝されるが、1%程度の確立でうまくいかないこともある。

 そんなときは、新聞にのる覚悟もするし、家族のこれからの生活を思って、

 気が落ち込む。

 そんなプレッシャーの中で普通の感覚を保っている人は僕は逆におかしい

 と思う。。。僕にはできないことだ。。。

 

 この先輩ドクターがいつ戻ってくるのか、この問題が解決するのかは

 わからない。。。ただ、こういったことがないと、今の環境はかわらないの

 だろう。患者のため、病院のために我慢している人たち、家族がたくさんいる

 のも事実だ。。。


大腸癌、肝転移

2007年05月29日 21時25分19秒 | 大腸癌

今週、来週と手術患者が目白押しになってきた。。。

 ヒマだヒマだと思っていると、神様はきちんとみている。。。

 

 大腸癌。。。消化器の癌のなかでは一番予後のよいほうのだろう。。。

 手術をきちんとして、必要があれば抗がん剤を再発予防にする。。。

 これで進行がんでも6~7割の人が助かる。

 

 しかし、肝臓に転移をしていると話は別だ。

 大腸癌は血流に乗ってまずは肝臓に転移を起こす。

 肝臓は、栄養を代謝し、毒を解毒する臓器だ。。。

 これが大腸癌の転移によって、圧迫され、機能をうしなっていく。

 

 以前は肝転移があると、余命は6ヶ月といわれていた。

 しかし最近はいろいろな抗がん剤を組み合わせ、更に取れるのであれば、

 手術をしてとってしまい、治してしまうという試みが盛んになされている。。。

 

 転移のある大腸癌でも抗がん剤がきけば、20ヶ月生きることが出来る。

 手術でとりきることが出来れば50%の確立で3年は再発しない。。。

 転移をした癌でも、治る可能性もあるのだ。。。

 

 来週手術の人たちは残念ながら、転移が肝臓全体に散らばっている方だ。

 手術で全てをとることは出来ない。とったら、死んでしまう可能性がある。

 しかし、大腸癌をほっておくと、つまりそうなほどに進んでいる。だから手術を

 する。

 

 これから手術をするこれらの患者に頑張ったら平均22ヶ月生きることができ

 ますと、いうことはできない。。。

 しかし、今の医療ではそれが限界だろうか。。。

 

 週2回抗がん剤をし続けて、病院中心に人生を過ごして。。。

 はじめから、この現実を知っていたら、それにかかるお金を、時間を

 僕はどう使うだろうか?やっぱ、なるべく長生きして、家族と一緒に平凡な

 生活をしたいと思う。。。だろう。


転落?

2007年05月28日 13時10分15秒 | 日記
ZARD坂井泉水さん、闘病中の病院で転落死(朝日新聞) - goo ニュース

こういった場合、病院の責任はどうなるのであろうか?
睡眠薬をのんで、転んだばあちゃんの責任は誰になるのだろうか?

病院は入院中の患者のすべての責任をとらなければいけないのであれば、
患者の生活を制限するだろうし、場合によっては人権無視と思われるような
制限もしなくてはならないだろう。そこが今現在ははっきりしていないので、
外泊も進めているし、可能であれば、外出も許可している。。。

今回の場合、事故にしろ、自殺にしろ、患者へのアプローチが足りなかった
のかな?と想像されます。。。お悔やみ申し上げます。

ただ思う。。。

2007年05月26日 23時46分28秒 | 日記

久しぶりの実家。おばちゃんたち、いとこたち。。。

 みんな歳をとっていて、成長していてびっくりだが、変らないのは

 我が家だろうか。。。

 

 ひいじいちゃんは落ち着いていた。

 呼吸はチエンストークという、特徴的な呼吸になっていたが、

 尿量も出ていて、今日明日ということではないらしい。。。

 101歳のひいじちゃんを80歳のばあちゃんが面倒を見ていた。

 申し訳ない気がした。。。

 

 今日は、結婚後初めて実家に戻った。

 妻は身重で大切な時期なので一緒には帰らないことにした。

 本当は行きたいと言われたのだが、うちの親との確執や、

 いろいろな状況を考え、ひかえてもらった。。。

 

 僕は実家に帰るとワル息子に戻る。外科医とはかけ離れた

 どら息子呼ばわりされる。自信を無くす。。。

 今は、両親はそんな事忘れて寝ている。

 僕はくやしい。なぜ認めてもらえないのか?

 そんなこと思う時点でまだまだガキだなとふと頭を冷やして

 思う。。。

 

 実家はいいところだ。といつになったら思えるだろうか?

 今の僕にはまちがいなく嫌なところなのである。。。

 

 明日は、ひいじいちゃんにあったら、現実に戻る。

 僕は昔の自分より、今の自分のほうが好きだ。。。

 

 酒が廻りすぎたようだ。。。

 おやすみなさい。。。


CVポート挿入成功

2007年05月24日 16時53分00秒 | 日記

今回は3年目の外科医にCVポート留置を施行してもらった。

 しかし、いままで自分はこんなにも迷惑をかけていたのかというくらい、

 したの医者の主義を面倒みるのは苦痛なことだ。。。

 

 普段、自分では絶対にしないように心がけていることを平気でしようとする。

 それを患者にわからないようにとめるのも大変だ。。。

 

 ふつふつと腹が立ってきて、すぐに手技をとりあげてしまう。。。

 しかし、自分もほんの数年前はこんなもんだったなと思い直し、指導をつづ

 ける。。。

 

 こうして、医者は育っていくのだろう。。。下に教えるためには自分も勉強

 しなくてはいけない。。。

 このブログも適当に臨床経験を書いてるだけでなくて、公言するように

 なってから、教科書を片手にコメントしたりしている。。。

 

 ただ、基本的にはぼくの愚痴なので、そんなもんだとおもって読んでください。

 

 最近、広告をクリックしていただいている皆さん、ありがとうございます。。。


大腸手術

2007年05月24日 13時35分47秒 | 日記

昨日は大腸の手術だった。

 この人は、開腹手術にするか、腹腔鏡手術にするかで議論になった人だ。

 現在、大腸癌は開腹手術が大半だろう。。。

 おこなっている施設では腹腔鏡手術をおこなっているだろうが、

 そのメリットは傷の問題が一番だ。。。

 

 大腸の手術後はとても回復が早い。。。

 先週の水曜日に手術した人はもうぴんぴんしており、今度の土曜日に退院を

 決めた。。。腹腔鏡で手術しても大差ないだろう。。。

 しかも、手術時間は短いし、リンパ節郭清もきちっとできる。。。

 

 その辺の事情を患者と相談したところ、先生の得意なほうでということだった。

 それもひとつの選択理由だろうか。。。

 僕は、開腹手術をお勧めした。。。

 

 結果からいうと、開腹所見では進行がんだったので、結果的にはよかった。。。

 郭清もしっかりしたし、出血量も20mlとほとんど出なかった。。。

 

 みなさんも、早期の大腸がんと診断され、手術が必要な場合、まずは主治医と

 相談して、手術法を決めてください。。。


麻酔、、、

2007年05月22日 12時05分44秒 | 日記

今日は外の関連病院に麻酔をかけに行く日だ。

 麻酔をかけたことは多々あるが、麻酔目的に関連病院にいくのは

 初めてだ。近い将来このようなことはなくなるだろう。。。

 

 今は、比較的地方でも手術をおこなっていて、その結果、麻酔科医が足りない

 という現状だろう。いままでは、それを外科医が補っていた。。。

 

 こんなこと、許されない地域もあるだろうが、僕の住んでいる地域では、

 遠くの大きな病院で手術よりは、ちかくで同じくらい安全に手術ができる

 のであればそれに越したことはないという患者が多いだろう。。。

 

 午前の病棟業務が終わり、これからいってきます。。。


身内の危篤。。。

2007年05月21日 15時27分14秒 | 日記

僕のひいじいちゃんが具合が悪い。

 僕は小さいころ、じいちゃんばあちゃんより、近くに住むひいじいちゃんに

 世話になった。習い事に連れて行ってもらったり、そのあと、親が迎えに

 くるまでひいじいちゃんの家で過ごしたものだ。

 

 ひいじいちゃんは101歳だ。大往生だと思う。けど、もっと生きていてもらいたい

 というのも本心だ。。。

 7月に僕の子供が生まれる。ぜひ抱いてもらいたかった。。。

 僕はひいじいちゃんから優しさを学んだ。

 

 ひいじいちゃんは、学校の先生だった。地方の小学校に26歳で校長先生として

 赴任し、その後、定年まで校長として、いろんな学校に勤めた。。。

 そんなひいじいちゃんは、とても礼儀ただしく、しっかりとしていて、

 ただ、僕が遊びに行くといつもやさしく一緒に遊んでくれた。

 勉強しろなんて一言も言われたことなかった。いつも庭でばったを追って、川に

 連れて行ってもらって。。。

 

 当時ひいじいちゃんは70歳くらいだったのだろうか?

 4kmくらいある家まで歩いて送ってもらったことがある。

 途中、習い事の月賦袋を落としてしまい、それが池に落ちたことがあった。

 ひいじいちゃんは、必死になって袋を拾ってくれようとして、、、

 池に頭から落ちていった。すごい水しぶきが巻き上がったのを覚えている。。。

 ずぶぬれのまま、家に上がるのは悪いからと僕を家まで送ると、そうそうに

 一人で歩いて帰っていった。。。

 

 大学に入ってから、ひいじいちゃんは一度僕のところに遊びに来てくれた。

 飛行機と電車をのりついで。当時91歳くらいだ。

 何を食いたいといわれて、馬鹿正直に肉が食いたいなんていって、

 一緒に肉を食べた。。。

 

 ひいじいちゃんは晩酌をいつもしていた。

 熱燗で2合。顔をほてらせて上機嫌になるひいじいちゃん。

 大学生のとき、夏休みで実家に帰っているとき、じいちゃんの熱燗をすこし

 もらったときは胸にぐっと来るものを感じた。大人になった気がした。。。

 

 ひいじいちゃんは遊びに行くといつもお小遣いをくれた。。。

 いつも断るのに、俺も使い道がないからと、いくたびにお小遣いをくれた。

 そんなお金を何に使ったかなんて覚えてないけど、

 今こうして、ひいじいちゃんのこと考えていて、ふといろんなことが思い出され

 てきた。なんだか急に寂しくなる。。。

 

 ひいじいちゃんは3年ほど前からすこしぼけて、僕のことわからなくなっていた。

 そんなじいちゃんでも元気ならいいなと思っていた。

 去年からは肺炎を患って、入院していた。今年に入ってからは、

 経管栄養だ。。

 今年の正月、ひいじいちゃんに会いに行った。一緒に写真をとりたかったのだ

 が、母にかわいそうだからやめなさいと言われた。

 なぜとらなかったか今でも後悔している。。。

 

 ひいじいちゃんの状態は聞くからに危篤だろう。。。

 薬を使っても、人工呼吸器をつけても1週間、寿命は延びるかも知れないが

 それだけだ。本人の体をいためつけ、本人の生命力をもてあそぶことに

 しかならないと思う。。。

 本当は仕事をなげうって駆けつけたいが、僕にも仕事があり、今は守るべき

 子供がいる。。。

 

 ただただ、遠くからひいじいちゃんを思うことが僕にできることだ。。。


吐血

2007年05月19日 12時39分59秒 | 日記

大腸がん、肝転移。状態的には1週間以内に具合が悪くなりそうという、

 末期状態の人が、今日、吐血した。きっと、肝転移による食道静脈瘤からの

 出血だ。治療は内視鏡だろう。。。

 

 しかし、それで命を延ばして、なんになるだろうか?

 本人は苦しい苦しいといって今日まで過ごしてきた。麻薬も使って、普段は

 眠っているような感じだった。

 奥さんはもう苦しめないでくださいという。。。本人のがんばりをずっとみてきた

 というのだ。

 

 結局、輸血だけすることにした。。。

 苦痛にはモルヒネを使っている。

 吐き気には、吐き気止め。。。対症療法をしている。。。

 

 最善の医療だけが、正しいわけではないと思う。


地方の地方の病院

2007年05月17日 22時06分33秒 | 日記

今日は昼間から地方の病院への出向だった。外来を午前中に5人こなして、

 その後は午後の中心静脈ポート留置の手伝い。。。

 

 これだけでいくらもらえるのかはわからないが、いま勤めているところの日給

 よりはましだろう。。。

 

 この病院は地方の公立病院だ。勤めている先生たちは昔大学で、

 お世話になった名だたる先生たちだった。(10年前の話だが。)

 

 つまり、大学の安給料を抜け出して、地方でしっかり給料をもらって

 第1線からは離れて仕事をしているのだ。。。

 

 しかも驚くのは看護師。大学病院ではCVポートは医者3人で挿入することも

 多い。看護婦は忙しいの理由ひとつで処置についてくれないときもある。。。

 

 この病院ではなんと看護師が4人もついてくれたのだ。4人いても何もしようが

 ないのだが、ほかにすることもないのでこういう配属になるのだろう。。。

 

 医者も看護師もいるところにはいて、忙しいところにしかるべき金がないので

 いない。。。こういう情勢なのだ。。。

 

 悔しいが、こういうところに僕もバイトにいかないと生活できない。。。

 忙しい上に、コンビニのバイト以下の収入ではいくら善人でも、

 外科医としてのモチベーションは保てない。。。

 

 昨日の大腸の手術の術後は良好だ。。。

 パンペリのじいちゃんも退院が決まった。

 89歳のばあちゃんももうおかゆを普通にたべている。。。

 

 順調なのはよいことだ。でも、なんだかむなしい気分もする。。。