外科医(9年目)日記

自分さえ我慢すればいいと思って頑張ってきた。そんな僕には家族が出来た。患者も大切、家族も大切。わがままだろうか?

汎発性腹膜炎

2007年05月08日 22時13分38秒 | 日記

今日も、腹膜炎の手術があった。

 83歳の高齢者。脳梗塞の既往もあり、血をさらさらにする薬をのんでいると

 いう。発症は3日前。腹痛下痢があったが、今日、我慢できなくなり受診した。

 

 近医にもかかり、胃腸炎として初日は帰宅させられたという。。。

 

 腹を触る。。。

 硬い。痛がる。反跳痛という、腹膜炎のときに起こる痛みもあるみたいだ。。。

 しかし、CT検査をするとその原因がわからないという。。。

 たいてい、この程度のひどさであれば、消化管に穿孔があっても、おかしくない

 しかし、それを疑って行った精密検査である、CTではただの胃腸炎だと

 いう。。。これはこまった。。。

 

 この人の手術をするかしないかは僕の判断にゆだねられる。。。

 誤診の危険もある。腹膜炎というだけで、根拠がないのだ。。。

 

 患者と家族に正直に話す。

 所見といままでの経緯からは、腹膜炎です。しかし、原因もわからないし、

 証拠もないです。しかし、腹痛は確かだし、経験から言えば、腹膜炎の

 可能性が高い。。。

 手術をして、それを確認する必要がある。何もない場合もあるが、

 それはそれで安心できる。      と。

 

 患者も家族も今回は納得をいただき、手術に入った。

 来院から3時間。うちの病院では異例の早さだろう。。。

 予定手術も詰まっている。午後2時。。。

 

 結果は、S状結腸の穿孔であった。膿性の腹水の貯留も認め、憩室が

 確認できた。炎症で腫留様になってはいるが、癌ではないようだ。。。

 

 S状結腸を部分切除して、人工肛門をつくる。

 炎症のある手術では、縫合不全の確立が一段と高い。

 ただでさえ、状態が悪い上に、術後の合併症がおきると、致命的だ。。。

 

 さらに、腹腔内に膿瘍ができないように、予防的にドレーンを挿入し、

 手術を終えた。洗浄に使った生理食塩水は7000mlだった。

 

 いまのところ、血圧も保たれ、尿量も確保できている。

 午後の2時に無理やり手術を入れてもらったが、こちらの準備があまければ、

 6時といわれていた。。。それだったら、きっと今よりももっと、具合が悪かった

 だろう。。。気まぐれな神に感謝である。。。

 

 今日は、ゆっくりねれるといいな。


緊急手術5

2007年05月08日 21時58分36秒 | 緊急手術

前回手術時にすでに癌性腹膜炎であり、いたるところに癒着があるとかかれて

 いた。覚悟をして、手術に望む。(癒着がひどく、時間がかかる。)

 

 開腹すると、おなかの中が真っ黒だった。うんちが腹腔内に散乱しているのだ。

 しかも、ゆちゃくにより、腹腔内が迷路のようになっている。隙間隙間を、

 うんちが入り込んでいた。

 

 患者は、脳梗塞により、持続でヘパリンを使用されていたひとだった。

 いつもより、血がさらさらしており、出血量も簡単にかさんでいく。。。

 

 丁寧にというよりは、指を用い、半ば強引に癒着を剥離していく。。。

 剥離された先にはウンチがある。。。

 

 外では麻酔科が血圧を保とうと必死で昇圧剤を調整している。

 高まり、憤った声が聞こえてくる。

 しかし、こっちも必死だ。。。

 

 洗浄を繰り返し、うんちを洗っては、腸の穴を探し、そんなことを繰り返して

 いるうち、下行結腸に穿孔があることが判明した。しかも2箇所だった。。。

 

 通常であれば、穿孔部を切除し、人工肛門を造設するのが一般的だろう。

 しかし、今回は手術時間を少しでも短縮したいがため、穿孔部を縫合し、

 穿孔部に便が通らないように、その手前に人工肛門を造設した。。。

 

 患者の命は何とか保たれていた。。。

 

 しかし、手術が終わって、患者の状態にもう一度目を通す。

 血圧は40台。尿はほとんど出ていない。おしっこが出ないほど余裕がない

 のだ。

 このとき、すでに朝の8時を過ぎていた。。。

 呼ばれたのは前夜の23時。。。

 気力も体力も限界だった。。。                 つづく