外科医(9年目)日記

自分さえ我慢すればいいと思って頑張ってきた。そんな僕には家族が出来た。患者も大切、家族も大切。わがままだろうか?

緊急手術7

2007年05月11日 20時56分12秒 | 緊急手術

即座に患者の頚動脈に手をあてる。。。

 まだ電気的な信号は出ている。しかし、血圧がでない。。。

 PEAだ。。。

 「心マして!!」誰かの声が聞こえる。。。。

 「ボスミン!!「硫アト!!」

 一気にそこは戦場となった。。。僕も心臓マッサージをかわったりしながら、

 薬剤の支持をだす。。。

 ほどなくして、心臓が再び力づよく鼓動を始めた。。。

 

 よかった。。。。

 

 しかし、状況はかわらない。血圧はやはり40台。。。

 このままではしぬ。しかし、何かしても寿命を縮めてしまう。。。

 どうしたらいいのだろう。。。

 

 患者の傍らで旦那さんが泣いている。「お前がいなくなって、俺はどうしたら

 いいんだ?」「まだまだたのしいこといっぱいあっからもう少しがんばれな。」

 

 いままでその夫婦がどんな人生を歩んできたのか僕にはわからない。

 しかし、ひとつの時代が終わろうとするせつなさを感じた。。。涙があふれた。

 

 2回目の発作だ。今度は心臓の電気信号自体弱い。

 同じように蘇生をはじめる。心マをする。今度ははじめから家族をいれる。

 本人が、医療ががんばっているところを見ていただくのだ。。。

 

 患者の体も限界だ。肋骨はおれ、鼻血がでて、くちからも胃液が逆流してくる。

 生き返るとはいえ、かわいそうになってくる。生き残っても、元気になるころには

 再発で苦しむだろう。。。もうこれ以上苦しめたくない。。。

 

 旦那さんが一番そういう気持ちだったみたいだ。。。

 「....、もういいべ。。。」「よくがんばったな。」といって、奥さんの顔をぐっと

 両手で抱え込む。。。そのとき、奥さんの顔がなんだか和らいだ気がした。。。

 「..時..分ご臨終です。」

 婦人科の先生から死亡宣告がなされた。。。

 

 こうして、長い長い僕の夜は終わりを告げた。。。       


緊急手術6

2007年05月11日 20時39分25秒 | 緊急手術

ICUに移る。患者の容態はかなりわるい。しかし、手術でできることはやった。

 これで終わらないのが外科である。術後の管理だ。

 しかし、実際、僕はねむたくてしょうがなかった。。。。

 

 血圧がひくい。。。このままではこの方はだめになってしまう。昇圧剤はもうこれ

 以上ないというところまで使用している。

 

 エンドトキシン吸着をしよう。。。

 

 エンドトキシンとは用はばい菌からでる毒である。これのせいで具合がわるく

 なるのだ。エンドトキシンがこれ以上作られないようにするのが手術。

 これを血液透析のようにして取り除くのが、エンドトキシン吸着である。

 

 内科の先生を捕まえ、お願いし、家族に命の危険を説明する。

 血液をこういう状態でぬくと血圧が下がることがある。

 しかし、現状を打破しなければ患者は次第にしぬ。

 どちらがいいだろうか?

 

 だんなさんは最大限にやってくださいといった。

 僕もそうしたいと思った。安全におこないます。そういって引き受けてしまった。

 

 しかし、この、カテーテルを挿入しているときにそれはやってきた。。。

 ついに心臓がとまった。。。