外科医(9年目)日記

自分さえ我慢すればいいと思って頑張ってきた。そんな僕には家族が出来た。患者も大切、家族も大切。わがままだろうか?

緊急2

2007年05月01日 21時58分36秒 | 緊急手術

減圧をはかる。

 選択肢は2つだ。。。人工肛門をつくるか、経肛門的なイレウスチューブを挿入

 するか?どちらかをしないとこの人の大腸は破裂する。。。

 

 カルテをみる。婦人科の癌はかなり進み、癌性腹膜炎の状態。しかも、術後、

 脳梗塞を併発し、血をさらさらにする薬を投薬されていた。

 別の病気でステロイドも投薬され、全身状態としては悪かった。手術に対して

 リスクはかなり高いと考えられた。

 内視鏡は空気を入れながら腸をふくらませ、腸の内くうを見る検査である。

 圧がかかるので、腸が破裂する可能性がある。しかし、破裂しなければ、

 全身麻酔、切開、出血といったリスクを避けることができ、この患者では、

 まず、内視鏡的に経肛門的イレウスチューブを挿入し、減圧がかなわなければ

 全身麻酔による人工肛門造設に踏み切ろうと考えた。。。

 

 そのころには夜中の2時だ。。。

 内科の先生には申し訳ないが、患者のためである。。。

 他の小さな病院ではこうは行かないかもしれない。

 外科でさっさと手術してしまって、簡単に人工肛門にしているかもしれない。

 

 案の定内科の先生は寝ていた。状況を説明し、内視鏡の依頼をする。

 スタッフをそろえ、準備をするのに1時間程度かかるという。。。

 

 ひとりの患者をみるのに医者が4人。。。夜中に。。。

 こういった実態を世間はしっているだろうか?うちの病院ではこの間の

 給料はでない。。。そんな状況をもっと知ってもらいたい。。。

 

 それはそれ。いまは目の前の苦しがってる患者のため、自分の身を守るため、

 できるだけ、最大限のこと、最良のことを淡々と勧めていくことだ。。。

 「お願いします。」電話なのに頭を下げ、お願いした。。。

                                     つづく。。。


緊急手術

2007年05月01日 21時39分40秒 | 緊急手術

つい先日の話。。。

 夜中の23時。当直用の携帯電話がなった。

 うちの病院では、労働基準法対策で当直を半分しかおかず、その分、

 オンコールという当直体制をとっており、15分でかけつけられるところにいれば、

 自宅にいても良いという体制をとっている。

 その携帯がなったのだ。

 

 もう寝る寸前だった。電気を消し、うとうとし始めたところだ。

 「腸閉塞の疑いがある患者がいる。」とのことだった。

 

 眠い。つらい。しかし、そんな身体にむちをうち、すぐさま病院へ向かう。。。

 腸閉塞には、緊急手術を要する腸管の血流障害を伴うものと、手術を

 しないで、腸管内に減圧チューブを置くことによって軽快する腸閉塞がある。

 

 腸管の血流、原因を検索するためには造影剤をもちいた、CT検査が有用

 である。すこしでも早く診断をつけ、帰って寝たい。。。

 依頼もとの先生にCTをとるように指示し、病院へと向かった。。。

 

 患者さんは、60歳代の女性で婦人科系の癌の術後の方だった。

 2日まえから、便秘があり、浣腸をかけたが軽快せず、夜になって吐き出した。

 腹部のレントゲンで小腸ガスを認めるとの事だった。

 

 真っ先にCT室に向う。放射線科の先生、婦人科の先生が既に到着していた。

 患者は、腹満のためかかなり苦しんでいるように見えた。

 CTを見てみる。。。

 大腸の著名な拡張が見られた。腹水も少量溜まっている。。。

 消化管穿孔を示す、Free airはなかった。

 拡張した大腸はS状結腸で終わり、S状結腸が閉塞していると考えられた。。。

 婦人科の先生と相談すると、以前の手術のときにも癌性腹膜炎の状態だった

 らしく、腹膜播種結節によるS状結腸閉塞、大腸イレウスが考えられた。。。

 

 破れたらうんちが腹腔内に漏れ出し、汎発性腹膜炎になってしまう。。。

 減圧を図らなければ!!                  つづく