外科医(9年目)日記

自分さえ我慢すればいいと思って頑張ってきた。そんな僕には家族が出来た。患者も大切、家族も大切。わがままだろうか?

89歳大腸がん術後良好!!

2007年05月15日 21時06分12秒 | 日記

先週金曜日に手術した人は順調に軽快している。昨日から水分、今日からは

 食事を開始している。本人は手術したことなんか覚えてないかもしれない。。。

 僕は、こんなばあちゃんをいとおしく思う。けど、自分のばあちゃんを自分の手で

 救うことはできない。。。

 

 先週火曜日の汎発性腹膜炎のじいちゃんもニコニコ顔だ。ストーマはつけざるを

 得なかったが、ご飯も元通り食べているし、救ったという達成感は強い。。。

 僕が診断して、決断して手術をしたからこの人はこんなに早く立ち直り、

 いま生きているのだ。。。

 

 でも、僕は自分の本当に救いたい人を救えない。ここで生活する限り。。。

 ここのところ、マイナス思考の毎日だ。。。

 

 明日は54歳の大腸がんの手術があたっている。考える暇はない。

 勉強して、手術して。術後管理して。。。

 どんどん自分の手で癌を治していく。。。

 人をなおしていく。それが外科医だ。。。


今日も出勤です。。。

2007年05月13日 12時11分40秒 | 日記

今日も出勤。

 いままでと変わりない、仕事量でいつもとかわりない、サービスをして、

 給料は半分以下。。。

 ちなみに今日はただ働きです。こんな病院あっていいのだろうか。。。

 きっと、つぶれます。医者だって人は救いたいけど、自分の生活もあります。

 ほかの病院で人を救えるならそれでもいいと、思ったらきっと、僕はここを

 去ることになると思う。。。

 

 今は、自分の環境を変えることができるよう、淡々と仕事してます。。。


患者をみて、家族に喜ばれず。。。

2007年05月12日 18時19分20秒 | 日記

僕はいままで不自由ない生活をしてきたと思っている。

 仕事も充実しているし、生活も贅沢も少しばかりできる程度。。。

 

 患者には優しい先生とか、話を聞いてくれると喜ばれるほうだと自分では

 思う。そんなことに満足感を得ていたが、、、

 

 そういう医者になれと望んできた両親、親戚にいま、この現状をわかってもらえ

 ないジレンマがある。。。僕は故郷を離れて医者をしている。。。

 

 遠くの親戚より、、、なんてことばがまさにそのとおりだろう。。。

 遠くに医者の孫がいても何の役にも立たない。。。

 しかも、有名でもないので自慢もできない。。。

 

 そんな親不孝な、じいちゃん、ばあちゃんに恩を返せない自分が悲しい。。。

 ふとおもう、土曜の夕回診。。。


89歳大腸がん

2007年05月12日 10時59分52秒 | 日記

昨日は90歳前の大腸がんの認知症のばあちゃんの手術だった。

 以外に太っていて、癒着も激しく大変だった。2時間40分。右半結腸切除。

 大手術だった。。。

 

 癌は小さいが進行がん。ほっておけばそのうち腸がつまって腸閉塞に

 なるだろう。しかし、実際にそれがいつ起こるかはわからない。。。

 

 もしかすると、来月あたり、脳梗塞が再び起きて、ぽっくりと死んでしまうかも

 しれない。。。心臓の病気でなくなるかもしれない。。。

 

 手術したら脳梗塞、心筋梗塞になるかもしれない。

 今は症状がないのだ。何が本人にとって一番の幸せだろう。。。

 

 聞くところによると、本人はたいていは家にいるのだという。家の中で

 ご飯をだされれば食べ、普段は寝てるか、コタツでぼーとテレビを見ている。

 トイレと食事は自分で何とかできるという。。。

 

 そういった人に全身麻酔の手術。。。

 

 いまのところ経過は良好だ。。。

 ただ、手術中には原因不明の血圧低下があったり、術後、麻酔からさめない

 ということもあり、さすが超高齢者という気がしたが、、、

 

 不穏が予想されたので患者の家族にあらかじめついていてもらった。

 患者の家族は看護婦や病院スタッフが術後はずっとついていてくれると

 勘違いする人もいるが、そうではない。。。

 みんな同じ患者さんだ。一人に付きっ切りというわけにはいかない。

 聞き分けのない、認知症の患者の管理は看護婦1人を戦力外にさせる。

 それほど迷惑だ。。。

 

 なので、患者の協力が得られない部分は、万が一患者になにかあると

 患者の不利益なので、患者を一番に考える家族に負担を背負ってもらう。。。

 僕はこれが道理だと思う。。。

 

 患者の面倒が見れないのであれば、人を雇えばいい。。。

 病院は病気に関する部分でサポートはするが、患者はひとりひとり同じ

 権利を持っている。一人の患者のためにほかの患者さんの権利が侵される

 のはひどいと思う。。。

 

 大腸の手術は順調であれば退院まで術後10日だ。。。

 このままトラブルなく患者が治ってくれればよいと思う。。。


緊急手術7

2007年05月11日 20時56分12秒 | 緊急手術

即座に患者の頚動脈に手をあてる。。。

 まだ電気的な信号は出ている。しかし、血圧がでない。。。

 PEAだ。。。

 「心マして!!」誰かの声が聞こえる。。。。

 「ボスミン!!「硫アト!!」

 一気にそこは戦場となった。。。僕も心臓マッサージをかわったりしながら、

 薬剤の支持をだす。。。

 ほどなくして、心臓が再び力づよく鼓動を始めた。。。

 

 よかった。。。。

 

 しかし、状況はかわらない。血圧はやはり40台。。。

 このままではしぬ。しかし、何かしても寿命を縮めてしまう。。。

 どうしたらいいのだろう。。。

 

 患者の傍らで旦那さんが泣いている。「お前がいなくなって、俺はどうしたら

 いいんだ?」「まだまだたのしいこといっぱいあっからもう少しがんばれな。」

 

 いままでその夫婦がどんな人生を歩んできたのか僕にはわからない。

 しかし、ひとつの時代が終わろうとするせつなさを感じた。。。涙があふれた。

 

 2回目の発作だ。今度は心臓の電気信号自体弱い。

 同じように蘇生をはじめる。心マをする。今度ははじめから家族をいれる。

 本人が、医療ががんばっているところを見ていただくのだ。。。

 

 患者の体も限界だ。肋骨はおれ、鼻血がでて、くちからも胃液が逆流してくる。

 生き返るとはいえ、かわいそうになってくる。生き残っても、元気になるころには

 再発で苦しむだろう。。。もうこれ以上苦しめたくない。。。

 

 旦那さんが一番そういう気持ちだったみたいだ。。。

 「....、もういいべ。。。」「よくがんばったな。」といって、奥さんの顔をぐっと

 両手で抱え込む。。。そのとき、奥さんの顔がなんだか和らいだ気がした。。。

 「..時..分ご臨終です。」

 婦人科の先生から死亡宣告がなされた。。。

 

 こうして、長い長い僕の夜は終わりを告げた。。。       


緊急手術6

2007年05月11日 20時39分25秒 | 緊急手術

ICUに移る。患者の容態はかなりわるい。しかし、手術でできることはやった。

 これで終わらないのが外科である。術後の管理だ。

 しかし、実際、僕はねむたくてしょうがなかった。。。。

 

 血圧がひくい。。。このままではこの方はだめになってしまう。昇圧剤はもうこれ

 以上ないというところまで使用している。

 

 エンドトキシン吸着をしよう。。。

 

 エンドトキシンとは用はばい菌からでる毒である。これのせいで具合がわるく

 なるのだ。エンドトキシンがこれ以上作られないようにするのが手術。

 これを血液透析のようにして取り除くのが、エンドトキシン吸着である。

 

 内科の先生を捕まえ、お願いし、家族に命の危険を説明する。

 血液をこういう状態でぬくと血圧が下がることがある。

 しかし、現状を打破しなければ患者は次第にしぬ。

 どちらがいいだろうか?

 

 だんなさんは最大限にやってくださいといった。

 僕もそうしたいと思った。安全におこないます。そういって引き受けてしまった。

 

 しかし、この、カテーテルを挿入しているときにそれはやってきた。。。

 ついに心臓がとまった。。。


イレウス

2007年05月09日 21時11分30秒 | 日記

うちの科は何でも屋だ。術後の腸閉塞というと、うちの科でおこなった手術後

 でなくても、引き受ける。その後、患者さんを見に来る先生たちもいれば、見に

 来ない先生たちの方が多い。。。

 

 今日も、婦人科の手術後で腸閉塞になった患者が外科転科となった。

 婦人科では開腹手術はするが、腸閉塞はみない。。。

 

 外科も、婦人科の先生に任せておくより、引き取ったほうが勝手がきくし、

 治りも早いということでそうしている。。。

 

 今日の人は、イレウスチューブが挿入できず、結局、内科で内視鏡を用いて、

 イレウスチューブを挿入してもらった。

 

 今後は、ドレーンの管理をして、体液のコントロールをしなければ、脱水に

 なってしまう。。。

 

 いやはや。今日も一日がはやい。。。


汎発性腹膜炎

2007年05月08日 22時13分38秒 | 日記

今日も、腹膜炎の手術があった。

 83歳の高齢者。脳梗塞の既往もあり、血をさらさらにする薬をのんでいると

 いう。発症は3日前。腹痛下痢があったが、今日、我慢できなくなり受診した。

 

 近医にもかかり、胃腸炎として初日は帰宅させられたという。。。

 

 腹を触る。。。

 硬い。痛がる。反跳痛という、腹膜炎のときに起こる痛みもあるみたいだ。。。

 しかし、CT検査をするとその原因がわからないという。。。

 たいてい、この程度のひどさであれば、消化管に穿孔があっても、おかしくない

 しかし、それを疑って行った精密検査である、CTではただの胃腸炎だと

 いう。。。これはこまった。。。

 

 この人の手術をするかしないかは僕の判断にゆだねられる。。。

 誤診の危険もある。腹膜炎というだけで、根拠がないのだ。。。

 

 患者と家族に正直に話す。

 所見といままでの経緯からは、腹膜炎です。しかし、原因もわからないし、

 証拠もないです。しかし、腹痛は確かだし、経験から言えば、腹膜炎の

 可能性が高い。。。

 手術をして、それを確認する必要がある。何もない場合もあるが、

 それはそれで安心できる。      と。

 

 患者も家族も今回は納得をいただき、手術に入った。

 来院から3時間。うちの病院では異例の早さだろう。。。

 予定手術も詰まっている。午後2時。。。

 

 結果は、S状結腸の穿孔であった。膿性の腹水の貯留も認め、憩室が

 確認できた。炎症で腫留様になってはいるが、癌ではないようだ。。。

 

 S状結腸を部分切除して、人工肛門をつくる。

 炎症のある手術では、縫合不全の確立が一段と高い。

 ただでさえ、状態が悪い上に、術後の合併症がおきると、致命的だ。。。

 

 さらに、腹腔内に膿瘍ができないように、予防的にドレーンを挿入し、

 手術を終えた。洗浄に使った生理食塩水は7000mlだった。

 

 いまのところ、血圧も保たれ、尿量も確保できている。

 午後の2時に無理やり手術を入れてもらったが、こちらの準備があまければ、

 6時といわれていた。。。それだったら、きっと今よりももっと、具合が悪かった

 だろう。。。気まぐれな神に感謝である。。。

 

 今日は、ゆっくりねれるといいな。


緊急手術5

2007年05月08日 21時58分36秒 | 緊急手術

前回手術時にすでに癌性腹膜炎であり、いたるところに癒着があるとかかれて

 いた。覚悟をして、手術に望む。(癒着がひどく、時間がかかる。)

 

 開腹すると、おなかの中が真っ黒だった。うんちが腹腔内に散乱しているのだ。

 しかも、ゆちゃくにより、腹腔内が迷路のようになっている。隙間隙間を、

 うんちが入り込んでいた。

 

 患者は、脳梗塞により、持続でヘパリンを使用されていたひとだった。

 いつもより、血がさらさらしており、出血量も簡単にかさんでいく。。。

 

 丁寧にというよりは、指を用い、半ば強引に癒着を剥離していく。。。

 剥離された先にはウンチがある。。。

 

 外では麻酔科が血圧を保とうと必死で昇圧剤を調整している。

 高まり、憤った声が聞こえてくる。

 しかし、こっちも必死だ。。。

 

 洗浄を繰り返し、うんちを洗っては、腸の穴を探し、そんなことを繰り返して

 いるうち、下行結腸に穿孔があることが判明した。しかも2箇所だった。。。

 

 通常であれば、穿孔部を切除し、人工肛門を造設するのが一般的だろう。

 しかし、今回は手術時間を少しでも短縮したいがため、穿孔部を縫合し、

 穿孔部に便が通らないように、その手前に人工肛門を造設した。。。

 

 患者の命は何とか保たれていた。。。

 

 しかし、手術が終わって、患者の状態にもう一度目を通す。

 血圧は40台。尿はほとんど出ていない。おしっこが出ないほど余裕がない

 のだ。

 このとき、すでに朝の8時を過ぎていた。。。

 呼ばれたのは前夜の23時。。。

 気力も体力も限界だった。。。                 つづく


緊急手術4

2007年05月04日 15時49分19秒 | 緊急手術

婦人科の先生も異変に気づく。これは脳梗塞の再発かもしれない。。。

 脳外科の先生が呼ばれ、緊急CTをとった。腹部の方も大至急でCTをとっても

 らう。患者はもう意識が混濁している。

 CTでは、多少の脳出血が見られた。脳梗塞後の出血だ。腹部は大腸の外に空気

 がもれ、汎発性腹膜炎の状態だ。。。血圧も低い。。。

 もう助からないかもしれない。。。

 

 3科で話し合った結果、脳は障害はあるが、全身状態に危険を及ぼすほどでない

 ということになった。今回の状態は腹部の病変により、起こったと判断した。

 

 では手術が必要だ。いちはやく腹をあけて、飛び散ったと思われる、便を

 洗浄し、穿孔部位を検索しなくてはいけない。。。

 

 手術室、麻酔科医、外科の上司、手術当番の先生を呼び、手配をする。

 手術はすぐには始まらない。いろんな準備が必要だ。。。

 その間にも患者の具合は悪くなる一方だ。

 呼吸は弱くなり、サポートが必要になった。

 血圧も80台まで下がってきている。

 敗血症性のショックだ。。。

 

 病棟は戦場になった。挿管の準備、救急薬品の準備。手術の準備。。。

 連絡。いろんなことが嵐のように過ぎていく。

 麻酔科の先生が来たときには自発呼吸は0に近かった。

 僕は、手術前の書類を書いたり、申し込みをしたりと忙しかったので、

 婦人科の先生に患者管理をお願いしていたが、なかなか苦戦をしていたらし

 い。麻酔科の先生がこれじゃ麻酔をかけられないと怒っている。。。

 

 管理を麻酔科に移し、挿管。昇圧剤もつかって、ようやく、手術へ向かった。。

 

                                         つづく