水仙にまつわるお話です。
田舎の父は土手の草刈りをします。 家の前だけ刈ればよさそうなものを、約1Kmの土手の全部を刈るのです。 もちろん電動の草刈機を使うのですが、楽な作業ではありません。 本人は代わりに健康を貰ってると、苦にしてません。
母から聞いた話です。 ある日、一人の釣り人が我家を訪ねました。 定年後、近くに移り住んだ都会の人です。 その日の収穫である一匹のシマアジを差し出した釣り人が母に言ったそうです。
私は最近東京から越して来た者で釣りとジョギングを趣味にしています。 この魚は、毎朝キレイに手入された土手を気持ち良く走らせていただいているお礼ですと・・・ 母は名も知らぬその釣り人を呼び止めて、自分で使った野菜を差し上げたのだそうです。
その父が爪木崎の水仙の苗を入手し、小学生と共に土手に植えました。 下田で水仙まつりが開催されるこの時期、父と子供達が植えた土手の水仙もまた辺り一面に甘い香りを漂わせ、走りゆくマラソン人を楽しませています。