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『酔いがさめたら、うちに帰ろう』。

2010-12-05 21:14:29 | 映画日記
『酔いがさめたら、うちに帰ろう』を観てきた。


漫画家の西原理恵子の元夫で戦場カメラマンの故 鴨志田穣の同名小説の映画化作品。
彼自身の自伝小説でもある。
彼は、戦場カメラマンで漫画家の女性と結婚し、離婚し、子どもが2人いて、アルコール依存症で、そしてガンで死んだ。
アルコール依存症の人に出会ったことはないけれど、大変な病気なんだろうなと思う。
自分自身が自分自身をいじめる。
お酒が介在しているから、どうしても自業自得の色が濃くなり、他者からの同情は得られにくい。
もちろん、協力だって得られにくい。
「病気である」という認識も薄い。

映画の公式ホームページの著者の紹介にはこうある。
”繊細で心優しい彼は、厳しい現実と向き合えず、世界各国をさすらいながら、お酒に逃げる日々を過ごす。”
この紹介文を見ると、「ああ、やっぱり弱いから逃げた人だ、という認識しかないんだ」と思う。
精神を悪くしてしまった人たちは、押しなべて【心の弱い人】というレッテルが貼られる。
言葉に出して、直接は言わないだろうけれど、鬱を患ってる俺もきっとそう思われてるんだろうなと思う。
そんな、俺が言うのもなんだけど、上の鴨志田穣の紹介文は間違ってると思う。
彼は、きっと優しくて、強かったんだろう。
だから、周りの人に助けを求めず、自分の体をいじめてしまう病のアルコール依存症になってしまったんだと思う。
誰かに助けを求めず、逃げずに一人で孤独に戦い続けた。でも、戦いに勝てず、逃げた先が自分自身だった。その結果がアルコール依存症なんだろう。
こういう人を”弱い”なんて、いったい誰が言えるんだ?

世の中には、自分が弱った時には人に慰めを求める人が多い。
逃げることを悪とし、逃げた時に後ろ指を差されることを嫌う。だから、逃げることさえせず、人に慰めを求める。
それが悪いっていうんじゃないけど、少なくとも、自力で逃げることもせずに、逃げた人間を虐げるのは間違いだ。


映画の最後。
どこかの海岸の砂浜。
お父さんとお母さん、そして子どもが2人、そこで遊ぶ。
ちょっと離れたところにいたお母さんが、遠くからその家族の光景を眺めている男を見つける。
目を凝らしてみると、それは今海岸で遊んでいるお父さんだ。
お父さんが2人?
と一瞬驚くけれど、少しするともう一人のお父さんは、寂しそうに手を振って砂浜の向こうに姿を消す。
まるで、”大丈夫、僕が時間を稼ぐから”と言うように。




鴨志田穣。
彼の人生は、短かったかもしれないけれど、辛いものだったかもしれないけれど、最後はうちに帰れた。
愛する元妻と、もっと愛する2人の子どものいる家へ。
そんな家族に囲まれて、彼はきっと幸せな一生を過ごせたんだと思う。


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