MARUMUSHI

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『オウム事件17年目の告白/上祐史浩』。

2013-02-09 00:04:53 | インポート
『オウム事件17年目の告白』を読んだ。

彼に対する印象が変化する内容だった。自分の父・母のことを彼自身が語っているのは驚きだ。



この本の中でも時々登場する名前がある。
荒木浩。
上祐史浩のあとを継ぐような形でオウム真理教の広報を行なっていた人物だ。

僕は、彼らが袂を分かった理由を上祐氏の頭の良さにあると思っていた。
上祐氏は荒木氏よりも頭の回転が早い。それは会見の様子などを見れば分かると思う。

上祐氏は教団をいち早く立て直し、社会的に認められるために、麻原彰晃という人物を切り捨てたのだと思っていた。
それに対して、荒木氏は完全にそのことに迷っていた。その様子は映画『A』や『A2』で垣間見えた。
だが、ことはそれほど単純ではなかったようだ。
上祐氏も迷い、苦しみ、そして今の『ひかりの輪』という団体設立にいたった。
この著書の中ではアレフという組織はかなり危険であると繰り返し上祐氏は語っている。
そのアレフに今も属しているのが荒木氏だ。

本を読んでいてもこの荒木浩という人物がどうしても気になった。
今、彼は何を考えているんだろうか?どうして『ひかりの輪』に彼はいないんだろうか?僕の印象では、彼は『ひかりの輪』にいておかしくない存在に見えた。上祐氏が語るように、麻原という絶対的なものからの束縛からはなかなか抜け出せる物ではないのか?それとも他に考えがあっての事なのか?



現世の繋がりを否定する教義から、全ての繋がりを肯定し感謝する教義へと上祐氏の考えが変わり、ひかりの輪へと繋がっていった。いわば内向きから外向きへ彼らはそのベクトルを変えたのだと言える。そして、その繋がりは強固でありながら柔軟、しなやかな形に変わったのだろう。
人や組織は時勢で変化する。たぶん、どんなに高尚な人物でも慌てたり、焦ったり、困ったり、周りを困らせたりする。だから、上祐氏もいつまでも今のままでいられるかどうかは分からない。でも、今の彼は良いと思う。これまでの業や罪を背負いながらも、前に進もうとする意志がこの本から読み取れた。
「デモ程度で世界は変わらない」と彼は反原発デモを見て言った。
それは、「テロぐらいやらなきゃ」という意味で言ったのではなく(冗談で言った部分はあるだろうけれど)、「人の心を変えなくては、そしてそのためにはまず自分が変わらなくては」という意味で言ったのだろうと思う。それは、オウムを通してではなく、その後の17年を振り返っての言葉だったのだと思う。



オウムの一連の事件は今の時代に直結する問題をいくつも内包している。
そのことに気付くためにも、この本は良い本だと思う。