前回の続きを。
②日本人選手のインサイドへのアタック
オンザコートワンになったことで、背の高い外国人選手の数が減り、日本人選手にとってはゴールにアタックしやすくなったと予想される。しかし、ここからもう少し数字を深く掘り下げていくと、残念ながらバスケットボールという競技における日本人の典型的な弱点が見えてきてしまう。
(日本人選手のオフェンス)
上の表を見ると、日本人選手のシュートに占める3ポイントの割合は、昨年から今年にかけて5.4%も減っている。昨日書いたように、全体として日本人選手がボールを運び、外国人選手がインサイドで1on1を仕掛けるのを日本人選手が3ポイントラインの外で待つという構造には大きな変わりは無いものの、この数字からは、日本人選手が攻撃するエリアはよりゴールに近付いたと見受けられる。
しかし、である。単純に日本人ビッグマンのプレイングタイムが伸びれば、2ポイントシュートの機会が増え、全体として3ポイントの割合は下がってくる筈。事実、伊藤選手のプレイングタイムは昨年の570分から996分へ、青野選手は昨年の662分から781分へ増えている。ぬか喜びだったが、3ポイントの割合が下がったことで、必ずしも日本人選手がゴールにアタックするようになったとは結論付けられない。
上の表の真ん中は、得点に占めるフリースローの割合で、右側はフィールドゴール試投数1本に対する、フリースロー試投数の割合。残念ながらこの二つの数値は去年から殆ど変わっておらず、つまり、ゴールにアタックする姿勢には大きな変化は見られないということ。いや、これは姿勢の問題というよりは、ボディコンタクトに強いかどうか等の、むしろフィジカル面の問題で、一朝一夕に代わるものでもないのかもしれない。
日本人選手にはスピードとシュート力があるが、フィジカル面で劣るためフリースローをなかなかもらえないところは、オフェンスにおける永遠の課題のひとつ。事実、2006年に日本で行われた世界選手権でも、先ほどの二つの数値(得点に占めるフリースローの割合、フィールドゴール試投数1本に対するフリースロー試投数の割合)は、それぞれ48%(出場24チーム中17位)と0.171(同20位)と、比較的低いほうだった。ちなみにこの世界選手権における竹内譲次選手、竹内公輔選手の数値はそれぞれ、3.2%と0.033、0%と0.065と、きわめて低かった。学生時代にいつも自分より背の低い選手を相手にしていたのに、いきなり世界選手権で自分より背の高い選手相手にファウルをもらってこいというのは、少し酷だったようだ。意外にも世界選手権で、インサイドの古田選手に続いてこの数値が高かったのは五十嵐選手(31.3%と0.667)。彼のスピードを生かしてフリースローをもらうプレイスタイルにこそ、将来の日本人の目指すべき姿のヒントが隠れているのかもしれない。
少し話が逸れたが、最後に上の表は昨年と今年の、日本人選手・外国人選手のPER平均値(PERについては昨日のエントリご参照)。日本人の平均はわずか0.3だけ、割合にして+2.6%しか増えていない。参考までに、この外国人選手のPER26.5と日本人選手のPER12.3という数値がどれくらい離れているものなのか、相場観のない方も多いと思うのでちょっと触れておこう。このPERという数値はリーグ平均を15.0に設定してあって、15.0を上回れば上回るほど貢献度が高くなる。現在NBAではレブロン・ジェームス、デュウェイン・ウェイド、クリス・ポールの3人が30.0を上回っていて、4位のドワイト・ハワード(25.8)にJBLの外国人選手の平均は最も近い。コレに対して、日本人選手の平均PERに現時点で一番近いのは、今期ニックスからブルズにトレードされたティム・トーマス(12.33)。前後にはBobby Jackson、Wilson Chandler、Rashad McCantsなど。どれだけレベルが離れているかがなんとなくわかってもらえると思う。
という訳で、日本人選手のレベルアップにはフィジカル面の強化など、根本的な対応が必要なようだ。ただ、質の面では大きな変化が見られないとしても、オンザコートワンの最大の効果はその分日本人のプレイングタイムが増えたこと。「量」があれば、やがて「質」が追いついてくる、ってこともあるだろう。
次回はPERのトップ20位をご紹介。
②日本人選手のインサイドへのアタック
オンザコートワンになったことで、背の高い外国人選手の数が減り、日本人選手にとってはゴールにアタックしやすくなったと予想される。しかし、ここからもう少し数字を深く掘り下げていくと、残念ながらバスケットボールという競技における日本人の典型的な弱点が見えてきてしまう。
(日本人選手のオフェンス)
シーズン | 3PA/FGA | FTM/PTS | FTA/FGA |
---|---|---|---|
07-08 | 42.2% | 14.5% | 0.239 |
08-09 | 36.8% | 14.7% | 0.245 |
上の表を見ると、日本人選手のシュートに占める3ポイントの割合は、昨年から今年にかけて5.4%も減っている。昨日書いたように、全体として日本人選手がボールを運び、外国人選手がインサイドで1on1を仕掛けるのを日本人選手が3ポイントラインの外で待つという構造には大きな変わりは無いものの、この数字からは、日本人選手が攻撃するエリアはよりゴールに近付いたと見受けられる。
しかし、である。単純に日本人ビッグマンのプレイングタイムが伸びれば、2ポイントシュートの機会が増え、全体として3ポイントの割合は下がってくる筈。事実、伊藤選手のプレイングタイムは昨年の570分から996分へ、青野選手は昨年の662分から781分へ増えている。ぬか喜びだったが、3ポイントの割合が下がったことで、必ずしも日本人選手がゴールにアタックするようになったとは結論付けられない。
上の表の真ん中は、得点に占めるフリースローの割合で、右側はフィールドゴール試投数1本に対する、フリースロー試投数の割合。残念ながらこの二つの数値は去年から殆ど変わっておらず、つまり、ゴールにアタックする姿勢には大きな変化は見られないということ。いや、これは姿勢の問題というよりは、ボディコンタクトに強いかどうか等の、むしろフィジカル面の問題で、一朝一夕に代わるものでもないのかもしれない。
日本人選手にはスピードとシュート力があるが、フィジカル面で劣るためフリースローをなかなかもらえないところは、オフェンスにおける永遠の課題のひとつ。事実、2006年に日本で行われた世界選手権でも、先ほどの二つの数値(得点に占めるフリースローの割合、フィールドゴール試投数1本に対するフリースロー試投数の割合)は、それぞれ48%(出場24チーム中17位)と0.171(同20位)と、比較的低いほうだった。ちなみにこの世界選手権における竹内譲次選手、竹内公輔選手の数値はそれぞれ、3.2%と0.033、0%と0.065と、きわめて低かった。学生時代にいつも自分より背の低い選手を相手にしていたのに、いきなり世界選手権で自分より背の高い選手相手にファウルをもらってこいというのは、少し酷だったようだ。意外にも世界選手権で、インサイドの古田選手に続いてこの数値が高かったのは五十嵐選手(31.3%と0.667)。彼のスピードを生かしてフリースローをもらうプレイスタイルにこそ、将来の日本人の目指すべき姿のヒントが隠れているのかもしれない。
シーズン | 日本人平均 | 外国人平均 |
---|---|---|
07-08 | 12.02 | 26.20 |
08-09 | 12.33 | 26.51 |
少し話が逸れたが、最後に上の表は昨年と今年の、日本人選手・外国人選手のPER平均値(PERについては昨日のエントリご参照)。日本人の平均はわずか0.3だけ、割合にして+2.6%しか増えていない。参考までに、この外国人選手のPER26.5と日本人選手のPER12.3という数値がどれくらい離れているものなのか、相場観のない方も多いと思うのでちょっと触れておこう。このPERという数値はリーグ平均を15.0に設定してあって、15.0を上回れば上回るほど貢献度が高くなる。現在NBAではレブロン・ジェームス、デュウェイン・ウェイド、クリス・ポールの3人が30.0を上回っていて、4位のドワイト・ハワード(25.8)にJBLの外国人選手の平均は最も近い。コレに対して、日本人選手の平均PERに現時点で一番近いのは、今期ニックスからブルズにトレードされたティム・トーマス(12.33)。前後にはBobby Jackson、Wilson Chandler、Rashad McCantsなど。どれだけレベルが離れているかがなんとなくわかってもらえると思う。
という訳で、日本人選手のレベルアップにはフィジカル面の強化など、根本的な対応が必要なようだ。ただ、質の面では大きな変化が見られないとしても、オンザコートワンの最大の効果はその分日本人のプレイングタイムが増えたこと。「量」があれば、やがて「質」が追いついてくる、ってこともあるだろう。
次回はPERのトップ20位をご紹介。