期間限定の独り言

復興の道のりはつづく。

今度こそやめてやるー

2012-04-14 21:29:53 | 日記
 全く駄々っ子のような日記で、辟易している読者も少なくあるまいと思う。そのうちお叱りのコメントが飛んで来そうな気がするが、仕様がないのである勤まらないのだから。
 色々と文句は少なくないのであるが、一つはこの学校、単純に仕事が半端なく多い。授業が週二十一時間なんて普通の県立高校ではまずあり得ないが、加えて会議が三時間、下手をすると県立の二人分くらいはあるのではないかと思う。
 そしてその割に報酬が少ない。常勤講師の辞令を見たら二十二万に少し欠けるほどだった。あまりあからさまに銭金の話はしたくないが、県立で非常勤をやるとだいたい週一コマあたり月給一万円に換算できるから、それとほとんど変わらない。もちろん常勤となるとそれに社会保障その他が加わるが、毎日フルの拘束で、授業以外に加わる仕事を考えれば、明らかに合わない。
 ちなみにこの学校は、大学を通して募集する時に、この報酬も仕事の具体的な量も全く明らかにしなかった。だまされる方も悪いが、だました方も良くないと思う。
 そして、週二十四時間がどのように分布しているかというに、最後の授業が終わるのが午後七時前である。朝は八時頃から始まるから、下手をすると十二時間くらい平気で連日拘束される。
 こんな事をつらつらと書いていると、今日び世間ではそれが当然であるという人もきっと居るであろうが、あえて野暮な正論を言うならば、教員だろうと何だろうと、八時間労働をはみ出す分は残業であるはずだ。サビ残なんて略語は私はこの間始めて目にしたが、これは本来は不当労働行為であって、みんな唯々諾々と従っているから、いつの間にか当然のようになってしまうのである。誰かが声を上げなければ現実は変わらない。それで私は来週から一人ストライキを行って辞めてやろうと思っているんだけどね。
 しかしここで、仕事自体に充実感があればまだ意欲が保つのである。私の場合、教室で生徒に授業をしていれば、それなりに疲れるけれども、九分の六でも何とかなる。しかし今日という今日は切れた。
 学校にはやたらと管理職めいたのが居て、校長副校長の下に進学コースの長というのがいる。これが何だか地獄の獄卒みたいな恐ろしさで、とにかく生徒を震え上がらせて何も考えさせないようにして、その隙間に知識を注入するのがいちばん効率が良いと思っているらしい。前回にもちょっと書いたけれども、雰囲気としてこの学校は陸軍幼年学校にたいへん似ている。いやそんな所入ってみた事はないけれども、要するに、ある観念で人間を染め上げて一つの目的に邁進させる教育である。それはやり方がうまければある程度成果は上がるものであって、生徒のコメントを読んでいると、時々北朝鮮人民みたいな印象がある。それでも今の所この学校の進学コースは上り調子で、昨年度はついに東大理Ⅰに現役で入れたというのが自慢である。ロビーにはボードを立て並べて、麗々しく合格者名簿が張ってある。予備校のような感がある。それでキリスト教教育なんてどこにあるかと思う。イエスがこれを見たら片っ端から引き倒すのではないか。
 それで今日は始めてその長が私の授業に入り込んで来たのだが、彼がじろじろと見回っているうちに、運の悪いことにはその目前に居眠りをしている生徒が一人いた。いつぞやも書いた通り、寝ている生徒を起こさないのは業務命令違反だと言う学校だから、私も日頃からよほど気をつけていたのだけれど、今日はつい気がつかなかったのである。それは確かに落ち度だが、知って放置したのではなく、ちょうどその生徒の意識が飛んだ所に長が入って来たという感じではなかったかと思う。
 私も気がついて、どうするかなと思って見ていたら、いきなり長はそいつの頭を張り、叱りつけて出て行った。私も少し驚いたが、油断大敵ですな、と声をかけてやった。教室の空気は和んだが、それが長には何だか癪にさわったらしい。
 授業が終わって職員室に戻ったら、管理職の席の背後の小部屋に呼び出されて叱られた。はいはいと恐れ入って聞いていたが、うちに帰って晩御飯を食べる頃になってよくよく考えたら腹立たしくなって来た。
 私が考えたのは、つまりこういうことである。古典の授業の間は、教室の中では私がとにかく唯一絶対の存在であるはずだ。たとえ長であっても、その授業中に勝手に生徒に手出しをするのは越権である。寝ている生徒がいるというなら後で指導を承る。その場でならばせめて指示をしていただければ私から起こす。
 それを断りもなくいきなり頭を張るということは、授業者である私を、生徒全員の前で蔑ろにして見せたということである。それで生徒に舐められるなというのは筋が違うであろう。あの場ですぐ生徒に声を掛けたというのはとっさの本能であるが、自分も成長したなと思う。昔ならビビッて何も言えなかったと思うが、つまりああいう時はすぐ自分の手に教室の主導権を取り戻さなくてはいけないのである。
 それを長は何だか自分の指導が茶化され侮辱でもされたかのように感じたようであるが、やはり旧陸軍だよなあと思う。私なんかはマジメも休み休み言えというのがモットーで、いわば海軍の方がまだ性に合う。気風に合わないのだから仕方がないので、そんなに統一的にやりたいんなら長(化学)が古典の授業もやって下さいてなもんである。ちなみに私は高一の化学くらいならまだ出来る。ニ三年はさすがに無理だけれど。
 まあ今日の一件で私は長に目をつけられたに違いなく、この先いって絶対幸せにはなれないであろう。だいたいここ数日は九時間目が続いて身体も相当きていた。胃腸の調子がおかしく、あっという間に痔疾も再発している。唇は割れるし歯茎から血は出るしあかぎれは治らない。これすべて白血球のバランスが崩れて、自己を攻撃しているのである。
 今でこそこうして冷静そうに文章なんか書いているけれど、今日の午後は涙が出て来て仕方がなかった。長にやっつけられたからだけではなく、やはりここ数日精神状態はかなり追い詰められていて、職員室で教科書の評論文を読んでいて、悲しくなって泣けてきたことさえある。
 今日は幸か不幸か自殺を考えるよりも、冷静に辞職願と詫び状を書いて、封筒に入れて封をしてある。明日これに切手を貼って出す。さらに月曜の朝に副校長に電話をかけて通告する。その先どうなるかわからないが、まず行動を起こさないと何も変わらない。
 いきなり私がストライキしたら、授業に穴が空いて困るだろうとは思う。けれどそんなもの、非常勤をニ三人雇えばすぐ埋まる。私の代わりなんか幾らでも居るのである。
 辞めるとして、しかしわざわざみなし仮設を出て引っ越しただけは本当に勿体なかったと思う。せっかく家賃が只だったのに、口惜しくて仕方がない。高すぎる授業料を払ったと思うよりないが、これで無職になっていつまで部屋を維持して行かれるか。忸怩たるものはあるが、また名簿に登録して、どこか県立の非常勤を探すしかないか。