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芝居絵の世界  金山平三展を見てきました!!   ― 兵庫県立美術館 ―

2012-05-14 | おでかけ

  

  金山平三といえば、日本の風土をこよなく愛し、数々の風景画の名作を描いたことで知られている。

  しかし金山平三に数点だが「芝居絵」があるのはあまり知られていない。

  日本の印象派と銘打った今回の展覧会であったが、わたくしのお目当ては展示室の片隅に、展示されている

  わずか数点の金山平三の「芝居絵」である。


  過去に『金山平三画業五十年展』で金山の未発表新作が発表されたことがある。

  この時評判になったのは何といってもこの「芝居絵」であったという。衝撃を受けた人が多かった。

  展覧会での発表後、芝居絵は一部愛好家の垂涎の的になったのである。 

 

 


(今回の『金山平三展』の図録)



歌川國芳をはじめ『役者絵』と称するのものは、わが国では江戸期から盛んに描かれてきた。
しかし、「芝居絵」はほとんど私は知らない。

金山平三の描く「芝居絵」は舞台のスケッチだけにとどまらない。
「奈落の風景」 「はやし内(←下座音楽)」 「楽屋風呂」 「せり上がり」など、いってみれば舞台裏のさまざまなスケッチが独特のタッチで描かれて
います。
ほぼ30数年に亘ってコンスタントに描いたそうだが、それでいて筆致に大きな変化がない。
つまり最初から確立した様式をもって描かれたということかもしれない。

では芝居絵の本質とは何なのだろうか。
体で覚えた型や所作、ひいては動きやリズムの表現ではないだろうか。
金山は幼い頃に見た芝居の情景を空で思い浮かべて、下書きなしで描いたという。
描いている最中に、いつの間にか身体が動き、耳には鳴物が聞こえてきたとか。

私は東京美術から出版された『金山平三全芝居絵』を神田の古本屋で買ったのが昭和36年のこと。
これは金山平三のはじめての画集であることを後に知ったのである。
その画集の中から「お気に入り」の数点を紹介したい。

 


『吉田屋』の伊左衛門が編み笠をかぶり、紙衣(かみこ)を着て、花道からの”出”である。
その立ち姿そのものが、和事(わごと)の極致とでもいえないだろうか。

黒衣が差し出しを持って、その前後にいるのがおわかりでしょうか。
この「差し出し」の灯が、役者の”面明かり”になる。 古風な演出だ。

西の桟敷の提灯が昔の芝居小屋の華やかなざわめきを思わせる、ほのぼのとした芝居絵です。 

 


歌舞伎には三種の色の「定式幕」というのがある。
この絵のポイントは、その定式幕だろう。

『仮名手本忠臣蔵』の由良助の引っ込みの絵である。
幕前に立っているのが”送り三重”を弾いている三味線奏者。
その下座が、長年住みなれた城を明け渡して去る由良助の無量の感慨が伝わってきそうな絵である。

 


『夏祭浪花鑑』の長屋裏。
団七が養父の義平次を殺す場面です。

そして正面の黒い塀の向こうには高津神社のだんじりの灯が描かれています。
芝居好きの人には、こたえられない名場面です。
作者は地獄と極楽が共存するという、芝居のふんいきをくまなく表現している。

 


「夕顔棚のこなたより表われ出でたる武智光秀」とチョボが語ります。

『絵本太平記』 十段目の武智光秀が、竹藪のあいだから姿を表わす。
国崩しめいた顏つくりです。私はこの武智光秀の”出”がいちばん好きな所です。

この絵の右手に、尼ケ崎の隠れ家の軒の夕顔棚が描かれています。いかにも閑居らしい風情があります。

 


「はやし部屋」の内部。
演奏者が舞台の様子をうかがいながら絶妙の間(ま)で生演奏を付ける。

中央に描かれているのが大太鼓。
この大太鼓でドンドンと音をたたくと、雪の表現になる。
今もテープではなく、生演奏でやるところに「歌舞伎」のおもしろさがある。

 

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