Dream Gate ( 中野 浚次のブログ )   

本日はようこそ開いてくださいました!お芝居のことグルメを語ります!


          

松緑の「丑松」一本気な性格を大熱演!!  ―新橋演舞場「三月花形歌舞伎」―

2013-03-28 | 歌舞伎

  昼の部に上演された『暗闇の丑松』は私にとって思い出のある狂言である。

  昭和58年2月。忘れもしない横浜の青少年ホールで自作の公演があり、中華街での打ち上げも中途で退

  席してタクシーで東銀座の歌舞伎座に駆けつけた。

  初代辰之助の丑松で『暗闇の丑松』を見るためである

  そのときの配役を紹介すると、丑松に辰之助ほか、お米に菊五郎、お熊が菊蔵、四郎兵衛に先代の 

  権十郎、お今に田之助、祐次に海老蔵(故団十郎)、妓夫三吉は岩井半四郎。

  今から思えば夢のような超豪華キャストであった。すでに故人になられた歌舞伎俳優さんも多いが、端

  役に至るまでアッと驚くような布陣だった。

  それでも当時は「歌舞伎低迷」の時代で、空席が目立った。八月にはいつも「三波春夫ショー」で貸館してい

  た時代であった。

 

「暗闇の丑松」は、昭和9年に六代目の丑松で東京劇場で初演されたらしいが、長谷川伸の『瞼の母』、『一本刀土俵入』などよりも上演回数は少ない。

わたくしは長谷川伸作品のなかでこの『暗闇の丑松』がいちばん好きな作品である。2番目が『中山七里』。

『中山七里』は大阪の新歌舞伎座で初代松緑と山田五十鈴で見ている。あのときの舞台がいまも心に刻み込まれているのであります。


ところで『暗闇の丑松』は講談をその素材にした作品ですが、主人公丑松の気風がよくて、一本気なところが実にうまく描かれているのと、「天保の改革」

という江戸の暗い時代を背景に市井(しせい)の風俗描写が登場人物とからまって見事に活写されていることである。 

 

   『 暗闇の丑松』

   松緑の丑松は初演。つい熱が入って大芝居になるところがあるが、きりっとしまって一本気で、苦み走った

   男を力演した。

   しかも音羽屋系らしく小悪党でも小ざっぱりした、粋な江戸っ子の板前である。

   序幕鳥越の二階での、幕切れの遠くをさす指のキマリ、四郎兵衛の家に下手から出るイキ、湯屋の裏手

   から殺気を帯びて出てくる凄味。欲をいえばもう少しサスペンス性があってもいいのではないか。

   一番いいのは、ラストの花道の団扇太鼓の引っ込みがうまい。切羽詰まった顔つき、まっすぐな芸。

   父・辰之助の引っ込みを凌ぐ、いい出来であった。

   対するお米は梅枝。一座のなかで一番の適役だと思ったが、感情の起伏に乏しく、陰翳が微塵もない。

   この人はやはり時代物か。それでも世話物で宇野信夫の『神田ばやし』の小娘はうまかったのに。

   


死ぬ決心をする絶望感、それゆええの哀れさが見る側に伝わってこないのである。

 

団蔵の四郎兵衛は、いかにも女を手籠めにしてから売り飛ばしそうなニンに適った菊五郎劇団の重鎮。

お今の高麗蔵もうまくこの役を生かしてはいるが、長谷川伸がわざわざト書きで指摘している{粋な女だが得手勝手な気象}にはやや乏しい。

ほかに、お米の養母お熊の萬次郎がいい。老後を左団扇でくらしたい魂胆が見え見えなのが萬次郎らしい芸でおもしろい。

現・権十郎の浪人だが、あまりにも善人すぎる。もっといやらしさがあっていい。

今回いちばんいいのは、やはり橘太郎の三吉だろう。丑松に酒をすすめられて口が軽くなっていくところのテンポがすばらしくいい。いわゆる長谷川伸の

世界に匂いを感じさせてくれる。

匂いといえば、松太郎の板橋の使いのあのとぼけた味も貴重。亀三郎の岡っ引きも気質、動きが舞台に厚みを加えた。

演出は大場正昭。昨日品川で見たみつわ会の『雨空』『三の酉』も大場さんの演出であった。

あとひとつは、菊之助で『妹背山御殿』。

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東銀座駅と直結した木挽町広場(歌舞伎座地下)です!1

2013-03-21 | おでかけ

 

新橋演舞場の三月花形歌舞伎昼の部がハネて劇場を出ると、風がつよい。

しかたな東京くメトロ東銀座の地下鉄口にもぐった。

まず、都営浅草線の改札口前を通ると「歌舞伎座方面」の表示が目に入る。

左折すると、数日前にオープンした「木挽町(こびきちょう)広場」が。

目の前に「ほうおう」の歌舞伎座の特大提灯がお出迎え。

そうだ、この上が新装の歌舞伎座なのだ!!4月2日からいよいよ杮落とし興業!!

広場はかつて歌舞伎座の大間で見た朱塗りの柱と同じ色調で”和”の空間

 


こちら「歌舞伎キャラクターグッズ」は歌舞伎座新開場より一足先に店開き。

この種のお土産ショップは他に何軒かありました。

そう歌舞伎座名物「きんつば」も実演販売していましたよ。

それに「セブンイレブン」もまけてはいません。「歌舞伎揚げせんべい」を目につくところに配置したり。商魂たくましい!!

 


こんどは食べ物のお店。

あんみつ、白玉しるこなどの甘み処「 歌舞伎茶屋]も広場に出現。

お蕎麦もありますが、お値段は銀座料金!!

 


歌舞伎座正面入り口へはエスカレーターで。

その手前には売店「はなみち」が。飲み物、サンドイッチなどの軽食。

それに役者さんへの楽屋見舞いの祝袋、花粉症、黄砂対策のマスクも

 


忘れてました!! タリーズコーヒーの店舗も。

でも幕間にさ。ちょっとコーヒーが飲みたいとき、わざわざエスカレートで地下へ・・・・・なんと不便でしょう。

広場はまだ閑散としてましたが、上の劇場が開場すれば・・・。

歌舞伎座チケットが1等席で2万円。この広場で飲み食いすれば1万。

歌舞伎見物もお高くつきますね・・・・と思いながら次の目的地新宿に急いだのでした。

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渋谷・文化村の”春 秋”に行ってきました!

2013-03-18 | グルメ


渋谷もずいぶんと変わった。3年ぶりだった。

東横線が地下5階にもぐっちゃって、銀座線から東横線への乗り換えがいままでだと1分もかからなかったのが、5分はかかる。

それに待ち合わせのメッカ渋谷ハチ公の銅像がありゃせんのよ(←どこの方言なの?)。

『湘南の風』 とデカく書かれた看板の下にハチ公におぼしき壁画。

約束の時間どうりに来た友人に、東京人を装って当たり前の顔で「よう!!」と声かけたけれど、内心ここがハチ公前なんだとホッ!!

さて、今夜は文化村「春秋」で飲み会。

私はこのお店は初めてだけど、渋谷コクーンで観劇することが多く、劇場を出た通りの向えにあり、店の名前だけは知っていた。

直木賞作家の松井今朝子さんらおばちゃん作家たちが、ここで忘年会、新年会をやったと、のちに知った。

ちなみに松井今朝子さんは、京都祇園の老舗小料理屋『川上』のお嬢さん。いまは大宮で作家活動中。

「春秋」はダイニングキッチンである。板長の長谷川さんの前のカウンターをあらかじめ予約していた

渋谷の喧噪を感じさせない、こににはは大人の空間がある。

 

気取らず本物を出し続けたい。それがお店のキャッチフレーズ。

旬の味をシンプルな技法で、しかも客の注文にも快く応じてくれます。

その日一番美味しいものを市場で選び、海の幸と山の幸との最高の出会いを供してくれる気軽なお店なんです。

それにディナーは全席喫煙OK。ほかに恵比寿店、溜池山王店がありますが、どこも分煙。

だから文化村店大好き 

 

   コースの始まりは、「春秋」の名物「野菜の籠」から。

   好きなだけ取り放題、食べ放題。

   契約農家からの新鮮な有機野菜。その素材の力強い味を引き出すため、ほぼ

   毎日契約農家から旬のお野菜が直送されてくるとか。

   草食男子とはいえ、そんなに野菜をたべられるものじゃない。

   「野菜の籠」の中に大学いもを発見!! 大学芋も野菜の内。メチャ旨い!!

   折箱にでも入れてもらって持ち帰りしたかったが、さすがにそこまでは言い出せませんでした!


 
   

   ドリンクメニューも豊富。

   ことに渋谷という場所柄か焼酎は品数が豊富である。

   画像は「タイガー&ドラゴン」のロック割り

   鹿児島の芋焼酎で、虎の如くうまい酒をかぎわけ、竜神の如くがぶ飲みする。

   そこからの銘名だそうです。
 

    
   ←画像は旬のお造り5種盛り。

   野菜ばかりではない。

   漁港からの直送の新鮮な魚介をその場で料理してくれる。

 

 

 

 

 
   ←別注した「初鰹のたたき」。

   先のお刺身の一種に鰹(カツオ)があまりにも美味しかったので、別に一皿所望!!

   なんでも鹿児島沖で獲れたカツオだそうで、空輸で本日入荷した初鰹だそうです。

   料理長の苞丁さばきもお見事でした。

   備長炭でじっくり焼いてから供されたのでした。

   3月にカツオを食べるなんて、季節の先取りですよね。 

 

    ←「牡蠣のクリームコロッケ」 。

    春秋の名物のもう一つに季節の素材をつかった自家製コロッケがあります。

    このブログを更新のころには、桜海老のコロッケが登場していることでしょう。

    ランチメニューには定番になっているとか。

    最近は「女子会」と称して、女性の飲み会が多いそうです。

    ちなみに女性客に人気のメニューは何だと思いますか?

    正解は「春秋風肉じゃが」です。 

 

    

    ←御飯物は「ずわい蟹の釜めし」。

    ランチメニューではおにぎりが定番ですが、夜はコースによって、「野菜」、「牡蠣 」などの

    釜めしが供されます。

     なお、小鉢ものは「富山産のほたるいかの酢味噌和え」でした。 

 

 

                               

                                           当日のコースメニュー  「春秋」

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浅利香津代の熱演で万太郎の『 三の酉 』初演    ― みつわ会公演 ―

2013-03-17 | 演劇

        久保万の一幕物の涼しさよ  変哲                                 

   昨年の暮れに亡くなった小沢昭一(変哲=俳名)さんの句である。

    その久保田万太郎の一幕物 『雨空』 『三の酉』を東京・品川の六行会ホールで見てきました。

  『雨空』は大正11年に新派の花柳章太郎が「新劇座」で初演。万太郎初期の代表作でもある。

  『三の酉』は万太郎熟成期の短編小説。昭和31年に読売文学賞を受賞している。

  今回は演出の大場正昭が自身の台本で初の劇化に挑戦した意欲作。

  人情の美しさと人間の哀れさと・・・・

  両作品とも”万太郎の世界”といわれていろ、濡れた散文詩がそこにある。

    

万太郎の作品は、ささやかな庶民 の生活のさりげない哀歓、つまりは人間の本質にある孤独感、人間の淋しさを描いています。

いつも思うのですが、万太郎調といわれている「・・・・・・」のせりふなんですが、一見すると日常語のように見えるけれど、「・・・・・」でぶつぶつ切れていた

りして日常語ではない。

ならば、特殊な演劇表現の”かたち”があるのではないだろうか。

つまりは近代劇のような心理だけでは、、この万太郎の「・・・・・・」は埋まらない気がするのです。つまりせりふを完全には表現しきれないのです。

最近の役者さんにいわせれば嫌うけれど、ある程度歌わないと、舞台では効かないような気がするのです。

言い換えれば「演技」ではなく、いささかの「芸」が必要なのではないだろうか・・・。

リアルにやるだけでは物足りないし、今回の2作品にも共通して感じたのが率直な私の感想なんです。


六行会ホールは、年に一度の公演にせよ、もう16回を数えるが、いまだかって満席の熱気にお目にかかったことがない。

それでも今回は、舞台と客席の空気感というか距離感が溶け合って、しっとりした舞台であった。

『雨空』

主人公の浅草指物職人の幸三に菅野菜保之
菅野は「万太郎作品」の常連組だが、やはり一頭地を抜いている。
万太郎の世界にすっぽりはまっているのはさすが。 

すでに金持ちに嫁いだ姉のおきくに大原真理子
しっとりと丁寧に演じているが、もう少し気位が高い役づくりがほしいと思うのだが・・・・・。
万太郎の『あじさゐ』にもあるが、西瓜をたべる場面で、いくら実家とはいえ、西瓜をたべるのにハンケチくらいは出すべきだろう。衣装は『十三夜』のおせきと同じ良家の御新造の着付けである。
簪の脚で西瓜の種をとるしぐさは台本通りうまくやった。こうしたなんでもない動作、しぐさが万太郎芝居の性根だと思う。

それに大原の引っ込みがよくない。
帰りがけに、どこかで蟲がないているのがきこえてくる。

「よくないてるわね・・・・うちの」

これに続いて舞台がカラになる重要なポイントである。
大原はこのセリフをあっさり流してしまう。
あまりにも日常的にいうから観客になにも残らない。
「よくないてるわね」を”芸”で聞かせる語りであってほしい。
このあたりが万太郎作品の面白さであり、また、難しさであると思うのです。

『三の酉』

原作は短編小説とはいえ、そのほとんどが万太郎調の会話で書かれている。
夜の公園が舞台。もう五十に手がとどきそうな浅利香津代の芸者おさわと、おさわのご贔屓の歌舞伎も絵にもくわしいらしい中野誠也の初老の男との会話劇、男は昼間おさわが顔より大きいマスクをした男と三の酉の街を歩いていたのをからかいながら難ずるのだが、おさわは関東大震災で両親兄弟を亡くした、その想い出に三の酉に欠かさず出かける・・・・・。
ほとんどが他愛ない会話劇である。

初の舞台化なのだが、2つの疑問がのこる。
1つは歌舞伎の『熊谷陣屋』の「組打」の場面で、遠見の敦盛を子役をつかって出している。
わずか3分足らずとはいえ、相当な仕込み費用がかかる。いや費用はともかく、この場面が必要だろうか。
とってつけたような印象は歪めないのである。

次に、おさわの吉原仲間だという鎌倉の画家夫婦との食卓の場面も然りである。
ドラマの立体化を狙った演出だろうが、逆にドラマのテンポがおかしくなる。
幸せそうな夫婦との食卓を愉しみながら、おさわに寂寥の思いが募るところなのだが、おさわのせりふだけで充分賄えるのではないだろうか。

おさわは吉原のお茶屋育ちである。
浅利香津代のおさわはベテラン女優だけあってせりふはいちばんしっかりして手強いが、、芸者上がりの風情に乏しい。
それに生活感がなく、この女の人生が見えてこない。

対する初老の男の中野誠也は2作品のなかで一番の絶品である。
俳優座のベテランであり当然かもしれないが、「万太郎の世界」を着実に,淡々と演じきった。
それはまさしく昭和の東京の男のたたずまいであった。

 

                                
                 『雨 空』(新潮社版)初版本                             『三の酉』(中央公論社版)初版本                                 

 

最後に私からの要望ですが、次回公演には、ぜひ樋口一葉原作 久保田万太郎脚本の『 わかれ道 』を取り上げてほしい。

大原真理子さん、澤田和宏くんの配役で見たいものである。

 

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おいしい時間が、ここにはあります。  ヱビスバー (東京駅・塀横丁)

2013-03-15 | おでかけ


時間潰しに東京駅をぶらついていたら、構内の黒塀横丁に「ヱビスバー」をみつけた。

先月には見かけなかったのだが・・・・。

3月5日にオープンしたそうだ。

サッポロビールが販売するプレミアムビール「ヱビスビール」が持つ「和」と「モダン」の世界観を表現する同業態だとか。

東京・大阪に現在9店舗あるという。

店内はさほど広くはなく、ヱビスビールのブランドカラーであるエンジ色を基調にした和風の構えである。

白木風のカウンターや伝統工芸の「網代網」をイメージしたモザイクタイルなど随所に和のテイストだった。 

 

  

オーダーしたのは、あんず、かぼすを加えたリビアカクテル(←画像/右)。

 

 「ヱビスビール」「ヱビス ザ・ブラック」「ヱビス&ヱビス ハーフ&ハーフ」「琥珀(こはく)ヱビス」

ほかに「エビススタウト クリーミートップ」の5種類のヱビスビールがある。

「レッドアイ」「シャンディガフ」「プレシャスハート」など8種類のビアカクテルなどメニューも豊富。

 

  


フードメニューは、「おとなのポテトサラダ」「愛知県産マダイのフィッシュ&チップス」、「逆輸入チーズプレート」など。

、ヱビスビールと「相性の良い料理を取りそろえているという。

9店舗の中でいちばん小規模であるのに、満席の盛況だった。

東京駅という場所柄か、いわゆる出張族の憩いの場のようでもあった。

画像/左は黒ビール。右は琥珀ヱビス、下(中央)はおとなのポテトサラダ。


 営業時間は11時~23時。

 

 

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