Dream Gate ( 中野 浚次のブログ )   

本日はようこそ開いてくださいました!お芝居のことグルメを語ります!


          

三回目を迎えた「團 菊 祭 」     ― 大阪・松竹座 ― 

2012-05-28 | 歌舞伎

  5月といえば 「團菊祭」。

  東京・歌舞伎座が建て替えのため、一昨年から大阪・松竹座でお引越し興業。早や3年目になる。

  「新幹線から富士山が見えたとか見えなかったとか」場内でそんな話し声を耳にした。

  「海老蔵フアン」か「音羽屋フアン」か知らないけれど、観客の中に東京からの遠征組もかなりいたようだ。

  せっかく大阪に来たのだから、昼夜通しで見たい。、それとたこ焼きとお好み焼きもたべたい。

  1等席が17000円だから、昼夜でその倍はかかる。それにホテル代、旅費などで・・・まあ10万仕事ですな。

  歌舞伎は敷居が高いといわれるけれど、どこの世界だって同じ。熱狂フアンがいるものです。

 

 


「團菊祭」とは、歌舞伎史に偉大な足跡を遺した九代目市川團十郎、五代目尾上菊五郎を顕彰するために昭和11年から始まったものらしい。
もちろん私などまだ生まれていない時代です。

今回は團十郎、菊五郎のほかに、関西勢から坂田藤十郎、上村吉弥が参加している。
昼の部の演目は、菅原の『寺子屋」、舞踊劇「身替座禅」、切狂言は上方の「封印切」。

順序が不同だが、興味のあるお方はしばらくお付き合い願いたい。


 藤十郎の一世一代の忠兵衛 「封印切」

 

  

 
昼の部の坂田藤十郎『封印切』の忠兵衛が感動的である。

「一世一代」という言葉がある。これを最後にこの役は演らないということである。
藤十郎の忠兵衛を見ていると、まさしく「一世一代」の芸ではないかと思われるくらいだ。
今までにない芸に新しい工風、しかも集大成の舞台のような気がしてならない。

たとえば「封印切」の忠兵衛は生と死の、もうぎりぎりのところにいる。
そういう人間の哀れさと、言うに言えない気持ち。
同じ花道なのに”出”の華やいだ気分と、”引っ込み”のときの絶望的な気持ち。
つまり、すこしの間に逆転してしまった恐ろしさと言おうか・・・・。
そういうものを、どう観客に訴えていくのか。どう芸で工風するのか?

それを見つけたかのような、今回の花道の”出”と”引っ込み”であった。

本文では、おえんが「またお近いうちに・・・・」と本舞台で忠兵衛を見送って、花道七三の忠兵衛が「近日・・近日・・・」とつぶやいて引っ込むと、ある。
今回は藤十郎自身の工風で、見せ場の多い印象的な”幕切れ”であった。

何回もやっているうちに、ひとつの役の性根からくるリアリティが濃くなるんですよ・・・・・番附で藤十郎さんは話していた。
おこがましいようだが、そのリアリティこそ上方歌舞伎のいちばん大事なところではないだろうか。

梅川に菊之助、八右衛門が三津五郎
井筒屋のおえんに東蔵。ふっくらとした芸、上方風ではないが、味のある花車方である。


★  「身替座禅」 

  


とかく最近は「身替座禅」というと笑劇じみた「舞踊劇」になった傾向がある。

團十郎の玉の井。抑えるところは抑えて松羽目物の品位を保っていた。

菊五郎の右京の面白さは天下一品。
この面白さは、恋人花子との件で色気があって艶っぽく、だからおかしみが効いていることだろう。

浮気から帰っての”のろけ話”を太郎冠者に自慢する件(くだり)など、立役と女形との踊り分けがうまく、メリハリが効いている。

侍女千枝は巳之助。このところ巳之助の持ち役といってもよいだろう。
踊りがまことに端正。抑制が効いて行儀がいい。


★  「寺子屋」 

 

  


松王は松緑だが、声量といい、ニンといい、それなりの松王だが、スケールが小さい。
ことに泣き笑いの「けな気な奴・・・」からの言葉の切り方、桜丸への思い、息子小太郎への思いが散文的である。
小太郎の死を思ってつい桜丸と対照させるのが本来の姿で、桜丸を悼む心のかげに小太郎への思いがあるべきだろう。

この芝居の人間的な描写と義太夫狂言の手法のバランスが不足していろように思えてならない。
演っている本人は分かっているつもりでも、観客にはタダの説明にしか見えてこないのである。

海老蔵の源蔵を見るのは2度目。
前回よりも、段取りもスムースで引き締っている。
しかし、どうもあの目のギョロギョロが気になってしかたがなかった。
たしかに「目千両」の人だが、源蔵には不向きな気がする。

これはあくまで私見だが、松緑の源蔵、海老蔵の松王と役を入れ替えたほうが正解の気がする。いかがでしょうか?

菊之助が千代。いろは送りで焼香しながら、乳をおさえて倒れるところが印象的だった。

園生の前は吉弥
上方のベテランだけに、出てきただけで舞台がグッと締まる。

戸浪が梅枝。玄蕃が亀三郎。父上彦三郎の声にそっくり。もう少し肩の力がぬければ有望株だろう。

言葉はわるいが、今回の若手による『寺子屋』は勉強会の域である、といえば言い過ぎであろうか・・・。

 

 

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道頓堀 「はり重」の ビフカツ

2012-05-26 | グルメ

 

                                                     
     大阪の老舗には財布に合わせて3段階あります。

   「いつも」はカレーショップで、「ときどき」はグリルでビーフカツを!!

   そして「たまには」はお座敷で高級すき焼きを!!

   お帰りには1階のお店で奥様にお肉のお土産を・・・・・といった具合。大阪人らしいですね。

   
   松竹座隣のお肉の老舗「はり重」は、このすべてが一軒で賄えるというお店です。

   2・3階は高級すき焼きのお座敷、1階の角は精肉店と昔ながらの洋食屋さん。

   御堂筋側には、最安値のカレーショップ。ビーフカレー大盛りで600円。(←ただし昼食時には行列が)。

   
   松竹座で「團菊祭」を見たかえり、「はり重 グリル」で遅い昼食をとりました。

   (←画像は「はり重グリル」の玄関)


 

 

                                        
「はり重」のビフカツは、さすがお肉のお店ですね。和牛の脂の旨みが凝縮しています。ナイフがサックリ入る。

このジューシーで、この柔らかさ。これぞ和牛の醍醐味ではないでしょうか。

タルタルソースはあまり主張のないタイプ。

お肉の旨みをそぐわない程度のさりげなさ。たっぷりかかっていました。

お肉の火の通りが完璧。衣もサックリ揚げられていて、カリカリと歯応えも充分。

添え物は、ポテトフライ、ブロッコリー、人参、たけのこなどの温野菜。いづれも新鮮で大満足でした。

食事のあとはアイスコーヒー。

タイルと木を合わせた壁面の誂えや、照明器具がレトロないい感じです。

懐かしの昭和の洋食屋さんですね。

それと、この店の「ウリ」の一つにカツサンドがあります。
松竹座の隣りのせいか、食通の人は幕間に買ってい行くという人気商品だそうです。

 

 

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「はり重 グリル」

 大阪市市中央区道頓堀1丁目9~17
☎ 06(6211)7777

営業時間 11:30~21:30
ラストオーダー  20:40

定休日   毎週 火曜日

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老松の夏柑糖(なつかんとう)が届きました!!

2012-05-25 | 本日の○○


夏柑糖(なつかんとう)をご存知でしょうか?
一口で云えば、純粋種の夏蜜柑の果汁と寒天を合わせ、再び皮に注いで固めたもの。
つまり極上の和風スイーツといった氷菓子です。

だいぶ前ですが、京の菓子舗「老松」の嵯峨のお店で買ったのが最初です。
世の中にこんな美味しいものがあるのかと思いました。
いつの頃か京都の嵯峨にはとんとご無沙汰で、「夏柑糖」のことは忘れてました。

ところが最近、歌舞伎の中村福助さんブログで、4月1日から販売されていることを知りました。
福助さんもはじめ「老松」って日舞のことかと思っていたそうです。

「老松」は正式には、「有職菓子御調達所」といういかめったらしい京都の老舗の和菓子屋さん。
戦後もののない時代に、庭にあった夏みかんの果実に、少しのサトウと寒天を合わせ、数奇者の客に創ったのが嚆矢とか。

今では、クール宅急便の全国拡大により、夏柑糖(なつかんとう)は全国的に大人気!!
新宿の伊勢丹、関西では大阪の三越・伊勢丹店でも販売しております。
「老松」では原産地である萩(←山口県)の夏蜜柑をつかっていますが、最近では和歌山の産地農家にも依頼しているとか。

ところで、同じ京都の寺町通りに「村上開新堂」という古い洋菓子店がある。
この店も「好事福蘆」という夏柑糖を販売してます。
作家の池波正太郎さんがこの店の大フアンで、現在もお店は健在らしい。

この店の「好事福蘆」は、紀州蜜柑で、中身はとりぬいた果汁に、砂糖を加え、リキュールを注いだゼリー。
「老松」は萩の夏蜜柑で、中身はあくまで寒天なんです。

「好事福蘆」を一度だけたべたことがあります。甘さだけが鼻をついた記憶が。
人の好みはいろいろですが、どちらかというと1個1460円と値が高いですが私は「老松」の夏柑糖のほうが好きです。

 

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芝居絵の世界  金山平三展を見てきました!!   ― 兵庫県立美術館 ―

2012-05-14 | おでかけ

  

  金山平三といえば、日本の風土をこよなく愛し、数々の風景画の名作を描いたことで知られている。

  しかし金山平三に数点だが「芝居絵」があるのはあまり知られていない。

  日本の印象派と銘打った今回の展覧会であったが、わたくしのお目当ては展示室の片隅に、展示されている

  わずか数点の金山平三の「芝居絵」である。


  過去に『金山平三画業五十年展』で金山の未発表新作が発表されたことがある。

  この時評判になったのは何といってもこの「芝居絵」であったという。衝撃を受けた人が多かった。

  展覧会での発表後、芝居絵は一部愛好家の垂涎の的になったのである。 

 

 


(今回の『金山平三展』の図録)



歌川國芳をはじめ『役者絵』と称するのものは、わが国では江戸期から盛んに描かれてきた。
しかし、「芝居絵」はほとんど私は知らない。

金山平三の描く「芝居絵」は舞台のスケッチだけにとどまらない。
「奈落の風景」 「はやし内(←下座音楽)」 「楽屋風呂」 「せり上がり」など、いってみれば舞台裏のさまざまなスケッチが独特のタッチで描かれて
います。
ほぼ30数年に亘ってコンスタントに描いたそうだが、それでいて筆致に大きな変化がない。
つまり最初から確立した様式をもって描かれたということかもしれない。

では芝居絵の本質とは何なのだろうか。
体で覚えた型や所作、ひいては動きやリズムの表現ではないだろうか。
金山は幼い頃に見た芝居の情景を空で思い浮かべて、下書きなしで描いたという。
描いている最中に、いつの間にか身体が動き、耳には鳴物が聞こえてきたとか。

私は東京美術から出版された『金山平三全芝居絵』を神田の古本屋で買ったのが昭和36年のこと。
これは金山平三のはじめての画集であることを後に知ったのである。
その画集の中から「お気に入り」の数点を紹介したい。

 


『吉田屋』の伊左衛門が編み笠をかぶり、紙衣(かみこ)を着て、花道からの”出”である。
その立ち姿そのものが、和事(わごと)の極致とでもいえないだろうか。

黒衣が差し出しを持って、その前後にいるのがおわかりでしょうか。
この「差し出し」の灯が、役者の”面明かり”になる。 古風な演出だ。

西の桟敷の提灯が昔の芝居小屋の華やかなざわめきを思わせる、ほのぼのとした芝居絵です。 

 


歌舞伎には三種の色の「定式幕」というのがある。
この絵のポイントは、その定式幕だろう。

『仮名手本忠臣蔵』の由良助の引っ込みの絵である。
幕前に立っているのが”送り三重”を弾いている三味線奏者。
その下座が、長年住みなれた城を明け渡して去る由良助の無量の感慨が伝わってきそうな絵である。

 


『夏祭浪花鑑』の長屋裏。
団七が養父の義平次を殺す場面です。

そして正面の黒い塀の向こうには高津神社のだんじりの灯が描かれています。
芝居好きの人には、こたえられない名場面です。
作者は地獄と極楽が共存するという、芝居のふんいきをくまなく表現している。

 


「夕顔棚のこなたより表われ出でたる武智光秀」とチョボが語ります。

『絵本太平記』 十段目の武智光秀が、竹藪のあいだから姿を表わす。
国崩しめいた顏つくりです。私はこの武智光秀の”出”がいちばん好きな所です。

この絵の右手に、尼ケ崎の隠れ家の軒の夕顔棚が描かれています。いかにも閑居らしい風情があります。

 


「はやし部屋」の内部。
演奏者が舞台の様子をうかがいながら絶妙の間(ま)で生演奏を付ける。

中央に描かれているのが大太鼓。
この大太鼓でドンドンと音をたたくと、雪の表現になる。
今もテープではなく、生演奏でやるところに「歌舞伎」のおもしろさがある。

 

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四国こんぴらでそば猪口(ちょこ)買いました!!

2012-05-08 | お買い物

 


広辞苑によれば、猪口(ちょく、ちょこ)とは、小さなのこと。一般的に酒を飲む為の小型の器()、または、蕎麦そばつゆ(汁)につけるための容器(蕎麦猪口)のことをいうと書かれています。

先月こんぴらの骨董屋で掘り出しのそば猪口(←画像/上)を買いました。
そば好きの私。かねてからぼちぼち蕎麦猪口を蒐めています。

とは言っても向田邦子さんほどの蒐集癖は持ち合わせてはいません。
向田さんはお茶一杯呑むのも、器と一緒に愉しんでいたとか。
そば猪口だって、そばつゆだけでなく、湯呑にしたり、手料理の小鉢にもつかっていたようです。

ところで画像のそば猪口ですが、いくらで買ったと思いますか?
だいたい骨董屋さんに並べられている器なんてものは、私にいわせれば、高級な寿司屋さんと同じで値段があって無いようなものです。
一つ100円。しかも正札の半額のお値段でした。
うそっ!! と思われるのも当然です。信じられないようなお値段です!! 

 

  

 ←どちらかというと私は白磁はあまり好きではありません。

  私は水羊羹の季節になると白磁のそばちょくに京根来の茶托を出します(←向田邦子著『眠る盃』より)。

  この白磁の猪口は魯山人が愛用したもので80万~90万だといわれています。

  たかが湯呑ひとつにもったいない気がします。わたしには、この50円の猪口で充分です(笑)。
 

 

 ←このたびの買い物の中で超掘り出し物の猪口です。

  正真正銘の美濃焼です。

  私などは器択びでは素人で目が肥えてませんが、市価で3万はすると思います。

 


                       


  ←私のお気に入りの一品です。

  絵柄の瓢箪はお定まりの柄ですが、全体のトーンが素朴で渋い。

  ちょっぴり伊万里の感じもあって好きです。

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