逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

シンドラー社製エレベータ事故での内外文化摩擦(筆坂事件の背景を考える)

2008年06月04日 | 共産党

『シンドラー事故:早期究明求め遺族が13万人署名』
二年前の06年6月3日に高校生(16歳)が突然動き出したエレベーターに挟まれ死亡した事故で、両親らが原因の早期究明を求める約13万人分の署名を東京地検などに提出した。
『捜査中』を理由に事故について詳細な説明を拒む捜査機関』
『まことに遺憾』『ご冥福を祈る』としながら自社の責任を認めないシンドラー社。
事故はブレーキを作動させる電磁コイルに不具合で、ブレーキパッドが摩耗し、ブレーキがかからなくなったとみている。
保守点検会社が事故9日前の点検で、このブレーキ異常を見落としていた。
「刑事責任を追及する警察だけでなく、再発防止のためには中立的な立場で、科学的に調査する第三者機関が必要」と両親は訴える。

『事件当初謝罪を拒否したシンドラー社』

事件直後に急遽来日したシンドラーエレベータ社のケン・スミス社長は、
『世界でシンドラーの製品を毎日、7億5000万人の人が利用している』
『シンドラーの製品は業界の高い基準で設計されている』
と自社の製品の優秀性の宣伝に此れ努め謝罪の姿勢を見せなかった。
シンドラー社幹部も「私には何も答えられません」と繰り返し、記者達の謝罪要求を拒否し、
当時のマスコミに、
『事故に関するお詫びや謝罪のコメントすら表明されていない』  
『外人さんは謝ると非を認めたことになり、裁判で負けるという認識ではないでしょうか』
『日本人の感覚には合いそうもありません』
等と、シンドラー社の対応への不満が報道されている。

 『9日後に一転して謝罪』

シンドラー社が、「事実関係が明確になるまでコメントできない」とした態度を一転して謝罪会見を開く。
エレベーター事故、シンドラー社幹部が謝罪 。
東京 13日 AFP】東京で男子高校生が同社製エレベーターに挟まれて死亡した3日の事故について、スイスのエレベーター製造大手シンドラー社のケン・スミス(Ken Smith)日本法人社長は5秒間記者会見の場で頭を下げる。
日本人では謝罪の時には、目は見えない様90度以上俯くか目を瞑るか半眼。
しかしスミス社長、目を見開いて周囲を睨み付ける。
何時も謝る日本人には常識なので、教えた日本人スタップは細かいところまでは気が回らなかったようです。
また『事故発生からこれまで十分な情報を開示できなかったこと』、『原因究明に取り組む』、『犠牲者の冥福を祈る』としているが自社の責任には全く言及していない。

『海外メディアでの取り上げ方』

シンドラーのエレベーター事故に対する地元スイスのメディアでの扱いは控えめで、ドイツ語の日刊紙ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング紙だけ詳しく書いている。
「シンドラーのイメージは大きく崩れた。こうした事故の際に立ちはだかる問題が2つある。
1つは日本では人の生命にかかわる技術については他の国と比べて、非常に厳しく完璧さを求められること。
もう1つはグローバル化にあっても依然ある文化の大きな違い。記者会見で頭を下げ日本式に謝罪したことをシンドラーの米国の顧問弁護士は、会社が過ちを認めたことになると戦慄(ホラー)を持って受け止めた」と懸念を表明する。

『謝罪の国内基準と国際基準』

シンドラー社エレベーター事故から一週間以上も経った9日目(6月12日)にやっと、シンドラー社のケン・スミス社長が謝罪し、頭を下げました。
其れでもエレベータ本体は問題なく(自社の責任は無く)整備が問題だとしています。
この事件は欧米と日本との文化の差を考えさせられます。
同様な事故では、日本企業ならその日に謝罪します。
社長が『責任を感じています』風の言葉を、記者会見場で大々的に言い頭を下げ謝罪するでしょう。
この謝罪対応の違いは、欧米の会社は無責任で、日本の企業は誠実で責任感があるからでしょうか。
いいえ違います。単に彼我の謝罪に対する文化の違いが有るだけで、日本の会社が誠実だから謝罪したのでは有りません。
日本では、誰か抗議が有れば謝罪するのが礼儀なのです。
単に礼儀(道徳の一種)として頭を下げたので有り、日本人は直接的に責任問題と謝罪は関係しているとは考えてはいません。
日本では謝罪と責任は同じでは有りませんが、外国(世界基準)では、謝罪すれば当然自動的に責任を問われます。謝罪と責任は殆ど同じものと考えられています。
此れはどちらが正しいか間違いかでは無く、単に日本と外国の文化の差の問題なのです。
『謝罪が有るから責任も有る』との考えは外国では当然でも、日本人は違和感を感じます。

『責任の世界基準と日本基準』

シンドラー社が9日目に謝罪したのは、そう(謝罪)しないと日本では話が前へ進まないからです。
彼等はやっと其の事(日本的謝罪のルール)に気が付いたので謝罪しましたが、(世界基準の)責任を感じた訳では全く有りません。

しかし日本人でも、役人達は絶対に謝りません。
特に警察官、検察官、国税庁職員、高級官僚は謝りません。
彼らが外人だから謝らない訳ではなく、責任を取りたくないから謝らないのです。
私達も彼等の前で絶対に謝罪してはイケマセン。
謝罪すれば自動的に責任が追及されます。
しかし此の常識は、仲間内では通用しません。
みなさんが身内の間で、警察官や役人と同じ様な態度を執れば顰蹙をかうでしょう。
間違いなく友達を失くします、気を付けてください。
全て納得できなくとも出来る限り謝罪する方が、人間関係は円満になります。
ここは日本的に、多少不満があっても頭を下げて、大人の態度をとる必要があるでしょう。

『謝罪は日本の文化』ケン・スミス社長とワドル艦長の対応の違いは何か。?

日本の文化に疎いシンドラー社のケン・スミス日本法人社長はなかなか謝罪しませんでしたが、宇和島水産の練習船えひめ丸を沈めた米海軍の原子力潜水艦グリーンヴィルのワドル艦長は、すぐさま日本側に謝罪しています。

シンドラー社と違って、半世紀に亘って日本を半占領しているアメリカ軍は日本の文化(謝罪文化)や生活習慣に習熟していました。
即座の謝罪は反米世論を抑える為でそれ以上では有りません。
責任を感じたから謝罪したのではなく単なる世論工作です。
日本的に穏便に済ますため謝罪した。
日本では責任追及を逃れる為に、断固謝罪を拒否すれば益々相手側が依怙地になり話の解決がよりいっそう難しくなります。
責任を認めたわけではないが、とりあえず謝罪して、其の場を丸く治めようとしたのでしょう。
『謝罪すれば責任を問わない』のが日本文化の特徴です。

『責任と関係しない日本文化』

小泉純一郎首相以前の自民党政権では、失言や教科書、靖国問題などで、中国韓国からの抗議には、一応謝罪していました。
村山富一首相は、『村山談話』で日本の侵略戦争を認め、一応世界に対して謝罪しています。
しかし日本では、『謝罪』は『責任』と繋がりませんから賠償はしません。
今までの、自民党議員や閣僚の暴言(失言)への謝罪は、自身の間違いを認めた訳ではない(ましてや責任を認めたわけではない)ので謝罪した端から、同じ様な失言を繰り返します。
小泉純一郎は、自分が幾等悪くとも謝罪しませんでした。
いくら発言や行動が理論的に矛盾していて謝罪せず、小学生並みの詭弁をろうして開き直る。
結果は、物事を完全にこじらして日本の外交は完全に身動きでき無い有様になってしまった。
小泉順一郎は白黒、敵味方を鮮明にするブッシュの真似をしていましたが、猿真似は絶対に成功しません。
今までの私達日本人みんなが持っていた(世界基準に合わない)いい加減な謝罪文化、曖昧文化こそ、私達が守らなければ成らない『良き日本の伝統文化』なのかもしれない。

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3 コメント

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おじぎ (ましま)
2008-06-05 15:55:02
こんにちは

テーブルの前で雁首をそろえ、直角のお辞儀をするのは、日本人の文化と言うより広告代理店の「危機管理マニュアル」がはやらせたのではないでしょうか。
「・記者会見の準備と上手な追求回避の仕方」などで。
始まったがパブリシティー重視を打ち出した1980年代以降だと思うんですが……。
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何時もお世話様です (ブログ主)
2008-06-05 18:55:23
素人がやると失敗する

船場吉兆の破産会見で女性社長が、膝の上に置いたカンニングペーパーを見ながら受け答えしていて批判されていた。
この女社長は以前、偽装発覚時の記者会見では長男の副社長(専務?)に横から小声で囁いて顰蹙をかっていた。
これはヤッパリ素人任せにせず、広告代理店の「危機管理マニュアル」が大事だという事でしょうか。?
なんともはや。釈然としませんね。
返信する
危機管理 (kaetzchen)
2008-06-06 00:08:47
私自身も小さい会社の倒産騒ぎに巻き込まれて,陣頭指揮を取るはめになった経験が(笑)

船場吉兆が典型例ですけど,接客しか知らない女将やお坊ちゃまの専務自身,この会社が潰れるはずがないという妄想を持ってたことがそもそもの始まり.

私はこの会社にいると確実に悪事に巻き込まれると直感的に感じて,別の道を歩みましたが,結局尻拭い.会社法や民法や刑法をろくに知らない連中の前で,一人六法全書をめくった時のことは忘れません.弁護士からは「あんたは悪魔や」と言われましたけど(笑)
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