逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

2009年初夢大胆予想、オバマはリンカーンになれるか。?

2009年01月03日 | 政治

第16代米大統領エイブラハム・リンカーン(51歳で当選)の生誕200周年にあたる2009年の1月20日に第44代大統領となるバラク・オバマ氏(47)は奇しくも同じイリノイ州スプリングフィールド選出である。
ともに長身やせ形で、演説上手で、政策的に未知数で、政治経験不足を批判されながらも大統領に当選した点も共通している。
20日の大統領任式に、リンカーン同様列車に乗って、フィラデルフィアからワシントン入りするし、就任演説のテーマは、リンカーンの有名なゲティズバーグ演説から引用した「自由の新たなる誕生」で、しかもリンカーンが使用した聖書を使い、とあきらかに自らを150年前のリンカーンになぞらえている。

リンカーン、オバマ両新大統領はいずれも前政権からトンデモナイ構造的な負の置き土産を託されていた。
150年前は、自国産業を保護するための規制を必要としていた北部工業州と自由貿易推進の南部農業諸州の根本的対立からの国家崩壊(南北戦争)前夜で、今はアメリカ発の世界的金融危機の勃発による世界大恐慌前夜。
はたしてオバマは大恐慌を止めれるのか。?それともリンカーンの様に血で血を洗う歴史上最も悲惨な内戦に突入するのか。?





オバマのニュー・ディール政策は上手く行くのか。?

1929年に勃発した世界恐慌に対して、当時のフーバー大統領はアダム・スミスの古典的経済学『大恐慌は一時的な調整局面でありレッセ・フェール(自由放任)に身を任せていれば、何れは失業も不況も収まる』と考えたが、事態はそうはならなかった。
『全ては市場に委ねれば経済は安定的に発展する』という近代経済学の経済思想は完全に間違いであった事が証明される。
しかしフーバーの後を継いだ次期大統領のフランクリン・ルーズベルト(FDR)の鳴り物入りのニュー・ディール政策は、残念ながら大恐慌の終息にそれほど成功せず、結果的にアメリカ経済を救ったのは第二次世界大戦による戦時経済であった。
ルーズベルト(FDR)のニュー・ディール政策は財政的にきわめて慎重で恐慌脱出には成功しなかったが、それでも新しい組織や制度を作り国家としての方向性を正てアメリカの60年代の繁栄の礎を築いた。




『国民健康保険の創設』

政敵だったヒラリー・クリントンを国務長官に起用した理由が、クリントン時代にヒラリーが造ろうとして挫折した『国民皆保険制度の成立』の再チャレンジで有るなら社会保障制度の創造に匹敵する『アメリカ社会の大改革』となり、バラク・オバマの『ニュー・ディール』は十分にアメリカの転換点と成り得る。
しかしこの政策は連邦政府の膨大な財政支出を伴うばかりでなく、150年前の南部農場主の反対以上に強力なアメリカの医療産業と保険業界の利権を侵害することになり、150年前と同じような徹底的な抵抗が予想される。



『高速鉄道網等公共交通機関の創設』

オバマは就任したら高速道路を大規模に作り整備していくと言っているらしいが、自分をリンカーンになぞらえるなら150年前に大陸間鉄道を何本も開通させた当時のアメリカに習い高速鉄道(新幹線)をアメリカ全土に敷設する21世紀のニュー・ディール政策こそがアメリカを根本的に変え、救う事が出来る。
今でも西海岸の二大都市サンフランシスコとロスアンゼルス間には、鉄道はなく移動には自動車か飛行機しかない。
先進国とは呼べない中国や台湾韓国でさえも新幹線を敷設したのに、今のアメリカ市民の普通の交通手段は車と飛行機という、どちらも大規模に使用できないエネルギー効率の甚だ悪い古い移動方法をとっている。
このような弱点の有るアメリカでは、9・11事件で空港の利用が制限されると、たちまちアメリカ合衆国全体がは巨大な陸の孤島となってしまった。
自動車と飛行機に頼るアメリカの交通形態には、色々な根本的な弱点が隠されているのである。
アメリカ全土の新幹線網の創設は、日本の技術力がモノをいいアメリカの形を根本的に変え、同時に日本経済も立ち直れる。



『国家による紙幣の発行』

アメリカ憲法ではアメリカ政府だけが紙幣を発行する権限が有るが、現実には一民間機関(全株主が民間有力銀行のたんなる一株式会社)である連邦準備制度理事会(FRB)なる組織が政府の委託を受けているとの名目で、勝手に自由にドル札を印刷して莫大な利益をあげている。
国民皆保険の創設にしても全国新幹線網の整備にしても途轍もないカネが必要で、今のように巨大な財政赤字に苦しんでいるアメリカ政府に賄える額ではない。

アメリカ財務省発行のドル札がアメリカを救う。
世界の国々でその国の憲法を無視して、国家が管理する中央銀行(国家が51%以上の株式を保有する)以外が紙幣を発行している国は世界ひろしと言えどアメリカ一国だけであろう。
そして歴代アメリカ大統領で膨大な戦費を賄う為に、アメリカ政府の権限でアメリカ財務省発行の紙幣(グリーン・ペーパー)を造ったのはエイブラハム・リンカーン唯一人だった。
因みにこのリンカーンの紙幣のことを通称グリーン・ペーパーと呼び、現在では『偽札』との意味も有る。
ニュヨークの銀行団に逆らって自らの紙幣を発行したリンカーンは、ケネディと同じように衆人環視の中で凶弾に倒れてしまう。
歴代大統領とは違い、自ら財閥の一員でもあったケネディ大統領はFRBの紙幣発行の旨味を熟知しており、リンカーンの様にアメリカ財務省発行の紙幣の可能性を考えていたらしい。
歴史は繰り返す。ケネディ以来半世紀ぶりに上院議員から大統領になったオバマが『真の変革』を望むなら現職大統領としてアメリカの歴史上初めて暗殺されたリンカーンや最期に暗殺されたケネディを待っていた運命(歴史的使命)と重なる部分は当然であろう。

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5 コメント

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希望があるとすれば (愚樵)
2009-01-03 16:44:24
ご説ごもっとも。

ですが、ひとつだけ、あえて希望的観測を述べれば、逝きし世の面影さん、あなたがこうした推測をし、意見を表明できるということ。リンカーンの時代はなおさら、ケネディの時代でさえ、このような観測をした市民がどれだけ存在したでしょうか? また、このような意見を発信して、どれほどの市民がその推測を妥当なものだと考えたでしょう? ここに「時代の進歩」があるように感じます。

仮にアメリカ社会を牛耳る闇の勢力のようなものがあったとして、もし彼らが何らかの方法でオバマに手を下すようなことがあれば、それが確証があるものではなくとも、市民は疑うでしょう。9.11がよい例です。未だ陰謀説が絶えません。彼らがもし、オバマに向けて引き金を引いたとしたら、それは彼ら自身に向けての引き金ともなる。

ま、これはあくまで私個人の希望的意見ですが、彼らが闇から世の中を牛耳ることができるほどに優秀な者たちならば、同じ手は何度も使えないことは承知しているでしょう。

それともやはり、歴史は繰り返すのでしょうか?
返信する
愚樵さんへ (kaetzchen)
2009-01-03 17:50:25
「歴史は繰り返さず,されど人,これを繰り返す」(キケロー)ですから,「繰り返す夢を見たい奴らが謀略を起こす」というのが真実では?

闇の勢力という「陰謀説」をキーワードに論じているのがこのブログのテーマですから,「もし闇の勢力があったら」という仮定をここで否定するのは「あまりにも若い」と言われても仕方がないのでは?

逆に考えると,アラブ人家族が旅客機に乗り込もうとしただけで,彼らをテロリスト扱いするようなアメリカ人こそ「陰謀説」に洗脳されてしまった可哀想な人々だと言わざるを得ないような気がするのですけど,如何でしょうか.
返信する
コメント有難うございます (ブログ主)
2009-01-04 15:23:13
愚樵さん。

官尊民卑の日本を基準にしてアメリカを判断するとトンデモナイ間違いを犯します。
日本のトップはアホーの麻生太郎で間違いない(だから色々アホな事が起こる)が、アメリカのトップはアホのブッシュではありません。
日本では何でもかんでも「公」が上で民(私)が下になっている。
ところが、今問題になっている新自由主義の思想は、私たちが暮らす社会を個人単位に細分化して、その『アトム化』された個人一人一人の自由を最大限尊重すると言う思想で、アメリカ社会では広く信じられて主流となっている。
徹底した個人主義の社会では、日本では到底信じられない『反連邦主義』なんて考え方まで生まれてくる。
連邦政府の大統領をトップではないと思っている人たちは大勢居る。アメリカでは全てのモノが公(パブリック)よりも私(プライベート)の方が遥かに格上なんですよ。
大学では日本は東大がトップだが、アメリカでは授業料の高い私学のハーバードがトップで授業料が安い公立校は二流の大学です。
公立とは安物とか貧民対象とかの意味で公営住宅とは貧民住宅の別名で公が造ったスラム街のことです。
公権力である警察官さえプライベートのガードマンより待遇も権威も下です。何もかもプライベートが上なんですよ。
どんな社会であれ、どんな組織であれ、下の者が自分の身分を弁えず上の者に逆らったら当然何らかの懲罰が待っているのは当たり前な事なんですよ。
ですからアメリカ人であるオバマは、その事を良く知っていると思います。国民皆保険も全国新幹線網の無理で、ましてやオバマによる財務省発行のドル紙幣なんか絶対に全く望み無しです。



kaetzchenさん。

確かに当ブログの裏標語は『みんな仲良く陰謀論者』ですが、
『闇の勢力という「陰謀説」をキーワードに論じているのがこのブログのテーマ』なんかじゃ有りません。そんな『闇の勢力』見たいな怪しい話ではなく、物事の上下関係の正しい配置を論じているだけです。
何が主で何が従であるか。?
何が大事で何が下らない些細な事柄であるか。?
ようは正しい価値基準の話ですね。ニセ科学の時に論じた主要テーマ『人々の知識や経験を狂わす事は難しいが、価値基準を狂わすことは簡単に出来る』と全く同じです。
最も重要なのは、大事なモノは何か大事でないモノは何かと言う正しい『価値基準』なのでが、これが一番の難問です。
何故なら、一番大事な人々の価値基準は永久不変のものではなく、簡単に狂るわす事が出来る不安定なもので、だからオウム事件や小泉フィーバー見たいな不思議な出来事が起きてしまう。
小泉や麻原に騙された人は其の事に対して経験不足だった点は有るかも知れませんが、決して知識、知能や常識に問題があったわけでは無かったのです。
返信する
東大がトップ? うっそー(笑) (kaetzchen)
2009-01-04 18:46:20
ハーバードもトップじゃないですよ.どっから仕入れてきた「基準」なのやら.(^^;)

実はこれ,ブログ主さんが言われている「物事の上下関係の正しい配置」なんであって,何が上か下かは,相対的なものなんです.

だけど,小泉や麻原に騙された人は知識・知能・常識に問題があったのは事実です.実際,オウムに引っ掛った「理科系の大学生・大学院生」たちには,同様に統一協会や日本会議などと同様,ある共通点があります.それは「教科書通りのことは覚えて実行できるが,オリジナルのものを造ることはできない」ということです.サリンやソマンくらい,化学を専攻すれば誰でも文献をひもといて作り方くらい調べられます.私もその構造式をある本で紹介した経験もあります.(絶版にしたから古本屋でしか見られないと思う) でも,それだけで逮捕されちゃ,困りますよね(笑)

だから,価値基準が狂っていなくても,人は殺人兵器くらいカネと知識があれば造ってしまうものなんですよ.

果たして戦前の日本人,つまり日本主義にかたまった人々は,価値基準が狂っていたのでしょうか.違いますね,彼らはそれを「常識」と思っていた.だから,未だに神社の息子が自衛官になって「価値基準が狂った思想」を部下へ押し付けたりするのです.

まぁ,お互いの立ち位置の違いをこれ以上書くと,またケンカになりますから,今晩はこのくらいで失礼.
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kaetzchenさんコメント有り難う御座います (ブログ主)
2009-01-05 10:13:55
折角自分ではアメリカを救う、ひいては世界を救う良いアイデアを思いついたと思っているんですが、愚樵さんは『ご説ごもっとも。』の一言でkaetzchenさんは言及ゼロで、其の他の読者からは完全無視される始末で。ざんねん。


ハーバードや東大がトップと思っているのは世間一般の庶民の評価(評判)であって実際問題、事実とは関係有りません。
世間の評価とはこれ等の学校の、日本の高級官僚の割合とかアメリカの巨大企業のMBA資格者の割合とかの話ですね。

怪しいカルトに嵌る人、色々なマルチに騙される人、戦前なら国粋主義に嵌る人、満蒙開拓に夢を求めた人、戦後ならブラジル移民など、少し前ならホリエモンや小泉に心酔していた人。これらの人々の特徴は知識・知能・常識に問題が有った訳ではなく其の逆で平均かそれ以上の能力が有る人々ですよ。
平均より大幅に低い人は騙されません。
だから修行して空を飛ぶ麻原なんかの話に小学生は絶対に騙されません。
だから小学生中学生より大学卒業者が、他人より自分が賢いと思っている人物が騙されるんですよ
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