哲学者か道化師 -A philosopher / A clown-

映画、小説、芸術、その他いろいろ

2006年のギャルゲー

2007-02-18 | ギャルゲー
 年末に、2006年のギャルゲーを総括したことを年始になったら書く、というような告知をしていたにも関わらずここまで伸びてしまった。

 販売本数がどうだったのかは、私は寡聞にして知らないのだが、2006年に発売されたギャルゲーの中で良い評判になったものを3つ挙げれば、戯画の『この青空に約束を―』とmixed upの『StarTrain』、PULLTOPの『遥かに仰ぎ、麗しの』くらいになるのではないかと思う(ちなみに、後者2つはまだ手をつけていないので、議論の精度が甘いことは念頭にいれてほしい)。これらはいずれも学園物であるが、このことから2006年はギャルゲーがジャンルとして比較的安定していた年だと考えられる。たとえば、『CROSS†CHANNEL』のタイムループものや、『Fate/Stay night』の大魔術大戦バトルロワイヤルもの、『車輪の国、向日葵の少女』の法学的アンチ・ユートピアもののような意欲的な舞台設定をとらなかった代わりに、「青春」や「恋愛」といったギャルゲー的テーマを中心として捉えなおそうというソフトが多かったのだ。たとえば、『この青空に』のスタッフコメントには、
「 主人公・航の『青春は最後のおとぎ話』という台詞が劇中にあるのですが、その言葉通り、『この青空に約束を―』は春から始まるありえないくらいに瑞々しい青春物語です」と書かれているし、『StarTrain』は、苦しさや辛さがあってこその恋愛、というのをテーマに掲げている。また、学園という舞台設定については、「学園」ほど人との出会いが構造化されている場所も少ないし、「恋愛」や「青春」を描きやすいことに加え、単にジャンルとして確立していることが挙げられるだろう。
 よく、ギャルゲーの悪評に「青臭い」という言葉が使われるが、実際のところギャルゲーに関わらずオタク関係のものは青臭いし、もっと言えば幼稚だと言える(「幼稚/成熟」という差異)。むしろ、オタクへの批評は幼稚ではじまって幼稚で終わるような気すらしている。たとえば、精神分析家の斎藤環はオタクを「終わらない思春期」と定義していたと思う。
 しかし、世の中を見てみれば、オタクじゃないからといって、成熟した大人がいるというのは疑わしく、私なぞは奈良美智の不機嫌な顔をした子供がタバコを吸っている絵を持ち出してきて、人がみんな「コドナ(オトナ+コドナ)」化しているのだと観察している(たとえば、母と娘の友達化)。だから、幼稚さというのは、必ずしもオタクの決定的な欠点ではなく、世の中全体の傾向が特に見やすく現れているのだと思っている。
 だからと言って、オタクが必ずしも幼稚さに安住しているというわけではない。たとえば、『CROSS†CHANNEL』の黒須太一や『Fate/stay night』の衛宮士郎のように、自分のため/みんなのため、という葛藤の幼稚さを最後には突破しているように思われる。士郎は「自分の身を省みないで人を助けようとするのは、人としておかしい」みたいなことを凛やアーチャーから言われているが、結局彼は自身の「正義の味方」としての流儀を貫き通してしまう。これだけ見ると単純なヒーローものに見えなくもないが、次作の『Fate/hollow ataraxia』ではギャルゲーのようにループする終わらない日常を描き、悪魔に反応して欲情するという聖女(しかもはいてない)・カレンが登場したりと、『Fate』シリーズ自体が、オタクやギャルゲーの幼稚さを批評した作品に見えてくる。奈須きのこ恐るべし、である。

 というわけで、あまりまとまりなく書いてしまったが、要するにオタクは幼稚さを捨てることはできないだろうが、それゆえに一方ではその幼稚さを突き抜ける作品を作りえもするのだ、ということである。

 まあ、かようなことを置いておくと、2007年は、戯画の丸戸史明+ねこにゃん三部作の『フォセット』ではじまり、あかべぇそふとつぅの『車輪の国、向日葵の少女』のファンディスク『車輪の国、悠久の少年少女』、3月には戯画のBaldr Headチームのファンディスク(というか、『この青空に』や『チアフル』のキャラも登場しているので、事実上戯画全体のファンディスクだと思うが)である『XROSS SCRAMLE』が出るので(これはかなり期待。体験版としてタイムアタックが出ているが、アクションが熱い)、ファンディスクの年になるかもしれない。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« NHK『ハゲタカ』 | トップ | 先々週と先週の『コードギア... »
最新の画像もっと見る

ギャルゲー」カテゴリの最新記事