哲学者か道化師 -A philosopher / A clown-

映画、小説、芸術、その他いろいろ

戯画『この青空に約束を―』

2006-05-24 | ギャルゲー
 戯画の『この青空に約束を―』を、遅まきながらコンプリート。実によくできたギャルゲーだった。特に大掛かりな仕掛けこそないものの、細部までこだわりがあって楽しいのだ。

 舞台は、過去に大企業の誘致をしたため一時的に反映した島で、今ではその勢いも衰えている。主人公は、その島の高校に通う学生で、同級生や教師など女の子5人と一緒に学園の寮で暮らしている。けれどもsのうちの教師を除く4人は、その学年の終わりに島を出て行ってしまうことが決まっている。物語は、この寮に新たに一人の女の子が加わるところから始まる。

 シナリオライターの丸戸史明氏の趣味か、映画などのパロディネタが満載。長距離走のゴールで『ロッ○ー』のテーマとか、砂浜で「ゴール」は不吉だという『A○R』ネタとか。特によかったのは、さえちゃんルートの『12人の怒れる教師』。元ネタにかなり近い形で再現されていて、ひとりずつ意見を変えていくところなど、けっこう熱かった。
 シナリオの質については、概して平均点が高い。じっくりと長い話を作るのではなく、むしろざっくりと細部を切り落とすことでテンポのよいシナリオを作っている。その中でも、海己のシナリオとエピローグの『約束の日』はかなり濃厚に描かれていて涙腺が緩む。なによりも楽しいのが、主人公を含めたつぐみ寮の住人たちのチームワーク。こいつら最高だよ!と思わずにはいられない。ありえないほど楽しい青春の日々。主人公が、バカでかっこよくて才能があって、でもなさけないところもあって、モテないわけがない。そして、すごいぜ主人公!という場面がいくつもある。ありえないものばかりなんだけど、だからこそものすごく楽しい。
 何か新しいものがあるというわけではない。でも、凡庸な形式の中での完成度を限界まで高めた作品。だから素直に楽しむことができる。まさに良作。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 町田康『きれぎれ』 | トップ | 村上龍『イン ザ・ミソスープ... »
最新の画像もっと見る

ギャルゲー」カテゴリの最新記事