2023年8月29日(火)
以前のブログで掲載した内容の再掲載です。ハミルトンによる多元数を用いた複素数構成法は、わかり
やすい複素数の定義になっている。
複素数を初めて習ったときの多くの高校生の疑問は、
「i²=-1・・・?2乗してマイナスになる数などあるのか?」
ということであろう。時間が経つにつれて、この疑問は心の中に封じ込めおくことになろう。しかし、こ
の疑問が本質的に解決することはないだろう。
一方、特に大学の物理学では複素数がよく使われる。というより、物理学と複素数とは切って切れない
関係がある。そうしたなかで、やはりi²=-1が自然になるような複素数の構成法が求められている。
先ほどの高校生の複素数に対する疑問は、複素数をi²=-1から出発しているところにある。それを解決
する1つの方法が、ハミルトンの多元数を用いた複素数の構成法である。
この構成法は、多元数(a,b)に和・スカラー倍・積を定義するのである。多元数(a,b)に和・スカラー倍を
定義するところは、単に多元数(a,b)の集合
Z~={(a,b)|a,b実数}
がベクトル空間になることを言っているだけである。ハミルトンの複素数の構成法のポイントは積の定義
にある。すなわち、
(a,b)(c,d)=(ac-bd,bc+ad)
にある。この演算から自然にi²=-1を導くことができる。高校生の疑問は、少しは和らぐことであろう。
そして、
(a,b) =ab+bi
が出てくる。すなわち、演算が定義された多元数の集合は、複素数の集合と同値になるわけである。
複素数の構成法は、ハミルトンの複素数構成法以外にも行列を用いた方法もある。別の機会に述べたい
と思う。