月刊誌WiLL今月号に掲載されていた加地伸行大先輩の論文は、実に見事なものだった。
私は以下のページで目から鱗が落ちた。
大先輩が大阪大学の名誉教授だということは知っていたが、あまりにも見事だったものだから、彼の経歴をもう一度検索してみた。京都大学文学部卒業とあった。私はなるほどな、と思ったのである。何故なら、言及して来たとおり、私は高校2年生の時に、既に、「君は、京大に残って、京大をその両肩で背負って立て」と、恩師から命ぜられていた人間だからである。
前文省略。題字以外の文中強調は私。
王道と覇道と
例えば、中国大陸政権は、現在、無作法にも拡大政策を取り、南シナ海に基地を広げていっている。
こういう膨張に対して、多くの論説は、中華思想と評しているが、それは誤まりである。
その点、小野寺氏(前引書著者)は正確に中華思想について述べている。
すなわち、有徳の者が、天命を受けて天子となり、善政を行うので、その天子の徳を求めて周辺(野蛮人も含めて)から人々が、それも遠くの外国人まで集まってくるのだとする。
その通りである。
天子の徳に徳化され、教化され、文化され、風化され……てゆく。
そのようにして世界中の人々が平和に暮すことができるようにしてゆくのが、王道なのである。
これに反し、武力をもって他者を従わせるのは、覇道である。
となると、中国大陸の現在の行動は、王道ではなく覇道そのものであるから、中華思想どころか、中華思想が否定する在りかたとなっている。
当然、中国第一とする〈愛国行動〉の実状は、権益の拡大とか、大国への侵略とか、言わば、三周も五周も遅れてやってきた帝国主義的行動なのである。
かつて中国大陸は、ソ連(その後身がロシア)の行動に対して社会帝国主義と罵倒したが、今や、中国大陸自体が社会帝国主義と化している。
その膨張政策は、利益第一であり、民族の心底から発せられる〈ナショナリズム〉の欠片もない。
この稿続く。