文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

同じような体験を経た習近平とフー・ツォンのその後の人生はどうしてこうも違うのか。

2021年08月01日 10時35分43秒 | 全般

以下は26日に発売された月刊誌Hanadaに掲載されている、堤堯×久保紘之の連載対談集からである。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読である。
p126ーp128
前文省略
久保
僕が今回の大会で注目した点は二つ。
一つは、習近平一人が会場の正面に掲げられた”ビッグブラザー”毛沢東とそっくり同じ色、同じ形の人民服を着ていたこと。
二つ目は、習近平演説でやたら「人民」の言葉が出てきたこと。
報道によると、その回数は八十回だったそうです。 
習近平の父親は共産党結党以来の幹部で、毛の同志だったが、文化大革命ではその毛の画策で紅衛兵に市中を引き回され、失脚。習近平も極貧の農村へ追いやられた。
そのような経歴を持つ男が一貫して毛沢東思想を熱烈に信じ、ついに中国共産党の頂点に登り詰めたあとも、毛沢東と同じ人民服を着て、毛沢東たらんとする。
これは精神分析学的にもなかなか興味深いテーマでしょうね。 
僕が若き日の習親子の体験で思い出すのは、フー・ツォンというピアニストの逸話です。
フー・ツォンの弾くショパンのノクターンは、ヘルマン・ヘッセが感嘆したように余人には表現できない哀しみがある。
それはポーランドの亡命者であるショパンと同じく、フー・ツォンが毛沢東の支配する中国からの亡命者だからです。
そしてそれは、ヒトラーに追われたヘッセとも重なる。 
フー・ツォンの父親は上海の大学教授だったが、ある日突然、紅衛兵によって、習近平の父親同様、市中引き回しをされ、結果、ほどなく命を失い、母親も死んだ。
フー・ツォンはその前にパリに留学していて難を逃れたが、同じような体験を経た習近平とフー・ツォンのその後の人生はどうしてこうも違うのか。 
アメリカではヒトラーのような独裁者が二度と世界を脅かすことのないよう、戦後すぐ拘束したナチ党員を研究材料に大掛かりなファシズム研究(バークレー研究)をやり、多くの成果を出しています。
また、ファシストに留まらず、S・フロイドの『ウッドロー・ウィルソン』やB・マズリンの『ニクソンの精神分析』、さらに一九九二年秋の米大統領選ではブッシュ、ペロー、クリントン三候補の幼児期から生活史まで徹底的に調べたデータを基にした精神分析が、選挙民に提供されたこともあります。 
習近平なんて今後、世界にとってどれほど害を及ぼす存在なのか。 
たとえば習の掲げる中華民族の偉大な復興や世界制覇、さらに禅師類の大漢民族への同化などといった妄想は明らかに毛沢東語録の”教え”を超えるものだが、これは少年期の屈辱的な体験に基づくものなのか。
なかなか興味深いテーマだと思うのですがね。
仮に、習の妄想がヒトラーのアーリア民族による世界制覇のような狂気に基づくものだとしたら、米中対決の構図のなかで、独仏EU日本のような自由な世界の国々は、中国とも仲良く等といった中途半端な外交路線選択をしている余裕などないと思いますよ。 
「人民」の言葉が八十回も繰り返されたことなど、僕から見れば習近平の「人民」に対する恐怖、中国という国家を私物化した中共の正統性への自信のなさの表明以外の何ものでもないと思えるのだけど、どうなのか。 
いまはっきり言えることは、トランプ時代に副大統領のペンスやポンペイオが、中国「人民」と中国共産党とを明確に分けて中国批判を展開した対中国外交戦略が的確に的を射ていた、ということでしょう。
演説での習の同様の原因の一つは、この分断攻撃の効果によるものと思われます。
すでに中国国内では、寝そべり族などといった若者層の格差への不満が充満しているそうですしね。
堤 
つくづくトランプは惜しいことをしたよ。
彼が大統領を続けていれば、いまごろ中国にコロナ禍の損害賠償を請求していたはずだからね。 
武漢ウイルスの発生源について中国はきわめてナーバスで、これに触れるとすぐに囗を極めて反駁する。
ここを突かれたら拙いという自覚があるからだろうね。
中国にすれば、知らぬ存ぜぬで頑張るしかない。
この稿続く。

ショパン:夜想曲 第1番 変ロ短調 作品9の1 フー・ツォン 1977

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