以下は、今日の産経新聞に、ウクライナ危機から何を学ぶか、と題して掲載された、論説副委員長榊原智の論文からである。
ロシアは大兵力をウクライナ国境付近に展開し、これ見よがしに演習を繰り返す。
国連安全保障理事会の常任理事国が軍事侵攻の脅しをかけている。
「力による現状変更」のたくらみで、世界の本質は今も弱肉強食のジャングルだ。
危機の行方は予断を許さないが、日本がこれを単に遠方の紛争と見なしてウクライナを気の毒がるだけであれば、とんだ油断というものだ。
ロシアに領土(北方領土、クリミア)を不法占拠されている点で日本とウクライナは同じ被害者の立場にある。
そのウクライナが今度は軍事侵攻の脅威に直面している。
日本はウクライナを擁護しなければならない。それをできない日本なら、北方領土問題をめぐって国際社会から支持を集めることは難しい。
ましてや、日本の首相や外相がへらへら笑ってプーチン大統領と握手し融和に傾くことは許されない。ことは北方領土にとどまらない。
日本が、近未来に起こり得る台湾危機に備え、ウクライナ危機から教訓を見いだし、覚悟を定めておく機会にしたい。
国連安保理の常任理事国である中露両国による軍事的威嚇、侵略に国連は全く頼りにならないことが改めて明瞭になった。
陸上で長い国境を接するロシア・ウクライナと、海峡をはさむ中台の緊張の形態は異なる。
そうであっても、中国は今、軍事力の行使も辞さない構えで目的を達成しようとするロシアの手練手管を学ぼうとしているはずだ。
台湾危機などに備えて中国を抑止しなければならない日本も、中国以上にウクライナ危機から学ばなければなるまい。
軍事的に劣勢なウクライナの要請に応え、米英両国は兵器の供与に踏み切った。
これは、軍事侵攻を抑えることに資する。
一方、世界第4位の武器輸出国であるドイツは、ヘルメット5干個の供与でお茶を濁した。
台湾有事になれば地理的理由からほぼ確実に日本有事になる。
台湾危機における日本は、ウクライナ危機でのドイツどころではなく、当事国そのものだ。
兵器の供与に限らないが、中国軍による台湾制圧を阻むため何か有効か支援策を検討しておいたほうがよい。
そして、ウクライナ危機から日本人が何より学ぶべきは、志願して祖国を守ろうとするウクライナ国民の士気(モラル)である。