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誤った政策を代表するのが消費税増税…物価上昇率は多くの期間でマイナスに落ち込み、若者や勤労世代は就職難と賃金下落に苦しむ

2021年07月17日 21時47分34秒 | 全般

以下は今日の産経新聞に、危ういコロナ後の脱デフレ、と題して掲載された、田村秀男の論文からである。
日本で経済評論を書いている学者や記者達の大半は財務省の受け売りの知識で書いているだけである。
田村秀男はそうではない経済評論を書いている希少な経済評論家の一人である。
彼の論文は正鵠を射ている。
ワクチン接種の普及を背景に経済活動が新型コロナウイルス・パンデミック(世界的大流行)前に戻りつつある米国では、消費者物価上昇率が5%以上に跳ね上がった。
対照的にわが国は物価が下がるデフレが加速している。
インフレ、デフレのどちらがよいか。 
拙論は一貫して、インフレよりもデフレのほうがわれわれの生活を苦しくさせると論じてきた。
デフレの怖さとは物価の下落幅以上に国民一般の所得水準が下がることで、国家の衰亡を招くと増税支持派の説得を試みた。
このことは実質賃金の下落トレンドで証明され、小学生でも分かる真実である。
しかし、デフレに鈍い空気はメディアを含む国内各界を覆っている。 
政府と日銀は物価安定目標のインフレ率2%を堅持しているし、菅義偉政権も「脱デフレ」を掲げたアペノミクスを踏襲しているとの反論を受けそうだが、ならば問う。
錚々たる政官エリートは口先だけで、デフレ温存政策を繰り返しているのではないか、と。     
 ■ 口 ■ 
誤った政策を代表するのが消費税増税である。
平成9年度、バブル崩壊後の需要低迷のさなか、橋本龍太郎政権が消費税率を3%から5%に引き上げるなど厳しい緊縮財政政策に踏み切り、慢性デフレを呼び込んだ。
物価上昇率は多くの期間でマイナスに落ち込み、若者や勤労世代は就職難と賃金下落に苦しむ。 
消費税増税がなぜデフレを招くのかは、シンプルな経済定理で説明できる。
供給に対する需要の不足である。
需要が低迷しているのに消費税率を引き上げると、一時的に物価が押し上げられ、家計は財布のヒモをきつく縛る。
需要はさらに落ち込む。
人為的に上がった物価は増税後間もなく急激にマイナスに転じる。
企業は外需が好調なときは収益を確保するが、内需が萎縮するので国内での設備投資、賃上げや正社員雇用に慎重になる。 
平成24年12月に始まったアベノミクスは日銀による異次元金融緩和と機動的と称する財政出動が柱で、円資金の大量発行が円安を招き、企業の輸出競争力を高めた。
公共投資の上積みが内需を押し上げた。
ところが、安倍晋三政権は26年4月、消費税率を一挙に8%に引き上げた。
「増税しないと、国債暴落のリスクが生じる」との黒田東彦日銀総裁の警告を受けたからだ。
大幅増税で物価は急上昇したあと、急下降し、28年後半にはマイナス領域に入った。
安倍政権は消費税率の10%への引き上げは2度見送り、物価は29年末にはプラス局面に転じた。 
令和元年10月には食料品など一部品目の税率を据え置いて再増税を実施したが、デフレ圧力の高まりのために物価上昇幅はそれまでよりも下がる始末だ。
そして翌年3月には新型コロナ禍に見舞われ、需要は大幅に萎縮し、増税後1年で物価は前年度比マイナスに落ち込み、現在に至る。     
■ 口 ■ 
脱デフレを標榜したはずの安倍政権も、結局は橋本増税の失敗を繰り返したのだろうか。
それとも、新型コロナ・パンデミックが消費税増税よりも大きなデフレ圧力であり、コロナ禍が終息すれば脱デフレは十分可能なのだろうか。 
解く鍵になるのがグラフである。
年間の消費税収(政府一般会計分)と国内総生産(GDP)、家計消費(見なし家賃を除く正味)の前年度比増減額、さらに家計が持つ現預金の前年度末比増減額の推移である。
一目瞭然、家計消費は平成26年4月の8%増税後低迷したあと回復も弱々しく、令和元年10月の10%増税後にはコロナの追い打ちで激しく落ち込んだ。
対照的に消費税収と家計現預金は、税率8%、10%への引き上げ後に中期的な増加傾向を見せている。
消費税収は令和2年度、所得税、法人税を初めて抜いた。
コロナ禍前の平成30年度比では家計消費が8・2%減なのに、消費税は18・7%の増収なのだ。
消費税増税に執着する財務省の「一将(省)功成りて万骨(万民)枯る」か。 
コロナ禍前の平成30年度と、その2年後の令和2年度を比べてみよう。
家計全体の所得に反映するGDPは20.1兆円減ったが、家計が保有する現預金は76.3兆円も増えた。
富裕層がますますフトコロを膨らませている。
一方で、一般庶民も所得や雇用で先行きを案じて、節約に努める。 
どうすべきか。
より重く沈殿したデフレ心理からすれば、コロナワクチン接種率が上昇しようとも、家計消費の反転は難しい。
膨れ上がる家計現預金を国債で吸い上げると同時に、消費税の大型減税に踏み切る。
それこそが政治の責任、役割ではないか。

 

 


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