以下は前章の続きである。
『中国の旅』の荒唐無稽
1970年代に入ると、いよいよ本多の業績の最後のカテゴリーたる中国関係ものが始まる。
日中国交回復の流れを背景に、1971年、中国共産党中央委委員会は、本多を招待し、40日間にわたって国内を取材させた。
中国共産党に仲介したのは、ぬやまひろしこと西沢隆二であった。
西沢は徳田球一の娘婿で、1950年、日本共産党が分裂して以後、中国共産党の「盲従分子」の流れに属していた人物である。
中国側は40日間、強行スケジュールで中国各地を引き回し、共産党がお膳立てした「語り部」に日本軍によって受けた「被害」を本多に語らせた。
本多はこれをひたすら書き取って記事にする。
このセッティングからして、本多はもはや完全な中共の代弁者であり、伝声管である。
あてがい扶持の証言以外に、何の証拠もなく、何一つ検証も行われない。
そもそも日本人が思いつかないような残虐行為が語られている。
「ときにはまた、逮捕した青年たちの両手両足を針金で一つにしばり高圧線の電線にコウモリのように何人もぶらさげた。電気は停電している。こうしておいて下で火をたき、火あぶりにして殺した。集めておいて工業用硫酸をふっかけたこともある。苦しさに七転八倒した死体の群れは他人の皮膚と自分の皮膚が入れかわったり、骨と肉が離れたりしていた」(『中国の旅』文庫版、231ページ)
連載を単行本にした『中国の旅』(1972年)は日教組の社会科教師のバイブルになった。
愚かなことに、彼らはそこに書かれていることを「事実」として読むのである。
日本人は、人間は嘘をつかない者だと思い込むことで一人前になる。
この民族的属性が最大限に利用される。
この稿続く。
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