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小笠原諸・南鳥島(東京都)周辺の海底泥には世界需要の数百年分に及ぶ1600万トン超のレアアースが眠る

2021年01月03日 21時32分36秒 | 全般
以下は今日の産経新聞一面の記事からである。
スウェーデンの新聞脅す中国
欧州の視線、日本へ 
中国・武漢発の新型コロナウイルスの感染拡大で民主主義諸国が苦しむ中、自国で感染を押さえ込んだと主張する中国は「権威主義体制の優位性」を誇示する。
中国共産党の独善は、欧州の普遍的価値である自由や民主主義を脅かし、その危機感が地理的な距離を超えて欧州のまなざしを民主主義の防波堤としての「インド太平洋」、そして日本に向けさせている。
「『言論の非自由』を輸出したい中国はどれだけの圧力で屈するかをこの国で試している。でも私を黙らせることはできない」 
北欧スウェーデンで中国の人権問題を専門に活動するジャーナリスト、クルド・バクシ(55)は昨年末、電話取材に語った。  
「圧力」とは、現地の中国大使館が、新疆ウイグルやチベット自治区、香港の人権弾圧などをめぐる地元ジャーナリストや知識人らの言論活動を非難する粗暴で威圧的な「報道官声明」のことだ。
2018年以降、71件を数え、うち5件はバクシを標的にした。 
バクシが狙われたのは、中国共産党に批判的な書物を扱い閉店に追い込まれた香港の「銅鑼湾書店」の親会社株主、桂民海を擁護したからだ。
中国当局が桂を拘束した18年から、バクシはスウェーデン国籍も持つ桂の自由を訴える記事を地元紙に執筆してきた。 
報道官声明は「彼(バクシ)の無知と狂気にショックを受けた。極端で不謹慎な反中行動を強く非難する」(19年9月)と中傷。
新聞など現地メディアには「彼の粗悪な行為に公表の機会を与えない方がよい」と自己検閲を促した。 
スウェーデンは1766年、世界で初めて検閲廃止や出版の自由を憲法に明記した。
国民は「報道の自由」の伝統を誇りにしているだけに、高度な自由に挑戦するような中国の言論攻撃に強く反発した。 
スウェーデンのシンクタンク「ストックホルム自由世界フオーラム」上級研究
員のパトリック・オクサネンは「中国は経済的圧力や言論弾圧によって、欧州が守ってきた民主主義の価値を攻撃し続けている」と訴えた。 
中東欧の分断図る 
スウェーデンだけではない。
中国の駐仏大使、盧沙野は昨春、在仏中国大使館のウェブサイトで「西欧の(新型コロナの)感染拡大は個人主義とエゴイズムのせいだ」とこきおろした。
欧州連合(EU)は、トランプ米政権との関係が悪化し、米国が手を引いた地球温暖化対策やイラン核合意で中国を頼りにしてきた。
香港やウイグルでの人権侵害では米国のような制裁発動も見送った。 
だが、自由や民主主義を基本価値として欧州統合を求めてきた歩みを踏みにじるような中国の動きが顕在化し、欧州諸国の堪忍袋の緒は切れかかっている。
中国は中東欧の切り崩しによる分断も図る。
2009年のギリシャ債務危機に端を発した欧州債務危機後の12年、経済停滞に苦しむ中東欧など16ヵ国と経済協力の枠組み「16+1」を創設。
習近平政権下で巨大経済圏構想「一帯一路」を通じてチャイナマネーを港湾や鉄道などの建設につぎ込んだ。
ギリシヤも加わり「17+1」となり、周到に浸透を続けている。 
中でも権威主義に傾くハンガリーとポーランドは、新型コロナ対策を口実にメディア規制を強化するなど、自由や民主主義をないがしろにする姿勢が著しくなっている。 
EU欧州議会中国部会代表のラインハルト・ビューティコフアー(独出身)は欧州に権威主義の芽を植え付けかねない中国の浸透に危機感を強めている。 「中国の攻撃的な外交のせいで、欧州の見方は1989年の天安門事件以来、最も厳しくなった」 
ビューティコファーは取材にこう話すとともに、EUとして民主主義、法の支配を重んじる、日本などアジア太平洋諸国との連携岑活発化させるべきだと強調した。
「インド太平洋の大国支配に対抗する」ために。     
欧州、日本と「経済結束」探る
膨大な埋蔵レアアース期待
「われわれはきょう、明確な道しるべを示した。インド太平洋はドイツ外交の優先事項である」 
独外相のハイコ・マースは昨年9月、68ページの外交文書「インド太平洋指針」を発表した。 
指針は、米中の戦略的競争の舞台となったインド太平洋が「世界秩序の明日を決定づける」と指摘。
「傍観者の役割に甘んじてはならぬ」とし、価値を共有する日本やインド、オーストラリアなどと協力して「地域秩序形成に関与する」と明言した。 
独が艦船派遣方針
ドイツの自動車産業の最大市場は中国だ。
貿易上の利益から人権問題でも中国との対決を避けてきた欧州の盟主が地理的な距離を超えてインド太平洋に視線を向けたのはなぜか。 
自由や法の支配といった欧州共通の価値が中国に蹂躙されることへの危機感にほかならない。 
ドイツは第一次大戦に敗れるまで東アジアや太平洋に領土や権益を有した。
約100年後、民主主義と権威主義という2つの価値が衝突するインド太平洋に回帰を始めたのである。 
11月に国防相のクランプカレンバウアーは早速、豪国防相のレイノルズとオンライン会談を行い、年内にもシーレーン(海上交通路)に艦船を派遣する計画
を示し、「『航行の自由』を守るため、存在感を示すことが強いシグナルとなる」と決意をみせた。 
豪紙には「領土問題、国際法違反、中国の覇権の野望に対峙するには、多国間の枠組みが必要だ」とも発言。
12月には、「自由で開かれたインド太平洋」構想を提唱した日本の防衛相の岸信夫とも会談し、艦船派遣の方針を再び表明した。
南太平洋のニューカレドニアなど海外領土を持つフランスは2018年6月、欧州でいち早くインド太平洋戦略を発表。
日本、インド、オーストラリアとの連携を打ち出している。 
欧州議会中国部会代表のラインハルト・ビューティコファー(独出身)は12月、電話取材に対し、「欧州連合(EU)レベルでもインド太平洋の政策を描くことになる」と展望した。 
安保協力の枠組み 
英与党・保守党の下院外交委員長、トム・トゥゲンハートは昨年7月、当時の防衛相、河野太郎に英米豪など英語圈5力国の機密情報共有の枠組み「ファイブアイス(5つの目)」への日本の参加を提案した。
その思いは変わらないが、9月に発足した菅義偉政権の意向が読めない。  「河野氏と同じく首相が参加を支持すれば素晴らしいのだが…。障害は日本政府や他のファイブアイス諸国が実現を望むかだ」トゥゲンハートは取材にこう述べた。
保守党有志による「中国研究グループ」の会長として日本の参画を持ちかけたのは対中警戒感の高まりによるが、情報共有だけがその役割と考えると、日本は英側のメッセージを見誤ることになる。 
ファイブアイズは近年、安全保障全般の議論を活発に行うようになり、機密情報の共有という本来の役割を超えた協力の枠組みになりつつある。
昨年は中国による香港での人権侵害に懸念を示す5ヵ国の共同声明を2度発表した。 
戦略物資の「脱中国」を目指す枠組みに、ファイブアイズが発展する可能性もある。
英紙ガーディアンは、世界の生産量の6割を中国が占めるレアアース(希土類)など希少鉱物を共同で生産・貯蔵する「経済同盟」を目指す動きがあると伝えた。 
ファイブアイズが注目するのは、日本の高度な掘削技術と潜在的な埋蔵量だ。小笠原諸・南鳥島(東京都)周辺の海底泥には世界需要の数百年分に及ぶ1600万トン超のレアアースが眠る。
豪首相のモリソンは 「ファイブアイズは信頼できるサプライチェーン(供給網)を作るために利用されるだろう」と期待する。 
新型コロナウイルス危機の中、世界はマスクや医療機器の不足を経験し、過度な中国依存の危険性に気づいた。
戦略物資の調達元を多様化することは、日本とファイブアイスが共に追求する目標となりうる。 
超大国・米国の外交が不明瞭な中、日本が加わり「シックスアイズ」に発展すれば、英豪など「ミドルパワー(準大国)と連携を図る上で有益となる。 
首相の菅は「志を同じくする民主主義国家を一つにまとめる大きな機会」 (英首相のジョンソン)を見逃してはならない。
(敬称略)

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