文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

ところが岸田は「非核三原則は国是だから」として核共有を拒否し、さらには「議論すれば核の拡散につながる」として議論することさえも拒否した

2022年09月07日 22時43分29秒 | 全般

以下は発売中の月刊誌Hanada10月号の巻頭コラム欄に、星になった3人の男、と題して掲載されている九段靖之助の論文からである。
日本国民のみならず世界中の人達が必読。 
子供のころ、お袋から教えられた。人は子みな、死ねば星になるのだと。そして空からこちらを見守るのだと。 
今年、三人の男が星になった。二月一日、石原慎太郎が星になった。五月二十五日、葛西敬之(JR東海名誉会長)が星になった。
そして七月八日、安倍晋三が星になった。 
石原の「お別れの会」で安倍は追悼の挨拶をした。
「まだまだお元気だと思っておりましたので、本当に残念です。常に颯爽とした姿勢で闊歩する姿には、多くの人が憧れを持ったのではないかと思います。……(話が憲法改正に触れ)慎太郎先生から、こういう状況の中にあって、何をモタモタしてるんだという声が聞こえて来そうです。慎太郎先生亡きこの世にあって、私は私で責任を果たしていかなければと思っております」 
この「お別れの会」は六月九日に行われた。
そのひと月後、安倍自らが凶弾に倒れるとは知る由もない。 
葛西と安倍の深い関係については、本誌前号で谷口智彦(内閣参与、安倍のスピーチライター)が綴っている。
それによれば、安倍は亡くなった葛西敬之を「師とし、相談相手として終生敬慕していた」。
死の床に就いた葛西は枕辺に家族以外が近づくことを肯(がえ)んじなかった。
ただ一人、安倍だけが1ヵ月の入院期間中、三度も葛西を病室に訪ねて「何事か、会話を交わした」という。 
葛西の病は間質性肺炎で、肺の神経や細胞が壊死して行く。
小欄の義兄は同じ病で亡くなったが、その苦しみたるや、酸素吸入器をつけても抑えきれない。
何度か失神した。
そんな苦しい死の床で、葛西は訪れた安倍に何を訴えたのか。
推察するに、一つはリニア新幹線の工事の遅れであろう。順調に進んでいた工事が、静岡県知事・川勝平太のクレームで中断した。 
トンネルエ事によって富士山からの水脈が断たれるというクレームだ。
その是非については小林一哉著『知事失格』(飛鳥新社)が参考になる。
小林によれば、そのクレームは全くのデタラメだという。一読を薦めたい。
もう一つ、リニアエ事の中断以上に、葛西が死の床から安倍に訴えたのは、日本の安全保障の問題、とりわけ核武装の必要性についてだったと思える。
小欄が葛西と知り合ったのは四十年以上も前だが、そのころから葛西が「日本は核武装すべきだ」と語るのを聞いた。
のちに葛西は安倍晋三のブレーンとして、持論の核武装もしくは「核シェアリング」の必要を主張した。 
いまわのきわの死の床でも、安倍にそのことを念押ししたに違いない。
まさか1ヵ月半後、安倍が葛西のあとを追うことになろうとは知る由もない。
安倍は首相の座にある間、核武装もしくは核共有(シェアリング)について表向きに話したことはない。
その安倍がロシアのウクライナ侵攻をみて、「核共有を実施しているNATO(北大西洋条約機構)にウクライナが加盟していれば、ロシアの侵攻はなかったのではないか」と問いかけ、さらにこう言った。 
「日本はアメリカの核の傘に入っているが、いざという場合の手順が議論されていない。国民の安全と自由のため、議論を詰める必要がある」 
三月三日、安倍派の会合での発言だが、仮に安倍が首相の座にあれば、アメリカと核シエアリングの交渉を視野に入れて、国内議論をリードする動きに出たはずだ。 
それを現首相・岸田文雄に期待しての発言と思える。
ところが岸田は「非核三原則は国是だから」として核共有を拒否し、さらには「議論すれば核の拡散につながる」として議論することさえも拒否した。
アメリカの核シェアリングはドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、さらには中東のトルコに及ぶ。
各国とも自国民の生命と自由を守るための措置だ。
これをしも不適切な「核の拡散」というか。 
同じアメリカと同盟を組む日本が核シェアリングの議論をすること自体、何の不都合もないはずだ。
なぜそれが「核拡散につながるから拒否する」となるのか、どう考えても理解し難い。 
かつてほぼ丸腰の日本に二発の原爆が投下された。
三発目を避けるにはどうするか。核への備えは核の保有しかない。石原、葛西、安倍の三人はそれを主張した。 
星になった三人は空からこちらを見守っている。
とりわけ誰を?
もちろん岸田文雄、その人に決まっている。

 


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