映画と自然主義 労働者は奴隷ではない.生産者でない者は、全て泥棒と思え

自身の、先入観に囚われてはならない
社会の、既成概念に囚われてはならない
周りの言うことに、惑わされてはならない

白夜 - Le notti bianche - (ルキノ・ヴィスコンティ)

2012年12月05日 06時09分49秒 | ルキノ・ヴィスコンティ
白夜 - Le notti bianche - (1957年 102分 イタリア)

監督  ルキノ・ヴィスコンティ (Luchino Visconti)
製作  フランコ・クリスタルディ (Franco Cristaldi)
原作  フョードル・ドストエフスキー (Fedor Dostoevskij)
脚本  スーゾ・チェッキ・ダミーコ (Suso Cecchi D'Amico)
    ルキノ・ヴィスコンティ (Luchino Visconti)
撮影  ジュゼッペ・ロトゥンノ (Giuseppe Rotunno)
音楽  ニーノ・ロータ (Nino Rota)

出演
マリオ..........マルチェロ・マストロヤンニ (Marcello Mastroianni)
ナタリア.........マリア・シェル (Maria Schell)
下宿人..........ジャン・マレー (Jean Marais)
娼婦...........クララ・カラマイ (Clara Calamai)
ダンサー.........ダーク・サンダース (Dick Sanders)



「あなたねえ、私、晩御飯なのだから邪魔しないでくれる.せっかく見つけたの、取られたら大変だからあっち行こうっと」あのワンちゃん迷惑そうに何処かへ行っちゃった.
「ここは私たちのねぐらなの.人間のあなたが入ってきちゃ駄目じゃない.ケコ、コケコ」鶏さんは大騒ぎ.あの女の子に鳥小屋に入ってこられて、やっぱり迷惑よね.
と言うことで、ワンちゃん、鶏さんが迷惑、迷惑が描かれているみたいだけど、大辞林で迷惑を引いてみよう.

1.他人のしたことのため、不快になったり困ったりすること.
2.どうしてよいか迷うこと.
3.困ること.

それぞれの対比を考えておきましょう.
1.に対しては、親切が当てはまりそうですね.
2.に対しては、決断すること.
3.が少し難しいけれど、困らないことを考えてみると、例えば約束を破られると困る、約束を守る、と言うことが困ることの対比になるみたい.と言うことで、これだけ書けばこの映画のほとんどを言い表せれたと思うのですが.

親切、と言うのがけっこう難しいもの.親切ごかし、あるいはありがた迷惑とか、わずかな事で反対の感情に変化してしまう.そうした微秒な心の綾が、男、女それぞれの心の変化の中に織り込んで描かれていると言えます.
ダンスホールの光景が一番分かりにくいのかもしれませんが、一度もダンスを踊ったことのない彼女、始めは引っ込み思案から迷惑がり、ありがた迷惑そうに踊ってみて、最後は楽しい体験になるのですね.
今一人、娼婦の女にも触れておきましょう.あの男にどうも気があるみたいなこの女、流し目遣いで付きまとう.口笛を吹いてタバコに火をつけろ、つまりは親切にしろ、迷惑そうに火をつける男.そして喧嘩のさなか女はこう言いました.「私は誰にも頼らずに生きてきた」、誰にも迷惑をかけずに生きてきたと.

迷惑、その対比として親切、決断、約束を守ることが描かれました.「私、好きな人が居るの.だから、私を好きになっては駄目よ」、男にとってこれは女との約束.自分の行為は親切、約束を守って彼女のことを諦めることを決断しました.これが白夜の出来事の結末であり、そこに正しい愛がある.もっと簡単に言ってしまえば、相手に迷惑にならないように接すること、それが愛.さりげなく他愛なく描かれています.

と言うのは表向きで、ヴィスコンティ、これでもか、これでもかと、くだらないことばかり寄せ集めて映画を撮った、ようにも思われます.


泣きたいのだから、一人で泣かしておいてよ.....

慰めてくれる親切なんて、迷惑よ

どうしても家まで送って行くと言って、マリオは家まで付いていった.
親切の押し売り=迷惑


素敵な女の子が見つかって、浮かれて帰ってきたらしい.

夜中に歌なんか歌って.....


全くもう、この忙しい時に電話してきて.....

迷惑だから、居るのに居ないと言った


鶏小屋に逃げ込んで、隠れたつもりらしいけど、鶏さんは迷惑

迷惑だった、のだけど.....

迷惑よ、迷惑よと幾度もマリオの親切を拒んだのだけど、最後は受け入れてしまった.
親切にする行為は優しく接する行為で、確かに愛情であり、ナタリアにも愛情として受け入れられたのだった.けれども、正しい愛は一つあれば充分で、それ以上あっても迷惑なだけだった.

親切に手紙を書いてあげたのだけど、でも、彼女は自分で手紙を書いて用意していた.

手紙を渡す約束をしたけど、なぜ自分が手紙を届けなければならないのか.....
マリオは手紙を破って捨ててしまった.


誰にも頼らずに生きている=誰にも迷惑をかけず生きている






わざわざ家のない人々の目の前で、幸せを語ることもないだろう.

貧乏のどん底の人々にとって迷惑な話.






白夜



幸せの絶頂は一瞬だった.



好きな人を待ち続けていると言ったのに、それでも無理矢理親切にして、
マリオはナタリアを迷わせることになった.彼の親切は、所詮は迷惑に過ぎなかった.



愛とは親切にする行為にあるのだろうか.....
否、迷惑にならないように気遣う、さりげない心の中にあるのでは.....



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