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『白昼堂々』-結城昌治-

2012-04-15 22:38:22 | 映画DVD&本


1966年に書かれた本。作者の結城昌治は直木賞作家ですが1996年に急逝している。
『白昼堂々』はデパートを専門に万引きを働く窃盗集団と、その捜査にあたる刑事とのお話。デパートの営業時間に万引きするわけだから正に、白昼堂々と泥棒をしているのです。

その窃盗集団は九州の炭鉱従業員住宅に住んでいて、元々は炭鉱で働いていた。石炭産業はすっかり衰退し、生活に困窮した彼らは優秀なスリであるリーダーにその技術を学んで、スリの出稼ぎをして生活していた。

スリ稼業よりも大手デパートでの万引きの方が安全性が高く、個人の財布を取ってしまう事より良心の痛みが少ないし・・・などで、グループを作るのです。

全国のデパートで被害が頻発し、刑事が動き出す。
そして現行犯で捕まえても、のらりくらりと言い逃れ、単独の出来心と言ってけっして仲間の事は口を割らない。


最後はちょっとコメディっぽいのですが、これも伊坂幸太郎の好きな本と言う事で、らしい結末です^^;



今、裁判員裁判が制度化されたり、また冤罪が数件出てきて取調べの可視化が議論されているなど、警察・検察・裁判などの制度が見直されつつある昨今です。
取り調べの可視化は、硬軟取り混ぜて対応する刑事にとってやりにくくなるのではないか?と思ったのですが、この本に出てくる状況を見ると、それだけではないように思いました。
嘘を言っている人の心理状態が言葉のニュアンスや表情などで判断しやすくなり、誰が嘘を言っているのか分かり安いのではないかと思いました。


ねずみ小僧ではないけれど社会的弱者の犯罪という事と、血を見ない事件なので面白い本でした。

45年以上前の小説ですから、携帯などの通信手段は無くデパートが舞台と言う事で、古き良き時代の背景が懐かしいですね。
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