西郷隆盛『南洲翁遺訓』
第1回 揺らぐ時代
西郷が生きた時代、1830-70年代は、世界で巨大な情報通信革命とエネルギー革命が急速に展開している時代だった。
一大鉄道網の敷設、大陸間をつなぐ海底電信ケーブルの設置等々、現在でいえばインターネット革命に匹敵するような巨大な地殻変動。
その余波が超大国ロシア帝国をも揺さぶる時代。
「南洲翁遺訓」を読むと、西郷が世界史的視野からそうした変動を鋭く洞察し、国家がどうあるべきかについてのヴィジョンを模索していたことがわかる。
こうした激動の時代だからこそ、国家の屋台骨を打ちたて、世界に伍する国柄を明確にせねばならないと考えた西郷は、巨視的な立場から、藩閥政治の利害争いや安易な西洋文明の模倣に対して、鋭い批判を展開する。
第一回は、西郷の人となりなども交えながら、彼の思想の先見性に迫っていく。
「愛しき日々」堀内孝雄
次のページ 西郷隆盛『南洲翁遺訓』第2回 敬天愛人 2018.01. 「2」