獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

石橋湛山の生涯(その62)

2024-09-08 01:29:27 | 石橋湛山

石橋湛山の政治思想に、私は賛同します。
湛山は日蓮宗の僧籍を持っていましたが、同じ日蓮仏法の信奉者として、そのリベラルな平和主義の背景に日蓮の教えが通底していたと思うと嬉しく思います。
公明党の議員も、おそらく政治思想的には共通点が多いと思うので、いっそのこと湛山議連に合流し、あらたな政治グループを作ったらいいのにと思ったりします。

湛山の人物に迫ってみたいと思います。

そこで、湛山の心の内面にまでつっこんだと思われるこの本を。

江宮隆之『政治的良心に従います__石橋湛山の生涯』(河出書房新社、1999.07)

□序 章
□第1章 オションボリ
□第2章 「ビー・ジェントルマン」
□第3章 プラグマティズム
□第4章 東洋経済新報
□第5章 小日本主義
□第6章 父と子
■第7章 政界
□第8章 悲劇の宰相
□終 章
□あとがき


第7章 政界

(つづきです)

昭和26年(1951)6月20日、サンフランシスコ講和会議の直前に湛山の追放が解除になった。続いて、鳩山一郎、三木武吉、河野一郎らも追放が解除されて、自由党に復帰した。
吉田は鳩山の復帰後も当初の約束を守らずに、自由党総裁の椅子に座り続けた。
「思っていたとおりに吉田は、鳩山さんが復帰しても総理総裁の椅子を譲るどころか、下りようともしない。そういう男なんだ」
「いや、権力の座というものは、一度座ると下りにくいものなんじゃあないかな」
「馬鹿を言うな。約束は約束だ。吉田には下りてもらう」
「下りなかったら、我々で新党を結成するしかあるまい」
湛山も追放の際の吉田との感情的なしこりは解消されないままであって、自然に湛山、鳩山、三木、河野らは「反吉田」を旗印に同じ行動を取るようになった。
この流れがやがて、石橋派、鳩山派になって「反吉田」の先鋒になっていく。
新党結成も視野に入れた「反吉田」派だったが、突然鳩山が脳溢血で倒れてしまった。神輿の主の病気に、誰もが暗澹たる気持ちになった。
「石橋さん、こうなったらもう、新党ではなくて自由党に復帰してもらうしかないね。みんなで復帰してください。本当は鳩山さんの追放解除と同時に鳩山さんを総理総裁に、と大運動を始めるつもりだったんだが……。仕方があるまい。復帰してもらうよりほかはない」
大野伴睦は大粒の涙を流しながら言った。
翌年の4月28日、対日平和条約が発効して、日本はやっと独立国家になった。
石田博英は当時、自由党の議員運営委員長だった。自由党でも「中間派」と呼ばれる議員たちを次々に湛山に会わせた。やがて湛山を中心にした懇親会も生まれてくる。
政界には、サンフランシスコ平和会議後の吉田の去就を巡って観測が流されていた。自由党内各派の思惑もあれこれ絡んで、少しずつ総選挙に向けて動きだしていた。
「吉田は辞めないよ。最後まで政権は放さない」
「いや、政権に未練を残すような人じゃあない」
そんな「吉田論」が党内を流れていくうちに、吉田は総理総裁を任された時に鳩山と交わした約束について触れた。
「鳩山さんが解除になったら総裁の椅子は返すと言った。しかし、自由党というものと政権とは別物だ。政権は公のものだ。国民を背負っている。それを返す、返さないなどと言うのはおかしい。まだまだ、自分が国民のためにやらなければならないことはたくさんある。それに、こう言っては何だが、鳩山さんは今は病気だ。政権を担当できないだろうし、国民もそんな半病人に政権を任せるのは不安だろう。私は権勢欲で総理の椅子にしがみついているわけではないが、そう思うなら思ってくれて結構だ。私は自分のなさねばならないことをやり遂げるだけだ」
「吉田の野郎、とんでもないことを!」
三木も河野も怒った。だが、その裏をかくように吉田は暮れも押し詰まった12月25日に内閣改造を断行した。
「党の三役にも首脳にも何ら相談なしの決定らしいね。まさにワンマンの極みだな」
湛山は不快げに、石田らに呟いた。閣僚の中には、鳩山派は一人も入っていない。
「追放解除組は、誰一人として議席を持っていないのだから、仕方ないだろう」
こうした吉田への反撃は、党内に残っていた鳩山派の糾合から始められた。石田ら反主流派が中心になって「反吉田」派を結集した。
「俺たちは反乱軍と呼ばれているそうだが、それも結構。反乱軍でやりましょう」
「反乱軍」は、任期切れになる幹事長人事反対で火蓋を切った。
「執行部が出してきた福永健司幹事長には反対する」
「この人事を何が何でも潰そう。それで吉田の権威が失墜する」
自由党の議員総会は大荒れに荒れた。福永案は潰れ、折衷案が出されて結局お互いが妥協したのが、林譲治幹事長であった。
「あいつらめ。許さんぞ」
吉田は荒れた。これまで何でもワンマンでやってきて、そのとおりに物事が運んでいたのに、初めての躓きだった。同時に吉田は「反乱軍」の力に恐怖を抱いた。
「これからもあの調子でやられたら、法案も予算も潰される……」
吉田は、松野鶴平から囁かれた計画を実行する気になっていた。
「解除組はまだ議席を持っていない。それに選挙の準備も出来てはいないはず。追放されている間に選挙地盤も弛んでいるだろうから、今解散をやったら、奴らの大半は落選して勢力も半減するに違いない」

(つづく)


解説

ワンマン、吉田茂首相をめぐる政権闘争……

すさまじいですね。

 

獅子風蓮



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