松たか子が松本幸四郎の娘だと最近知ったわたくしですが、この調子だと、他にもいろいろと有名な人は有名な人の子どもなのかもしれないと思い、調べてみたところ、重要な人物を一人二人発見したのですが、忘れました。
この「四月物語」は、大学院の頃上映されていたのは知っていたのですが、松たか子は、何とか言うトレンディドラマで、木村拓哉とラブホテルでカラオケしている映像が何か猛烈にいやで(特に、木村拓哉の長髪があまりにミットもなくて、ブラウン管の前ではさみを構えてしまいました。
噂によると、第一話の最後に松たか子が勝手にそのロン毛を切り落とすそうです。わたくしはそこまで耐えきれなかった模様。)、松たか子がアナ雪で大ヒットをとばしている時も、ラブホテルで長髪のイメージから抜けきれないまま今にいたっていたのですが、一部授業で問題にせねばならぬため「四月物語」を観てみました。
監督は、岩井俊二。わたくしの世代は、「Love Letter」や「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」で、
岩井俊二みときゃ女子の心がわかるとか言っているバカが大量にわいたセンスがよくなった気になった経験を持つ世代(違うと思う)で、岩井俊二は文学よりすごいかなどの議論を部室でした者も多いに違いない。岩井俊二、妙な生々しさで青少年の心を拐かす、かつあげ系の監督と言って良かろう。
「四月物語」は、北海道の風景を武蔵野にも当てはめたら文学的になったという柄谷理論をそのままやったような作品であった。実際に、主人公は訳あって独歩の「武蔵野」を高校時代に愛読(でも、読みながら電車で爆睡。難しすぎたのだ)
北海道のクラシック少女が、バンドをやっていた先輩を追いかけて東京の同じ大学に入ってしまい、先輩のバイト先(武蔵野堂)でついに再会する(ここまでだいたい1時間)。と、雨が降り出し、傘を貸してやるよ、いや近所なのでいいです、貸してやるよ、失礼します、と逃げ出したら、豪雨になってしまい、美術館の前で雨宿りしていると、美術関係のおじさんが傘を貸してくれたので、「傘買ってきます」という見え見えの嘘をついて先輩のもとにトンボ帰り。そして、先輩から借りた壊れた赤い傘から弾けおちる雨粒のなかでなんだか満足そうでかわいい主人公→終わり。
なんだこれ、松たか子のプロモーションビデオではないか。(と思ったら、本当にもともと彼女のミュージックビデオをつくるつもりだったらしいのだ)感動したので、正気を保つため批判を加えておこう。
・高校時代、オーケストラの少女がバンドのギタリストに恋をする(……ありがちな話であるが、実際は、クラシックの教育を受けたものは、バンドのギター男などゴキブリだと思っている可能性の方が高い)
・男がバンドをやる理由→モテるため(真実)なのである。こんなこともしらんのか松たか子は。
・その
ゴキブリギタリスト、大学に入ってギターやめてるみたいだよ。はやく目を覚ませ松たか子。オーケストラに入って、クラシック好きと恋愛せよ。
・90年代に大学に入ったわたくしの経験をふり返ってみるに――、松たか子が入居したようなワンルームも多かったが、わたくしは共同下宿賄い付きに入ったぞ。こっちの方がいいぞ、寂しくないから、お隣の人にいきなりカレーをつくってやるという恐ろしいことをしなくてもいい。その代わり、生きよ堕ちた、みたいな先輩と友達になったりして、人間仲良くすればいいというものではないという自明の理を学び自立に向かって歩み出すのである。
・松たか子の入学した武蔵野大学ってなかなかおしゃれじゃないか。「米帝粉砕」の立て看がない。90年代の
チャラ男ども死にさらせ。我が青春の蹉跌に呪いあれ。
・松たか子は、関東に引っ越してきたのに、なぜ傘をいつも持ち歩いてないの?バカじゃないの?
……わたくしのシニシズムに詛いあれ。しかし、このドラマにはあまりにも葛藤以前的であって、恋ではなく信頼とか真実とかは、葛藤の末に現れるものであろう。我々はそのことを忘れがちである。