四五日は現にもあらず寝もせぬ枕に。物はいはざる姿を幾度かをそろしく。心にこたへ身も捨んとおもふうちに。又日数をふりて其人の事はさらにわすれける。是を思ふに女程あさましく心の変るものはなし。
女は一三歳であった。男から来た恋文のひとつは神々の名の部分だけ吉田の御社へ飛び去り、身分が低く激しい「命も取る程」の恋文を送ってきた男との関係は破滅した。男は命を取られた。女の枕元に男が立つのだが、女はなんとなくそれも忘れた。最近のおなごは薄情だ、その原因は、最近は子どもの時代が短いからだと誇張されている。四十年まえぐらいまでは女の子も十八ぐらいまでは竹馬に乗って遊んだものだから、と西鶴は言う。
西鶴のいいかたが誇張だとしても、子どもの時代を長く持つことが、恋への耽溺を妨げるのはそうかもしれない。さっき、湯山昭の「お菓子の世界」の間奏曲2「どうして太るのかしら」を弾いてみたが、まったく――今更ながら、大人になる気がしない。