★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

つまもこもれり我もこもれり

2018-10-30 23:00:33 | 文学


武蔵野はけふはな焼きそ若草のつまもこもれり我もこもれり


十二段の昔男は、武蔵野で人の娘を盗んで逃げていた。娘を草の中に置いて逃げたら、追っ手が草むらに盗人がいると思って火をつけようとした。そのときに、娘が詠んだのが上の歌。「つまもこもれり我もこもれり」というのが、とても愉快な歌である。昔男とともに捕まりたかったのか、歌としてはとっさに巧みにつくってしまったのか……

中上健次なら、武蔵野の野っ原で焼け死ぬ恋人達を描いてくれそうである。太宰治なら……草じゃなく……。安部公房なら、草むらのなかで穴を掘ってもぐらに変身。

そういえば、夫婦で引きこもりになってしまう例とかはあるのであろうか。「つまもこもれり我もこもれり」……えらいこっちゃ


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