★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

政治と文学、と小林秀雄

2015-08-08 23:11:15 | 文学


「天声人語」に、小林秀雄のことが触れられていた。小林の「反政治」的な側面についてである。それで、私もつられて「私の人生観」とか「政治と文学」を読み直してみた。小林のすごいところは、小林の言葉に反発して何年も考えた結果――、つまり小林の言葉も忘れてしまった頃に、彼の文章を読み直してみると、なんとそこに苦労してたどり着いたはずの結論がちゃんとかいてあるという、そんな経験をさせることであろう。

それもそのはずである。かれは「常識」(コモンセンス)にしたがって書いているのだから。これに比べると、福田恆存など、永遠の不良少年という感じであり、常識外れである。

三島由紀夫も坂口安吾も花田清輝も……、その文学が常に政治的な行動にみえてしまった一連の人びとの存在は、小林への反発と依存なしには考えられない。

小林秀雄をよむと、安倍晋三とその愉快な仲間たちも、プロレタリア文学教程並みの明晰さで反対を叫ぶインテリたちも、同じ病にかかっていると思えてくる。確かにそりゃそうなんだよ。そうなんだけどもね……