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NPO九州森林ネットワーク

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新聞記事、本の紹介

2007年06月14日 19時19分31秒 | <山の現状・林業家>
2つ程、情報を。

1.宮崎日々新聞において「山は宝~本県林業の再生を探る~」と題して、5月28日から12回シリーズで1面で特集され、6月12日に完結しました。スギ生産量日本1の宮崎で、川下の木材需要増という新たな動き、それに対する川上の期待と懸念、対応した取り組みなどが掲載されています。

2.本の紹介:森林施業研究会編『主張する森林施業論』日本林業調査会
川下の木材需要が活性化し森林の木材生産機能への期待が高まると自動的に森林の環境保全もできる、といういわゆる「予定調和論」ではなく、科学的な根拠を重視した生産と環境の調和、流域全体の森林配置のあり方が議論されています。

10月に開催予定の第8回フォーラム(「川、そして海へと繋がる森林づくり」をテーマに熊本県球磨村で開催予定)との関連で、また現在の九州の森林・林業を考える上でもとても参考になると思い、紹介しました。

(佐藤/福岡)

材料から原料へ

2006年05月30日 10時41分37秒 | <山の現状・林業家>
1ヶ月前になりますが、GW前に佐賀県伊万里に研修会、工場見学に行ってきました。矢房さんの記事に関連して2点印象的だったことを書きます。

一つは、先に熊本であったフォーラムでは、曲がり材(B材)を買い支えることで、1本あるいは1山全体の価値を上げるために大規模流通は必要、という議論でしたが、今回は、A材とB材を分けて市場出荷するよりも、山土場では採材を長く8m以上にして、A材、B材を選別せずに伊万里工場に搬入して全てをB材価格で売った方がコストダウンに繋がって、山林所有者の手取りは上がるという議論がなされました。つまり、矢房さんの指摘のように、大半の素材が工場着で8~9千円での流通を前提に、その中で量をまとめれば、山元に利益還元できる率が高まるという論理でした。更に、量的拡大ができて集成材生産コストが下がれば将来的には、素材価格も高く買いたい、というラミナー工場から希望的なというか山元にそれまでは我慢してくれといった慰撫の弁もありましたが・・・何の保障もないし、過剰生産によって製品価格が下落すれば更に山元にしわ寄せされる可能性さえあります。

2つめに、政策的に無垢の乾燥材から集成材生産にシフトしたかどうかについてです。「新生産システム」政策で選定された11地域の取組の中身をみると、既存製材工場の大型化というのが多く、集成材化というのは見られません。しかし、「平成17年度 森林・林業白書」では、木材軸組工法の柱材のうち集成材が平成14年に45%を占めるに至っていること、スギ材価格下落を背景にしてスギ合板の生産が急増していることが指摘されています。特に、スギ価格が安い九州ですから、民間レベルでも政策レベルでも集成材や合板化への流れが今後大きくなることが予想されます。現に、中国木材の集成材生産原料のかなりの部分は国有林から供給されていて、支援されているわけですし・・。

集成材化や合板化とは、木材が材料から原料へと変わることを意味します。そうなると、林業家の「いい材を作って家主に喜んで欲しい」という一手間や林業労働者の採材技術(3mの柱をとるか、4mの桁を前提にするかなど)、製材工場の木を見る力も不要になります(もちろん一部では無垢材需要はなくならないにしても)。むしろ、コスト高の要因となって、全てが量で勝負の世界になってしまいます。これもグローバリゼーションへの対応なのでしょうが、これでいいのか??

現在の流通再編下で森林環境保全をどのように担保しうるのか(工場着9千円では皆伐後どう考えても再造林できません、国有林では列状間伐を前提にしているが・・・)、山村経済や林業家、更には既存の原木市場や製材工場にも大きな影響が及ぶと考えられます。九州はその最前線です。

(佐藤/福岡)




皆伐地の広がりについての新聞記事紹介

2005年12月25日 20時57分49秒 | <山の現状・林業家>
1週間前の新聞記事の情報ですが、熊日新聞の12月17日付けで、熊本県における皆伐地の植栽放棄地面積が2年間で2倍以上に拡大しているとの県の調査結果について掲載されていました。

くまにちコムで読めます。

また、18日にはFSCの森林認証を取得した諸塚村の取り組みも掲載されています。とても詳しくルポされていますので、是非、ご一読下さい。

(佐藤/福岡)

球磨村に行ってきました

2005年08月20日 20時01分00秒 | <山の現状・林業家>
皆伐未植栽地が多い、球磨村に行ってきました。
改めて、伐採方法の酷さを実感しました。地元集落や森林組合からも危険視する声が上がっています。

森林の所有形成や集落構造との関係、素材業者や木材市場などを調べるため、2年間通うつもりです。他の写真は私のブログにも掲載しています。

8月25日は10月に開催する第4回九州森林フォーラム打ち合わせのための運営理事会を開催します。運営理事の皆様、ご参集を宜しくお願いします。(佐藤/福岡)

若者が誇りをもって働ける環境産業へ

2005年07月23日 21時40分31秒 | <山の現状・林業家>
吉弘さん、コメントではなくブログ記事に掲載させてもらいました。

素材生産業者も、原木市場も製材業者も林業家ついでに私のような研究者も食べるために働いています。経済性を追求するのは大切ですが、みんな森林資源があって成り立つわけですから、それぞれが社会性とルールを守って、循環型社会の形成に寄与するような森林・林業構造に変える必要があります(その点矢房さんが詳しく書かれているので、以下、別の視点から書きます)。

素材生産業者は日本の木材生産の過半を生産しています。森林は伐採されないと循環しないので、森林環境を守るためにはとても大切な業態です。伐採の技術も高いものがあります。伐採規制をといっても木を伐ることが悪ではなく、環境保全型の林業の担い手となること、すなわち、環境産業になることが必要です。

そのためには、言葉が相容れないではなく、共通に問題を語り合い、消費者に説明できる言語を持ってもらわないと困ります。そうでないと、先のサミットで先進国が共同で輸入制限をすると決めた(=市場の規制)、海外の違法伐採木材業者といっしょになります。実際、私が調査で知る限りででも、数社の民間の素材業者は森林環境に配慮した施業方法を模索されています。

しかも、近年林野行政は森林組合だけではなく民間素材生産業者を支援してきました。特に、緑の雇用対策事業では、緊急雇用対策と連動させて都会の若者が民間の素材業者にも就業しています。一人前の林業労働者になるまでの資金が民間にもかなり補助され(1人当たり300万円)、そして県が集団研修を実施し、林業が地球温暖化対策にいかに寄与するのか等を学んでいます

緑の研修生の中には、環境問題に興味を持ち、自分の仕事が環境を守ることに繋がるとやり甲斐を感じて仕事をしようと思ったのに、実際民間事業体に入ったら、儲からないからと経済論理だけで山荒らしの伐採を行い、ひいては新聞で・・・。

今回の大々的な報道で、非常に辛い思いをしているのではないか・・私は何人か研修生と会って、話をしたこともあるので、とても心配しています(緑の研修生の1人からメールを頂きました)。彼らを失望させず、誇りをもって働ける環境産業として脱皮すること、それを応援したいと思います(第5回九州森林フォーラムで取り上げる予定)。
(佐藤/福岡)

規制の副作用

2005年07月23日 13時26分33秒 | <山の現状・林業家>
もっと林業の根幹に流れるモノを考えていただきたいと思います。 あらゆる規制は現状を停止させる即効性は有りますが、長期に亘っての創造性は削がれる危険性もあることを戦後の農業政策が証明しています。

確かに、ヤマアラシと言われる人達の作業の結果がこの様な事態を招きました。 しかし彼らは事業をやっている訳ですから経済性を追求します、どんなに批判しても彼らは別な次元で山を考えている訳ですから言語が相容れない話です。 台風被害後の一部放棄林を救ったのは彼らですし、高性能林業機械のお題目に乗らされたのも彼らの一部です。もし出来れば、即効性のある事は彼らに別の仕事を作る場を与えることかもしれません。機械の有償借り上げもいいでしょうが.....。

問題の本質は木を切らなければお金が循環しない山の仕組みを税制も含めて考え直すタイミングと努力を怠ってきたからだと思います。  規制と保護に囲まれた農業は現在では外部からの刺激が必要とされる産業になりました。  
戦後、規制や保護に薄く早くから自由化の嵐の中で成長してきた民間林業や木材業の成長を削いだ要因に3セク事業が多いことをご存知でしょうか? 宮崎の3セク工場の殆どが単体決算では膨大な赤字を出し続けています。 これは福岡でも共通、一部を除きほぼ全国レベルでしょう.....。 生産性を追及する施設を作れば原価の低下も求めることになることをどうして考えなかったのか不思議です。  木材の流通の簡素化を旗印に公費を使い結果として過剰流通を招き木の値段を下げ山の価値を下げた政策にあるわけです。

いろんな問題が潜みますが、ヤマアラシが生まれた背景には山主の林業放棄や間違った産業政策があります。 公金を投ずるべきは林業放棄林を囲い込み団地化して長期の政策を反映する林地に改造していく地道なお金の使い方が必要ではないでしょうか? そこには健全な森林政策理念の基に行なわれる新しい産業が生まれる可能性があると信じます。

これだけ下がった山の価値を受け止める為にどれだけの資金が必要でしょうか? 砂防工事の代金でどれだけの山が救えるか??3セク工場に注ぎ込む税金でどれだけの山が生き永らえるか....ぜひ計算してみてください驚くほどの面積になると思います。

ちなみに、日田地区はここ1週間くらいで原木最低価格時より30%ほど上昇しています。市場はまだ需給の健全な相場を形成しています。
(吉弘/福岡)


大面積皆伐、未植栽地の記事について

2005年07月22日 22時24分53秒 | <山の現状・林業家>
 先の人吉・球磨地方の大面積皆伐の報道に続いて、今日からは熊日の記事で識者のインタビューが掲載されています。僭越ながら私にも機会が与えられるということで、本ブログで議論したことなどについて話をしました。

 メールで知らない方からもコメントを数通頂きました。

 市場流通が山荒らしの木材も込みで扱っている以上、木材のトレーサビリティを求める活動を進める必要があると思いました。
 (佐藤/福岡)

伐採についての環境基準を。

2005年07月10日 14時36分49秒 | <山の現状・林業家>
私も伐採についての環境遵守基準とその規制強化が早急に必要だと思います。そのためには森林法を強化すべきです。日本では伐採制限は保安林(水源涵養保安林で20ha・・これも甘い)のみで、保安林以外は「伐採届け出」をすることになっていますが、ほとんどの県でこれがきちんと運用されていない。

戦後、日本の林政はいかにきちんと植林させるかが課題だったので、造林補助金を出したところについては、県職員が造林検査をするしくみがあり、造林者も基準遵守をしないといけないという了解があります。しかし、伐採時期になっているのに、伐採のルール化は行われず、野放図になっています。先の「伐採届け出制度」さえも守られていません。一部では保安林も許可を受けずに伐採されているようです。

これに対して、ヨーロッパの国では、例えばEUに統合されて伐採量が増加しているチェコでは保安林ではなくても、最大皆伐面積の制限が3haと規制されています(日本よりも平坦地でかつ雨量が少ないのに3haですよ!)。これ以上だと不法伐採となります。リトアニア(上限皆伐面積8ha)でも同様で、予算額など日本よりもはるかに少ないにも係わらず、伐採に関する統計数値(不法伐採面積と素材生産量など)もしっかりしていました。日本では伐採方法別(皆伐面積ごとの伐採量など)の統計などありません。他の多くの国でも、伐採に対する基準は厳しく規制されています。

日本ではあらゆる分野で規制緩和が叫ばれていますが、まず今山で何が起こっているのかを一般市民に知らせて、環境に関する規制は必要なことを訴えるべきです。九州各県でも「森林環境税」が導入されつつあるのに、森林環境を守ることが担保されていない。規制を強化した上で、環境基準を守っている経営には「環境直接支払い」などの政策的な助成を行うことが必要です。現森林法の下で、県レベル、市町村レベルの条例等でどの程度対応できるのか、不勉強でわかりませんが、いずれにせよ山村住民、下流域住民の声があって始めて行政は動くものだと思います。

林野庁では、海外に対しては違法伐採キャンペーンをやっていますが、国内の山荒らし(一部では甘い現森林法においても明らかに違法がある)についても、きちんと対処しないと、京都議定書に森林が寄与するどころか、逆になりかねません。
(佐藤/福岡)