NPO九州森林ネットワーク

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誰が主役か~林業の生命線

2005年07月27日 18時08分31秒 | <日々徒然・イベント>
コメントだと小さくて書きにくいので...
 吉弘さんと実質的には同じことを書くことになるかもしれませんが、論点をヤマアラシの是非に絞ります。
 繰り返しになりますが、ポイントは、企業は利益追求のために環境を唱え始めたのではなく、生き残るためにやむを得ず環境に適応しようとしていると私はとらえています。生産をユーザーが規定しているのです。それが現実の経済です。企業が経済を支配しているという価値観に惑わされ、全共闘世代は崩壊しました。誤解をおそれずに極論すると、経済を環境が上回ったのではなく、人間の危機意識(本能)がユーザーを喚起し、どっぷり浸かった経済社会と折り合いをつける方法として、国や企業に環境対応を押しつけている面が大きいのです。(まだユーザー自身が自ら生活を見直し環境に適応しようと言うところまでは来ていないのが現実)
 環境を唱えることは商売に繫がるというより、環境を考えないと経済が直視できない。環境を商売と考えるまえに、もっと厳しい選択を迫られています。それが出来ない企業(林業が企業といえるかはともかく)は消えていっています。

 これも繰り返しですが、ヤマアラシは象徴で、林業の生命線は「木材業界の自己批判に基づく木材業界の構造改革(流通改革)、意識改革、そして情報開示」です。業界が変わらないとユーザーは付いてこない。仕組みを支えるインフラが無いなら作りましょう。キャンペーンで解決できるとは思っていませんが、動かないと始まりません。お題目も、うまく利用していこうではないですか。
 
 私も「近くから観る山」の価値観で山が維持できるなら、静かにスローライフで暮らしたいところです。しかし明日の子供たちのために何を残すかと問われて応えられるか?今まで出来なかった現実を見つめ直し、「遠くから観る山」の価値観といかにすりあわせるかという仕事をしようと思っています。

 本論からずれますが、市場論を少し加えます。原木市場は、投機相場として発達した側面もあるので、乱高下そのものの発生は否定しませんが、私が憂えているのは、市場の機能の一つである金融機能だけ肥大して、流通機能と価格形成機能を失っていることです。鉄鋼相場は中国特需がらみで実需が強いですが、原油相場は明らかに投機筋に支配されています。原木市場はもっと実需に基づいたものに構造改革すべきです。相場回復しても肝心の商品がなければ、流通機能を失うと同時に、ユーザーの信頼も失います。
 直販という究極の答は、市場だけに頼る林業家の体質改善を提起した10年前から実践していますし、現在では、ひとつひとつは小さいけれど、実需に基づいた市場抜きの流通が全国で数多く始まっています。野菜の直販は、JAが大量生産大量消費の系統出荷を自己否定する形で地産地消を唱え、産地直売所の流通に肩入れして大きくのびています。(JAが儲かっているかは別問題で、ユーザーの志向の変化に対応せざるを得なかった)
木材業界でも10年前は「市場とばし」と批判されていた動きが決して珍しくなくなっていますし、市場より良いものを手に入れる方法として認識されつつあります。実需に基づかない原木市場の重要性は徐々に縮小しています。
 ただ、市場は必要です。どうあるべきかの話は別の場に譲るとして、まず原因分析として以前理事長の話題にあった、原木市場の調査をしてみたいですね。(諸塚村/矢房)

若者が誇りをもって働ける環境産業へ

2005年07月23日 21時40分31秒 | <山の現状・林業家>
吉弘さん、コメントではなくブログ記事に掲載させてもらいました。

素材生産業者も、原木市場も製材業者も林業家ついでに私のような研究者も食べるために働いています。経済性を追求するのは大切ですが、みんな森林資源があって成り立つわけですから、それぞれが社会性とルールを守って、循環型社会の形成に寄与するような森林・林業構造に変える必要があります(その点矢房さんが詳しく書かれているので、以下、別の視点から書きます)。

素材生産業者は日本の木材生産の過半を生産しています。森林は伐採されないと循環しないので、森林環境を守るためにはとても大切な業態です。伐採の技術も高いものがあります。伐採規制をといっても木を伐ることが悪ではなく、環境保全型の林業の担い手となること、すなわち、環境産業になることが必要です。

そのためには、言葉が相容れないではなく、共通に問題を語り合い、消費者に説明できる言語を持ってもらわないと困ります。そうでないと、先のサミットで先進国が共同で輸入制限をすると決めた(=市場の規制)、海外の違法伐採木材業者といっしょになります。実際、私が調査で知る限りででも、数社の民間の素材業者は森林環境に配慮した施業方法を模索されています。

しかも、近年林野行政は森林組合だけではなく民間素材生産業者を支援してきました。特に、緑の雇用対策事業では、緊急雇用対策と連動させて都会の若者が民間の素材業者にも就業しています。一人前の林業労働者になるまでの資金が民間にもかなり補助され(1人当たり300万円)、そして県が集団研修を実施し、林業が地球温暖化対策にいかに寄与するのか等を学んでいます

緑の研修生の中には、環境問題に興味を持ち、自分の仕事が環境を守ることに繋がるとやり甲斐を感じて仕事をしようと思ったのに、実際民間事業体に入ったら、儲からないからと経済論理だけで山荒らしの伐採を行い、ひいては新聞で・・・。

今回の大々的な報道で、非常に辛い思いをしているのではないか・・私は何人か研修生と会って、話をしたこともあるので、とても心配しています(緑の研修生の1人からメールを頂きました)。彼らを失望させず、誇りをもって働ける環境産業として脱皮すること、それを応援したいと思います(第5回九州森林フォーラムで取り上げる予定)。
(佐藤/福岡)

健全化への一歩

2005年07月23日 17時11分49秒 | <日々徒然・イベント>
 伐採施業規制問題の本質から議論がずれているようですので、少し書きます。
 戦後の林業政策は確かに大きなひずみをつくっています。私も3セクの不採算製材工場は今後はどんどんリストラされるべきだと思います。補助金行政のゆがみもそのとおりだと思います。その点は別にもっと広く展開をすべきとも思います。
 ただこの議論は、その問題以前に、経済しか優先しない、市場の価格の低さだけを言い訳にして行なわれる、自然と山村社会とみんなの水を破壊する行為を、出来るだけしなくて済むようにしようとする議論です。言わば自己批判で、良識のある社会性が最後は最優先するだろうという性善説によっています。

 まず、「ヤマアラシが事業として経済性を追求するから、どんなに批判しても言語が相容れない」というのはそのとおりです。
 しかしこの論理の根本的なズレは、いまや経済性の追求が全てを優先する時代ではないということです。経済性を追求しながら環境も考えるのが、今の経済の存在基盤です。トヨタも、サントリーも、アサヒも、地場建設業者も環境を考えないと利益追求する自分達の存在を肯定できないのです。ユーザーが支持しないと誰も明日がないのが最新の経済原則です。ゆえに、環境破壊してつくられた木材などだれも買いません。今は業界で隠蔽しているから流れているだけです。もっと言えば健全に施業している木材もひっくるめて悪者になっています。膿を出さないと健全な未来はありません。最も強い敵は常に内部にあるのです。
 本来環境との共生産業として先端を行くべき林業が、最も遅れてしまっているのは本当に残念です。

 あるルートによると、G8での違法伐採規制の合意を受けて、かなりの確度で「ちゃんと森を守っている木材」はグリーン購入の対象になるそうです。具体的にはおそらく森林認証材になります。全森連もSGECを全国に広げるキャンペーンを張る予定です。業界内部で足を引っ張る方がいない限り実現するでしょう。(これが一番怖い。内部でごちゃごちゃしているうちに結局フェアトレードとして外材にシェアを持っていかれる)
 国は100%、地方自治体は大多数、企業の60%近くはグリーン購入を指示しています。(残念ながら個人の意識はまだまだですが…)

 林業が儲からないから山が荒れ、国土が守れないから金をくれでは、環境税の二の舞で誰もわかってくれません。「ちゃんと地球を守っている材料を提供するシステム」をつくり、それをユーザーに明示し、使っていただく努力が要ります。
 その意味で、これから一番重要になるのは、自己批判に基づく木材業界の構造改革(流通改革)、意識改革、そして情報開示です。
 1週間くらいで30%乱高下する市場のどこが健全なのでしょうか。材の品質でなく、市場の都合で形成される価格に一喜一憂する状況に、山主が何時までついていけるでしょうか。
 私は、とても心配です。(諸塚村/矢房)

規制の副作用

2005年07月23日 13時26分33秒 | <山の現状・林業家>
もっと林業の根幹に流れるモノを考えていただきたいと思います。 あらゆる規制は現状を停止させる即効性は有りますが、長期に亘っての創造性は削がれる危険性もあることを戦後の農業政策が証明しています。

確かに、ヤマアラシと言われる人達の作業の結果がこの様な事態を招きました。 しかし彼らは事業をやっている訳ですから経済性を追求します、どんなに批判しても彼らは別な次元で山を考えている訳ですから言語が相容れない話です。 台風被害後の一部放棄林を救ったのは彼らですし、高性能林業機械のお題目に乗らされたのも彼らの一部です。もし出来れば、即効性のある事は彼らに別の仕事を作る場を与えることかもしれません。機械の有償借り上げもいいでしょうが.....。

問題の本質は木を切らなければお金が循環しない山の仕組みを税制も含めて考え直すタイミングと努力を怠ってきたからだと思います。  規制と保護に囲まれた農業は現在では外部からの刺激が必要とされる産業になりました。  
戦後、規制や保護に薄く早くから自由化の嵐の中で成長してきた民間林業や木材業の成長を削いだ要因に3セク事業が多いことをご存知でしょうか? 宮崎の3セク工場の殆どが単体決算では膨大な赤字を出し続けています。 これは福岡でも共通、一部を除きほぼ全国レベルでしょう.....。 生産性を追及する施設を作れば原価の低下も求めることになることをどうして考えなかったのか不思議です。  木材の流通の簡素化を旗印に公費を使い結果として過剰流通を招き木の値段を下げ山の価値を下げた政策にあるわけです。

いろんな問題が潜みますが、ヤマアラシが生まれた背景には山主の林業放棄や間違った産業政策があります。 公金を投ずるべきは林業放棄林を囲い込み団地化して長期の政策を反映する林地に改造していく地道なお金の使い方が必要ではないでしょうか? そこには健全な森林政策理念の基に行なわれる新しい産業が生まれる可能性があると信じます。

これだけ下がった山の価値を受け止める為にどれだけの資金が必要でしょうか? 砂防工事の代金でどれだけの山が救えるか??3セク工場に注ぎ込む税金でどれだけの山が生き永らえるか....ぜひ計算してみてください驚くほどの面積になると思います。

ちなみに、日田地区はここ1週間くらいで原木最低価格時より30%ほど上昇しています。市場はまだ需給の健全な相場を形成しています。
(吉弘/福岡)


大面積皆伐、未植栽地の記事について

2005年07月22日 22時24分53秒 | <山の現状・林業家>
 先の人吉・球磨地方の大面積皆伐の報道に続いて、今日からは熊日の記事で識者のインタビューが掲載されています。僭越ながら私にも機会が与えられるということで、本ブログで議論したことなどについて話をしました。

 メールで知らない方からもコメントを数通頂きました。

 市場流通が山荒らしの木材も込みで扱っている以上、木材のトレーサビリティを求める活動を進める必要があると思いました。
 (佐藤/福岡)

森林体験ツアーを開催します

2005年07月14日 14時55分59秒 | <日々徒然・イベント>
㈱トライ・ウッドで「第14回きやどん体験ツアー」を開催します。
先週からの雨で上津江でも大小の山崩れが起きましたが、体験ツアーに参加したことのある方にはお見舞いの連絡を下さる方もいて、町の人が山のことを忘れずにいてくれるのがとても嬉しかったです。
今回のツアーでは、山の下刈り体験などを行う予定で、山の人と町の人の繋がりが広がるように張り切って準備中です。詳しくは http://www.try-wood.com/taiken.htm に掲載しています。企画の中で、何か良い案などあったら、是非教えて下さい。
(丸山/上津江)

伐採についての環境基準を。

2005年07月10日 14時36分49秒 | <山の現状・林業家>
私も伐採についての環境遵守基準とその規制強化が早急に必要だと思います。そのためには森林法を強化すべきです。日本では伐採制限は保安林(水源涵養保安林で20ha・・これも甘い)のみで、保安林以外は「伐採届け出」をすることになっていますが、ほとんどの県でこれがきちんと運用されていない。

戦後、日本の林政はいかにきちんと植林させるかが課題だったので、造林補助金を出したところについては、県職員が造林検査をするしくみがあり、造林者も基準遵守をしないといけないという了解があります。しかし、伐採時期になっているのに、伐採のルール化は行われず、野放図になっています。先の「伐採届け出制度」さえも守られていません。一部では保安林も許可を受けずに伐採されているようです。

これに対して、ヨーロッパの国では、例えばEUに統合されて伐採量が増加しているチェコでは保安林ではなくても、最大皆伐面積の制限が3haと規制されています(日本よりも平坦地でかつ雨量が少ないのに3haですよ!)。これ以上だと不法伐採となります。リトアニア(上限皆伐面積8ha)でも同様で、予算額など日本よりもはるかに少ないにも係わらず、伐採に関する統計数値(不法伐採面積と素材生産量など)もしっかりしていました。日本では伐採方法別(皆伐面積ごとの伐採量など)の統計などありません。他の多くの国でも、伐採に対する基準は厳しく規制されています。

日本ではあらゆる分野で規制緩和が叫ばれていますが、まず今山で何が起こっているのかを一般市民に知らせて、環境に関する規制は必要なことを訴えるべきです。九州各県でも「森林環境税」が導入されつつあるのに、森林環境を守ることが担保されていない。規制を強化した上で、環境基準を守っている経営には「環境直接支払い」などの政策的な助成を行うことが必要です。現森林法の下で、県レベル、市町村レベルの条例等でどの程度対応できるのか、不勉強でわかりませんが、いずれにせよ山村住民、下流域住民の声があって始めて行政は動くものだと思います。

林野庁では、海外に対しては違法伐採キャンペーンをやっていますが、国内の山荒らし(一部では甘い現森林法においても明らかに違法がある)についても、きちんと対処しないと、京都議定書に森林が寄与するどころか、逆になりかねません。
(佐藤/福岡)

木材価格は誰が決める?+自然を守る施業規制は?

2005年07月10日 12時11分44秒 | <山の現状・林業家>
 聞くところによると、吉野もひどい状況だそうです。相場は九州の方がましという話もある。
 正確な数字を知っている訳ではないので、判断はしかねますが、市場の圧力構造から明らかに需要側から強いデフレ圧力がかかっており、それに理事長の報告であったように肝心の市場自体が自殺行為(金融機能不全の資金ショート対策。これが全ての元凶)に終始しているため、適正価格の形成機能が麻痺し、さらに物流機能までなくそうとしている。
 
 ちなみに「山荒らし」も深刻です。
 素材生産業者が立木を買い、禿山にするだけでなく「材を高く買うため」と称して全幹集材(倒した材を枝葉付のまま一ヶ所に集め、そこで枝葉を落として玉切りする)して枝葉を大量に一箇所に集積して逃げていく。残った山は水のコントロールが出来ず大雨が降ると大災害を誘発しています。
 周辺町村も数百ヘクタールの植林放棄の大規模伐採が進んでいますし、肝心の諸塚村でも外部の前述のやりっぱなし型の素材生産業者が入ってきつつあります。
 今年中に全幹集材の「施業方法規制」を村で実施するようにお願いしていますが、担当課は「法的な根拠が弱い」とあまり良い返事がありません。早急に「改善指導」ではなく、「作業規制」あるいは罰則規定のある「森林施業基準法」的な公的規制をしないと手遅れになります。
 「材が安いから経費を落とそう」という引き算の論理では自然は守れません。何か良い方法はないでしょうか。(諸塚/矢房)

原木市場調査に行ってきました

2005年07月09日 14時16分17秒 | <山の現状・林業家>
昨日、日田の原木市場調査に行ってきました。ここでも6月はスギが8千円を割り込んでいました。確かに、台風だけの影響ではないですね。

本来、市場メカニズムの下では、「新たな需要」が発生すれば価格は上がる、価格が下がれば市場への供給量が減るというのが原則です。しかし、今は集成材のラミナー需要という「新たな需要」(安い曲がり材を買い支えるというのがふれ込みでした)が発生しても価格はあがらない。価格は下がっても、需要量以上の供給があって価格が下がるといった全く逆の動き。価格破壊状態です。

前者の価格は、佐賀の伊万里工場着で1m3が1万円、日田の市場価格で8千円が採算ライン(柱1本1800円を前提とした逆算)だそうです。問題は原木段階でラミナーという「新たな需要」といっても、製品になれば無垢材と競合し、集成柱が一般となれば結局は原木段階での買いたたきという矢房さんご指摘の状況になると思います。

もう一方の、価格が下落しても供給される原因として、よく間伐補助金の存在が指摘されています。特に、県単の間伐材出荷助成など。しかし、昨日の話ではそれだけではない。主伐材のかなり(昨日いった市場で1/3程度?)は価格下落しても再造林がなされない山荒らしの山から出材されています。更に、木材市場は価格下落に加えて出材量まで減ったら、手数料収入が激減するということもあって、量を確保するために自ら材を集めています(所有者との交渉、専属素材班の派遣など)。つまり、生産と消費の結節というだけではなく、自ら生産を規定している。

以上のような構造の中で、まともに森林を経営して、後生に森林を残こすことがほとんど不可能な程になっています。こうしたことをデータに基づいて、実証的に明らかにすることが必要だと考えています。
(佐藤/福岡)