「中国の大盗賊」からみる尖閣諸島問題
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101010/plc1010101802003-n1.htm
最近、中国の異質ぶりが浮き彫りとなる出来事が相次いでいる。尖閣諸島沖でおきた中国漁船衝突事件での日本への報復措置、ノーベル平和賞をめぐり服役中の民主活動家、劉暁波(りゅう・ぎょうは)氏に授与しないようノーベル賞委員会(ノルウェー)にかけた圧力。エスカレートする中国の対応をみて、北朝鮮の核問題を巡る六カ国協議取材のため、たびたび北京を訪れた際、同僚記者に勧められた「中国の大盗賊・完全版」(高島俊男著、講談社現代新書)を思いだし、改めて読み直してみた。
同書では「中華人民共和国は、中国の歴史上、漢、明につづく強力な盗賊王朝である」と規定。漢の初代皇帝劉邦(りゅうほう)、明の初代皇帝朱元璋(しゅげんしょう)ともに「盗賊」だとする。ほかにも唐末の黄巣(こうそう)や明末の李自成など都を攻略した人物はいるが、長続きしたのは漢(約400年)と明(約300年)だった。
そして、毛沢東率いた中国共産党についても次のように記述している。
「王朝末の混乱時代に生まれあわせた一人の豪傑が、自分の集団を作り、あるいは既成集団を乗っ取って自分の私党とし、国内の政敵を実力で打倒し帝位につき、その後はまず自分に白い眼を向けるインテリや愛想よく尻尾を振らぬ官僚をやっつけ、つぎに建国の功臣たちを粛清し、ついには私党そのものを破壊して、天下を身内一族のものにしようとする:という伝記と、大筋において少しもちがわぬのである」と。
もちろん、北朝鮮のように毛沢東の子孫が権力の座を継承してはいないため、いまの中国は王朝とはいえないかもしれない。だが筆者は中国共産党軍が、地方の山中や農村地帯に拠点をつくり、各地を転々としながらも力を蓄えて、ついには都市を襲撃して政権を奪取した毛沢東のやり方を「歴史上の盗賊がとったやりかた」と同じと位置づけた。
そのうえで、「マルクス主義を信仰し、不平知識人が指導し、貧しい農民の味方を標榜(ひょうぼう)する、一大盗賊集団」「一つの盗賊集団が漸次壮大になってついに政権を奪取する」ととらえた。
そもそも筆者は「盗賊」の定義として、(1)官以外の(2)武装した(3)実力で要求を通そうとする(4)集団ーと規定している。
同書を読むと、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件に際しての中国側の対応も理解できるといえよう。尖閣諸島はれっきとした日本の領土である。ところが、中国は、この諸島周辺の東シナ海海域における石油資源が有望視され始めた1970年ごろから「領有権」を主張しだした。
いま中国がやっていることは、官以外の漁船が集団で押しかけることで、「領有権」の要求を押し通そうとしている。尖閣諸島の周辺海域に漁業監視船「漁政201」と「漁政203」の2隻も派遣しており、官の後押しもある。さらに、9日付の本紙によると、東シナ海のガス田付近には中国海軍の艦艇が展開しているというから、武装もしている。
中国の圧力に屈する形で、日本側は中国人船長を勾留(こうりゅう)延長をしたにもかかわらず、勾留を5日残して突然釈放してしまった。
今回、領土主権、法的管轄権の問題に関して、中国側の「攻勢」に対して日本が譲ることはなかった。しかし、船長を釈放したことで、国際社会に「中国の圧力に屈した」という印象を与えてしまった。
同時に中国は、「自らの要求を強引に通そうとした無礼で横暴なやつ」というイメージをまき散らし、各国に対する警戒を広めたといってもいいだろう。
ノーベル平和賞をめぐっても、中国の外務省高官が今年6月、「(劉氏に平和賞を)授与すれば、ノルウェーと中国の関係は悪化するだろう」と圧力をかけたことがノーベル賞委員会によって暴露されたため、そのイメージを一層強めた。
問題は、今後も今回の衝突事件のようなことが起きるだろうということだ。
菅直人首相は尖閣諸島について「わが国の固有の領土であり、この点に関して日中間に領土問題は存在していない。その姿勢で、これまでも、これからも臨んでいく」と強調はしている。
だが仮に、中国が今後、対応をエスカレートし、最後は武力衝突の可能性も想定しなくてはならなくなった場合、日本政府にそこまでやる覚悟はあるのか。
仮に3000人の漁民、あるいは漁民に扮(ふん)した武装集団がやってきて、尖閣諸島に上陸してしまったら、排除することは難しいだろう。
今回の事件は、自分の国は自分で守らなければならないということを日本国民に痛感させたといえる。当たり前のことだが、いままで当たり前のことが当たり前でなかった。中国の理不尽の要求に屈しないために、日本がやるべきことは「実効支配」を確保することだ。
先の「中国の大盗賊」は「暴力方式で建てた王朝のうち、強くて長続きしたのが正史の本紀にのせられ、弱くてすぐ滅んだのは賊のあつかいになるから、要するに簡単にいえば『勝てば官軍、負ければ賊軍』ということなのである」と指摘している。われわれはそうした歴史を持つ政権を相手にしていることを再認識する必要がある。
2010.10.10 18:00
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101010/plc1010101802003-n1.htm
最近、中国の異質ぶりが浮き彫りとなる出来事が相次いでいる。尖閣諸島沖でおきた中国漁船衝突事件での日本への報復措置、ノーベル平和賞をめぐり服役中の民主活動家、劉暁波(りゅう・ぎょうは)氏に授与しないようノーベル賞委員会(ノルウェー)にかけた圧力。エスカレートする中国の対応をみて、北朝鮮の核問題を巡る六カ国協議取材のため、たびたび北京を訪れた際、同僚記者に勧められた「中国の大盗賊・完全版」(高島俊男著、講談社現代新書)を思いだし、改めて読み直してみた。
同書では「中華人民共和国は、中国の歴史上、漢、明につづく強力な盗賊王朝である」と規定。漢の初代皇帝劉邦(りゅうほう)、明の初代皇帝朱元璋(しゅげんしょう)ともに「盗賊」だとする。ほかにも唐末の黄巣(こうそう)や明末の李自成など都を攻略した人物はいるが、長続きしたのは漢(約400年)と明(約300年)だった。
そして、毛沢東率いた中国共産党についても次のように記述している。
「王朝末の混乱時代に生まれあわせた一人の豪傑が、自分の集団を作り、あるいは既成集団を乗っ取って自分の私党とし、国内の政敵を実力で打倒し帝位につき、その後はまず自分に白い眼を向けるインテリや愛想よく尻尾を振らぬ官僚をやっつけ、つぎに建国の功臣たちを粛清し、ついには私党そのものを破壊して、天下を身内一族のものにしようとする:という伝記と、大筋において少しもちがわぬのである」と。
もちろん、北朝鮮のように毛沢東の子孫が権力の座を継承してはいないため、いまの中国は王朝とはいえないかもしれない。だが筆者は中国共産党軍が、地方の山中や農村地帯に拠点をつくり、各地を転々としながらも力を蓄えて、ついには都市を襲撃して政権を奪取した毛沢東のやり方を「歴史上の盗賊がとったやりかた」と同じと位置づけた。
そのうえで、「マルクス主義を信仰し、不平知識人が指導し、貧しい農民の味方を標榜(ひょうぼう)する、一大盗賊集団」「一つの盗賊集団が漸次壮大になってついに政権を奪取する」ととらえた。
そもそも筆者は「盗賊」の定義として、(1)官以外の(2)武装した(3)実力で要求を通そうとする(4)集団ーと規定している。
同書を読むと、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件に際しての中国側の対応も理解できるといえよう。尖閣諸島はれっきとした日本の領土である。ところが、中国は、この諸島周辺の東シナ海海域における石油資源が有望視され始めた1970年ごろから「領有権」を主張しだした。
いま中国がやっていることは、官以外の漁船が集団で押しかけることで、「領有権」の要求を押し通そうとしている。尖閣諸島の周辺海域に漁業監視船「漁政201」と「漁政203」の2隻も派遣しており、官の後押しもある。さらに、9日付の本紙によると、東シナ海のガス田付近には中国海軍の艦艇が展開しているというから、武装もしている。
中国の圧力に屈する形で、日本側は中国人船長を勾留(こうりゅう)延長をしたにもかかわらず、勾留を5日残して突然釈放してしまった。
今回、領土主権、法的管轄権の問題に関して、中国側の「攻勢」に対して日本が譲ることはなかった。しかし、船長を釈放したことで、国際社会に「中国の圧力に屈した」という印象を与えてしまった。
同時に中国は、「自らの要求を強引に通そうとした無礼で横暴なやつ」というイメージをまき散らし、各国に対する警戒を広めたといってもいいだろう。
ノーベル平和賞をめぐっても、中国の外務省高官が今年6月、「(劉氏に平和賞を)授与すれば、ノルウェーと中国の関係は悪化するだろう」と圧力をかけたことがノーベル賞委員会によって暴露されたため、そのイメージを一層強めた。
問題は、今後も今回の衝突事件のようなことが起きるだろうということだ。
菅直人首相は尖閣諸島について「わが国の固有の領土であり、この点に関して日中間に領土問題は存在していない。その姿勢で、これまでも、これからも臨んでいく」と強調はしている。
だが仮に、中国が今後、対応をエスカレートし、最後は武力衝突の可能性も想定しなくてはならなくなった場合、日本政府にそこまでやる覚悟はあるのか。
仮に3000人の漁民、あるいは漁民に扮(ふん)した武装集団がやってきて、尖閣諸島に上陸してしまったら、排除することは難しいだろう。
今回の事件は、自分の国は自分で守らなければならないということを日本国民に痛感させたといえる。当たり前のことだが、いままで当たり前のことが当たり前でなかった。中国の理不尽の要求に屈しないために、日本がやるべきことは「実効支配」を確保することだ。
先の「中国の大盗賊」は「暴力方式で建てた王朝のうち、強くて長続きしたのが正史の本紀にのせられ、弱くてすぐ滅んだのは賊のあつかいになるから、要するに簡単にいえば『勝てば官軍、負ければ賊軍』ということなのである」と指摘している。われわれはそうした歴史を持つ政権を相手にしていることを再認識する必要がある。
2010.10.10 18:00