今、自衛隊の在り方を問う!

急ピッチで進行する南西シフト態勢、巡航ミサイルなどの導入、際限なく拡大する軍事費、そして、隊内で吹き荒れるパワハラ……

沖縄島に配備されようとしている、南西シフト態勢下の地対艦ミサイル部隊――琉球列島弧でのミサイル戦争を阻むために!

2019年05月21日 | 自衛隊南西シフト
 沖縄島に配備される地対艦ミサイル部隊


 まず、沖縄島における陸自地対艦ミサイル配備の報道から見てみよう。
 2018年2月27日付朝日新聞、同月28日付の琉球新報は、おおよそ以下のように報じている。
 「沖縄本島に地対艦ミサイル部隊配備検討 中国牽制を強化 沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を中国海軍の艦艇が航行するのが常態化していることから、政府は地対艦誘導弾(SSM)の部隊を沖縄本島に配備する方向で本格的な検討に入った。すでに宮古島への部隊配備は決まっており、海峡の両側から中国軍を強く牽制する狙いがある。
 複数の政府関係者が明らかにした。国家安全保障局や防衛省内で部隊の編成規模などの検討を進め、今年末までに策定される新たな防衛計画の大綱や中期防衛力整備計画(中期防)に盛り込む方向だ。」(朝日新聞)
 
 琉球新報も、ほぼ同内容の記事だ(上写真)。この報道以後の昨年12月、新中期防策定で沖縄島でのミサイル部隊配備は決定された。新中期防では、新たに地対艦ミサイル部隊の3個中隊を新編成すると明記しており、この3個中隊が、宮古島・石垣島とともに沖縄島へ配備されるミサイル中隊であるということだ。

 防衛省は、すでに宮古島にミサイル部隊司令部を置く、としていることから、沖縄島のミサイル部隊も、この1個中隊を構成するものといえる。ただ、地対艦ミサイル連隊の基本編成は、4個中隊で編成されることから、奄美に編成された地対艦ミサイル部隊が、この沖縄島・宮古島のミサイル部隊と同一連隊に編成されるのかは、明らかではない。

 「島嶼防衛用高速滑空弾部隊・2個高速滑空弾大隊」は沖縄島ー宮古島配備か?

 問題は、沖縄島における地対艦ミサイル部隊の配備が、この12式地対艦ミサイルに留まらないことだ。すでに、新防衛大綱・新中期防においては、「島嶼防衛用高速滑空弾部隊・2個高速滑空弾大隊」の編成を決定しており、この部隊の配備先が、沖縄島ー宮古島になる可能性が大である。
 いわゆる「島嶼戦争」下の琉球列島弧=第1列島線の通峡阻止作戦(海峡封鎖)において、宮古海峡が重要なチョークポイントになることは明らかだが、この宮古海峡の両岸には、高速滑空弾大隊が配置が予測される(早期装備型のブロック1は、2025年度を目途に実用化、性能向上型のブロック2は2028年度までに実用化される)。


 沖縄島などへのミサイル部隊の配備は、これだけには留まらない。次から次へと新たなミサイル部隊が、開発・配備されようとしている。図は、すでに防衛省が予定している巡航ミサイルだ。


 これには、米軍の「AGM-158C LRASM」(射程370~926㎞)、スエーデンの「RBS-15Mk.3」、ロシア/インドの共同 開発による「BrahMos」を提案候補にされている。いずれにしても、自衛隊にとっては、初めての巡航ミサイル導入であり、これらの巡航ミサイルは、島嶼間のミサイル戦だけでなく、中国大陸の沿岸も射程内に入ることになる。


 そして、陸自の地対空ミサイルに加えて、空自もまた、スタンド・オフ・ミサイルの導入配備をすでに決定している。この戦闘機から発射されるミサイルは、千㎞前後の射程を持ち、文字通り、沖縄島から中国大陸に向けて発射が可能であり、大陸が射程内に入るのだ。

 ミサイル戦の戦場と化する沖縄島ー琉球列島弧

 沖縄島での地対艦ミサイル配備に始まり、高速滑空弾部隊配備(極高速滑空弾の開発も!)、巡航ミサイル部隊配備と、今まさに、先島―南西諸島ー沖縄島が、ミサイル戦の戦場とされつつある。
 この凄まじい実態が、沖縄島の人々にどの程度知られているだろうか? あるいは、このミサイル戦場と化しつつある「現実」が、どの程度のリアリティをもって伝わっているだろうか?

 残念ながら、南西シフト態勢下の、「島嶼戦争」=海洋限定戦争の実態、琉球列島弧=第1列島線をめぐる海峡戦争=通峡阻止作戦の実態が、伝わっている、知られているとは言えない。2018年の米政権「国家安全保障戦略」(NSS)」などの「対中ソ競争戦略」の発動、つまり、新冷戦の宣言以来、米中・日中の軍拡競争が激化していることは、知られている。だが、今始まっているのは、新冷戦下(「Warm War」ともいう)の軍拡競争とともに、「平時から有事へとシームレス」(防衛白書にいう)に進行していく戦争の危機なのだ。


 言い換えると、琉球列島弧=東シナ海の内側へ、中国船舶・軍艦を、いつでも封じ込める、中国の世界貿易・経済を封鎖する態勢づくりが進みつつあるということだ。これを天皇制国家・旧日本軍は「砲艦外交」と称していたが、まさしく軍事力を背景とした力の外交政策なのだ(空母配備は、その砲艦外交の道具。例えば米空母の朝鮮半島近くへの遊弋は、軍事的圧力の行使。また、先の国会で、日米豪英のACSA締結に続き、仏加のACSAが成立し、安倍・トランプのインド太平洋戦略が発動されつつあることも注意)。

 沖縄島ー先島―南西諸島の戦場化に抗す!

 昨年秋、岩屋防衛大臣は、琉球新報にインタビューにおいて「南西諸島は日本防衛の最前線だ」と宣言した。この岩屋の言動を認めてはならない。これを許容してはならない。岩屋は、再び沖縄ー南西諸島を戦場化することを宣言したのだ。沖縄の人々を盾にして「本土防衛」することを宣言し実現しようとしているのだ。

 日米軍、特に自衛隊の予定する「島嶼戦争」は、文字通り先島―南西諸島の「海洋限定戦争」(第1列島線封鎖態勢)として想定されている。つまり、沖縄ー南西諸島ですさまじいミサイル戦争ー機雷戦→海上・航空戦を予定しているということだ。この「島嶼戦争」においては、島々はまさしく一木一草も生えない土地となるだろう。
 そしてまた、一旦開始された戦争が限定されるということはない。この戦争は、不可避的に西太平洋での「通常型大戦」にまで、少なくとも発展する(制服組官僚どもは「島嶼限定戦争」を夢想するが、一旦始まった戦争は「自己運動」し暴走する)。
今進行している事態は、このような重大な危機の始まりなのだ。

 この危機的事態を止めるためにこそ、沖縄島でのミサイル部隊配備を食い止め、宮古島を初めとする先島でのミサイル部隊配備を食い止めねばならないのだ。