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今、自衛隊の在り方を問う!

急ピッチで進行する南西シフト態勢、巡航ミサイルなどの導入、際限なく拡大する軍事費、そして、隊内で吹き荒れるパワハラ……

「即位の礼」における自衛隊の「礼砲」などの違憲・違法行為を糺す―これは「天皇の軍隊」への変節だ!

2019年10月08日 | 軍事・自衛隊
 天皇の「即位の礼」における、自衛隊の「礼砲」(21発)の発射は、自衛隊諸法令違反であり、憲法第1条違反だ!



 政府・自衛隊は、10月22日の天皇の即位式行事である「儀じょう、礼砲、奏楽及びと列の実施要綱(案)」において、自衛隊による「礼砲」を行うことを決定している。
 以下の通りである。
「自衛隊による礼砲 天皇陛下に対し祝意を表するため、万歳三唱時に、皇居外苑北の丸地区内(北の丸公園第2駐車場)において、陸上自衛隊による礼砲を行う。」

 

 この今回の即位の礼の「礼砲」発射は、1990年11月の明仁天皇の即位の礼の「礼砲」(21発)を踏襲したものだ。1991年防衛白書は以下のようにいう。
 「皇位の継承に伴い平成2年11月に行われた「即位礼正殿の儀」において、礼砲を実施したほか、「祝賀御列の儀」においては、皇居正門前および赤坂御所正門前で儀じょうを実施するとともに、赤坂御所までの途上でと列および奏楽を行った。当日、これらの任務に就いた者は、陸・海・空各自衛隊員、防衛大学校・防衛医科大学校学生約1,250名にのぼった。」(なお、1989年の裕仁天皇の「大喪の礼」でも「礼砲」21発の発射)


 自衛隊の「礼砲」発射(21発)は、自衛隊諸法令違反

 自衛隊施行規則第14条の3は、「礼砲は、大臣が公式に招待した外国の賓客が日本国に到着し及び日本国を離去する場合並びにその他大臣が国際儀礼上必要があると認めた場合に際し、国際慣行に従って行う」
 また、「自衛隊の礼式に関する訓令」は、「(礼砲を行なう場合)として、「第90条 礼砲は、次の各号に掲げる場合において、防衛大臣の定めるところにより行なう。
(1) 防衛大臣が公式に招待した外国の賓客が日本国に到着し及び日本国を離去する場合 (2) 防衛大臣が国際儀礼上必要があると認める場合」と明記する。

 さらに、「栄誉礼等及び礼砲の実施要綱について(通達)」(2014/7/24)は、「第1 国賓等に対する栄誉礼等及び礼砲の実施」として、「外国の元首、首相その他の要人が、国賓又はこれに準ずる賓客として公式に日本国を訪問する場合であって国際儀礼上必要があるときは、自衛隊は、外務大臣の要請により、当該要人の到着時及び離去時、東京国際空港等において、栄誉礼等(栄誉礼及び儀じょうをいう。以下同じ。)及び礼砲の全部又は一部を行なうものとする。」としている。

 見ての通り、自衛隊での「礼砲」の実施は、「大臣が公式に招待した外国の賓客が日本国に到着し及び日本国を離去する場合」(施行規則)「外国の元首、首相その他の要人が、国賓又はこれに準ずる賓客として公式に日本国を訪問する場合」(通達)の規定であり、天皇の即位式などの規定はどこにも見当たらない。
 このように、自衛隊の諸法規にない「即位の礼」における「礼砲」発射・実施は、明確に法令違反である。このような違法行為が、「天皇儀式」の名の下にまかり通ろうとしているのだ。

 自衛隊の「礼砲」発射(21発)は、憲法第1条違反だ

 しかも、即位の礼における「礼砲」発射(21発)は、明らかに憲法第1条違反である。先の通達は「礼砲の実施」について以下のように定めている。
 「礼砲の実施は、次によるものとする。」
1 外国の賓客に対する礼砲
(1) 防衛大臣が公式に招待した外国の賓客(以下「外国の賓客」という。)に対する礼砲は、外国の賓客が日本国に到着し及び離去するときに、東京国際空港等の適当な場所で、次号によって定める礼砲数を3秒ないし5秒間隔で発射して行うものとする。
(2) 礼砲数は、次に掲げるものの区分に応ずる礼砲数を基準として、国際慣行を尊重し、その都度定めることとする。
ア 国旗、元首 21発
イ 首相その他の国賓 19発

ウ 閣僚、陸海空軍大将 17発
エ 陸海空軍中将 15発
オ 陸海空軍少将 13発
カ 陸海空軍准将 11発
 
 見ての通り、自衛隊の諸規則では、「礼砲21発」は「国旗、元首」だけであり、「首相其の他の国賓」は「礼砲19発」なのである。つまり、かつての即位の礼にしても、今回の即位の礼の「礼砲21発」(政府は前回踏襲と)についても、天皇は「元首」として扱われている、ということだ。これは一体、なにを意味しているのか? 結論から言えば、政府・自衛隊が、こういう天皇式典を介して、明らかに皇の元首化――「名誉的統帥権者としての天皇の復活」を企んでいるということだ。
*注 この自衛隊の礼式は、旧日本海軍の「海軍禮砲礼」を引き継いでいる。それによれば「天皇皇后太皇太后皇太后ニ対シテハ皇禮砲ヲ行ウ」(第2章第21條)、「皇禮砲ノ数ハ二十一発トス」(同第22條)と明記されている。 http://navgunschl2.sakura.ne.jp/IJN_houki/PDF/T030131_kaigunreihourei_S2002mod.pdf

 自民党改憲案の「天皇の元首化」と自衛隊

 2012年(2014年)に発表された自民党改憲案第1条は、以下のように明記している。
 「第1条  天 皇 は 、 日 本 国 の 元 首 で あ り 、 日 本 国 及 び 日 本 国 民 統 合 の 象 徴 であ っ て 、 そ の 地 位 は 、 主 権 の 存 す る 日 本 国 民 の 総 意 に 基 づ く」(「日 本 国 の 元 首 で あ り 」のみ追加)

 多数の憲法学者は、日本国の元首は、内閣総理大臣であり、天皇は元首ではないとしている。これに対し、歴代の自民党政府は、天皇が対外的に元首とされていることを唱えているが、自民改憲案に「天皇の元首化」の明記を求めているのは、この元首天皇制(象徴天皇制の否認)へ回帰しようという意図である。
 自衛隊制服組は、創設時から一貫して「自衛隊の精神的支柱としての天皇」、そして「天皇の名誉的統帥権の確立」が必要と主張してきている。
 1970年代から本格化した、毎年の高級幹部会同後の「天皇への拝謁」(や堵列)もまた、こういう制服組の企みの中で、着々と実現されてきたのだ。

 問題は、この天皇と自衛隊の結びつき――「天皇の名誉的統帥権」という「戦前回帰」の反憲法的事態が、即位の礼での「礼砲発射」という形で、実現されようとしていることだ。そしてこれは、明らかに憲法第1条違反(象徴天皇制の否定)なのである。
 重要なことは、このような重大な事態が、一連の天皇行事というキャンペーンの中で、有無を言わせず進行していることだ。

 即位の礼の自衛隊の「儀仗隊」も「堵列」も、自衛隊諸規則違反だ


 先の政府の「実施要綱」は、自衛隊の儀仗につい以下のように言う。
「自衛隊による儀じょう 天皇陛下を警衛し、及び天皇陛下に敬意を表するため、天皇陛下が皇居正門を御出門される際、陸上自衛隊による儀じょうを行う。また、天皇陛下が赤坂御所正門に御入門される際、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊による儀じょうを行う。」
 まさしく、自衛隊の「儀仗」は、「天皇陛下を警衛」するために行う、と明らかに明記されている。これほどの露骨な「天皇の軍隊化」があるだろうか?
 そして「天皇の警衛」(警護)というのは、自衛隊法第3条をはじめとする自衛隊のいかなる任務にも定めていない、まさしく完全な違法行為であり、違法出動である。こんな重大な、日本の法体系を破壊する違法行為が、「即位の礼」という天皇儀式の下にまかり通ろうとしているのだ。

 さらに「堵列」については、
 「自衛隊によると列 天皇陛下を奉送迎し、及び天皇陛下に敬意を表するため、天皇陛下が赤坂御所正門に御入門される際、権田原交差点から赤坂御所正門までの間の一定の場所において、自衛隊と列部隊によると列を行う。」
 
 いつから自衛隊は「天皇の軍隊」なったのか? 「天皇陛下を警衛」するために即位の礼のパレードで皇居から出発する天皇を自衛隊儀仗隊が護衛する、と。「堵列」もまた「天皇の護衛」である。「堵列」とは、「垣根を作って警護すること」をいう。
 「自衛隊の礼式に関する訓令」は、「と列」について以下のように定めている。

 「第84条 と列は、次の各号に掲げる場合に行なう。
(1) 天皇又は皇族が自衛隊を公式に訪問する場合
(2) 天皇が、地方を公式に視察する場合又は国若しくは地方公共団体の公式の行事に出席する場合で、自衛隊の部隊等の所在する市町村又はその近傍を通過するとき

(3) 皇族が、地方を公式に視察する場合又は国若しくは地方公共団体の公式の行事に出席する場合でかつ、自衛隊の部隊等の所在する市町村又はその近傍を通過する場合において、特にと列をもつて送迎することが適当であると幕僚長が認めるとき

 見て明らかなように「と列」は、天皇などが「自衛隊を公式に訪問する場合」と、天皇などが「自衛隊の部隊等の所在する市町村又はその近傍を通過するとき」だけである。前回・今回の即位の礼で行われる、「赤坂御所正門に御入門される際、権田原交差点から赤坂御所正門までの間」が、なぜ「部隊の所在する近傍」といえるのか? しかも、前回のケースで明確なように、神奈川県の防衛大学校学生を中心に、関東・全国から動員した「堵列」部隊だ。
 これは、明らかに、自衛隊の訓令にさえ違反した、見え見えの違法行為であり、「天皇の軍隊」への必死の動員態勢である。

 南西シフト態勢下の、「島嶼戦争」下の有事動員態勢と天皇の軍隊化


 今、自衛隊は、日米共同作戦態勢下に、急ピッチで南西シフト態勢をつくり上げ、先島―南西諸島へのミサイル部隊配備ーミサイル戦争態勢を形成しつつある。琉球弧全体が軍事要塞と化そうとしているのだ。この中で、まさしくシームレスに平時から有事事態が始まろうとしている。
 ここでは、自衛隊員らの生死が問われる事態が、少なからずおとずれる。このとき、制服組が一貫して主張しているのが、「天皇の名誉的統帥権」、つまり、「天皇の命令による戦死」ということなのである。アベ氏のような「腐敗した政治家の命令」(自衛隊の最高指揮官・元首は首相)では、命は賭けられない、ということである。
 だが、こういう天皇と軍隊の結びつき・一体化こそ、かつてのような侵略戦争に、自衛隊が「軍部」として突き進んでいく事態をつくり出していくのだ。
 自衛隊の「天皇の軍隊」としてのなし崩し的な登場を決して許容してはならない。即位の礼という天皇キャンペーン下で行われつつある、この違法・違憲状態(礼砲・儀仗・堵列実施)を徹底して糺さねばならない! 

深刻化する南西シフト態勢を水路とする日中の軍拡競争(「島嶼戦争」の危機)に対し、全野党・平和勢力は、直ちに軍拡停止ー軍縮を要求しよう!

2018年11月29日 | 軍事・自衛隊
 日中の軍拡競争(「島嶼戦争」の危機)に対し、全野党・平和勢力は、直ちに安倍内閣に軍拡停止ー軍縮を呼びかけよう!


 (ヘリ護衛艦「いずも」、もともとは「改修空母」の予定として建造)

 安倍政権・自衛隊は、年末に予定する「新防衛計画の大綱」策定をめぐって、凄まじい軍拡キャンペーンを始めた。
 F35Bの導入ー「いずも型」ヘリ護衛艦の空母への改造、F35(A・B)の100機購入(1兆円規模)、敵基地攻撃能力を有する巡航ミサイル、スタンド・オフ・ミサイル、そしてイージス・アショアの強硬的導入、宇宙への軍拡……。――自民党・自衛隊は、このために「防衛費2倍化」を要求している(現在、国際基準でGNP1・3%と公表)。
 
 この大軍拡の口実が「安全保障環境の変化」と称する、中国との対抗的軍拡だ(煽りに煽った「朝鮮半島の危機」は消えつつある!)。これは、すでに東西冷戦後の南西シフトとして始まっていたが、2010年のアメリカのエアシーバトル構想ー新防衛計画の大綱で一挙に具体化し、2017年、トランプ政権の「国家安全保障戦略」(NSS)」、米国防省の「国家防衛戦略(NDS)」で、全面化ー対中・対ロ競争戦略=対中抑止戦略として本格化している(新冷戦の始まり)。

 「島嶼防衛戦」と言えば、全ての軍拡が許容されるのか?

 そして、このアメリカの対中抑止戦略下の、日米共同作戦態勢として始まっているのが、自衛隊の「島嶼戦争」=東シナ海戦争(琉球列島弧封鎖態勢)なのだ。今や、このような日米の共同作戦態勢下の戦争態勢作りが、先島―南西諸島において急ピッチで始まっている。

 2016年、与那国島では、新基地が完成し、宮古島・奄美大島では、2018年度末に向け、新基地開設への突貫工事が行われており、石垣島では、来年2月の着工態勢が始まっている。さらに、種子島ー馬毛島には、米軍FCLP(空母艦載機着陸訓練)基地だけでなく、自衛隊の事前集積・機動展開・上陸演習拠点として、またF35B、対潜哨戒機(P3C)の新基地としての、文字通りの要塞化が発表され、動き出しつつある。
 つまり、「中国の脅威」、「島嶼防衛戦」と言えば、全ての軍拡が許容されるとする、とんでもない風潮が生じているのだ(特にマスメディアの沈黙の中で)。

 (宮古島・石垣島・奄美大島、沖縄本島などに配備予定の12式地対艦ミサイル)

 日中の「小衝突」ー「島嶼戦争」が不可避の情勢に!

 この情勢が進めば、日中の一触触発――島嶼戦争は不可避である。自衛隊の南西シフト態勢は、あらかじめ「島嶼防衛戦」がシームレスに発展することを予測している。このために、自衛隊はすでに統合幕僚監部による「対中・統合防衛計画」の策定、米軍との「対中・日米共同作戦計画」の策定を発表した。
 事態は、恐るべき危機的情勢へと突き進みつつある。――日中の軍事的小衝突、その繰り返し→「島嶼戦争」→日米の通常戦型の「太平洋戦争」勃発という事態へである。
 (参照「遂に自衛隊が「対中国・日米共同作戦計画」の策定開始―急ピッチで進行する東シナ海戦争計画)
  https://blog.goo.ne.jp/shakai0427/e/d39a4e689cb8bb7217d0d40a49304309

 日本と中国の軍拡停止―軍縮へ――東シナ海の「非武装地帯宣言」へ

 この着々と進む、深刻な戦争の危機を打開するためには、今、何が必要なのか? 
 結論から言えば、全野党・平和勢力が一致して、日本と中国の軍拡の即時停止→軍縮交渉に直ちに入るべきことを、安倍政権に強力に要求することである。トランプ政権は、もちろん反対するだろう。だが、アジアの平和は、アジアの民衆が主導することなしには実現しない。「アメリカ帝国」の「アジア太平洋の覇権の独占」をいつまでも、野放しにしておく訳にはいかない。

 1922年締結のワシントン海軍軍縮条約による島嶼要塞化の禁止  

 現在、アジア太平洋地域の軍拡競争の始まりは、1920~30年代の軍拡競争に類似しているが、このような、アジア太平洋地域の軍拡を阻み、軍縮へと導いた貴重な経験を、日本はもっている。
 第1次世界大戦直後、アジア太平洋は、凄まじい軍拡競争へとたたき込まれたが、この大軍拡の時代において、1922年、ワシントン海軍軍縮条約による島嶼要塞化の禁止が締結され、実行された歴史があるのだ。
 この年、米・英・日は、軍艦の保有数を制限した軍縮条約を締結(主力艦の対英米比6割、いわゆる5:5:3への制限)したが、この中では、アジア太平洋地域の「要塞化禁止条項」も結んだのだ。

 それによると、なんと日本政府の提案によって、太平洋の各国の本土、および本土にごく近接した島嶼以外の領土について、現在存在する以上の「軍事施設の要塞化」が禁止されたのである。
 日本に対しては、千島諸島・小笠原諸島・奄美大島・琉球諸島・台湾・澎湖諸島、サイパン・テニアンなどの南洋諸島の要塞化を禁止した。アメリカに対しては、フィリピン・グアム・サモア・アリューシャン諸島の要塞化禁止した。
 だが、1930年代において、戦争の危機が深まってくると、例えば日本の場合、サイパンのアスリート飛行場(現サイパン国際空港)を始め、秘密裡の軍事化が始められた。重要なことは、この時代でさえもアジア太平洋地域の急速な軍拡の危機に対して、各国の島嶼の非軍事化が推し進められたということだ。
(1921年12月13日、日本・アメリカ・イギリス・フランスによって調印、1922年8月5日批准、1923年8月17日公布の4箇国条約。正式には「太平洋方面に於ける島嶼たる属地及島嶼たる領地に関する四国条約」。この条約では、太平洋諸島の締約国相互の権利の尊重と紛争の平和的解決が謳われ、条約の締結により日英同盟は廃棄)。

 しかし、こうした努力にも拘わらず、日本は1934年12月、単独でワシントン海軍軍縮条約を破棄を決定し、アメリカに通告した。1936年、ロンドン軍縮会議からの脱退も通告。こうして軍縮条約は実行力を失い、第二次世界大戦に向ったのだ(この直後から、サイパン・テニアンなどの軍事化が始まり、続いて1944年には沖縄・宮古島などの先島諸島で基地建設が始まる)。

 だが、あのアジア太平洋戦争の時代の軍縮の努力は、決して無駄だったとは言えない。私たちに、歴史の教訓をリアルに残している。翻って、私たちは、あの時代ほどの努力をしているのだろうか? 今進行している事態――南西シフトを水路とした日中の軍拡競争の始まりを、ただただ見過ごしているだけではないのか? SNSには、日中の相互依存関係の中で、戦争が起きるわけがない、だとか、核戦争の時代に「島嶼占領・奪還」とか、あり得ない、だとか、「大国・中国を敵にして地対艦・空ミサイル配備」など空論だ、とか、などの軍事的現実(無知)を見ようとしない主張が溢れている。

 (おおすみ型輸送艦に乗船する水陸機動団[ホバークラフト])

 しかし、なんども繰り返すが、「島嶼戦争」はシームレスに、一発の銃声から始まるのだ(日中間にはホットラインが確立していない)。この小衝突の繰り返し、「力による外交」、つまり、日米の「インド太平洋戦略」(姑息にも「構想」に名称替え)のもとの、「力による、軍事力による外交」(砲艦外交)、つまり、中国(軍)の琉球列島弧(第1列島線、実際は中国沿岸へ)への封じ込め態勢づくりが推し進められているのである(宮古海峡などの封鎖)。この政治的目的は、日米によるアジア太平洋の覇権の絶対的確保ということだ。

 まさしく、このような内容と目的をもって、安倍政権による年末の「新防衛計画の大綱」の策定が推し進められようとしている。
 しかし、本当に日本(と中国、アジア)の民衆は、こんな中国との対決を望んでいるのか? 再びアジア太平洋で戦争が始まることを望んでいるのか?
 そうではない。マスメディアの、この南西シフト態勢の隠蔽(報道規制)の中で、先島―南西諸島への基地建設の事実さえ知らされていないのだ。いわんや、この南西シフトが何を意味するのか、という軍事的解説など皆無だ。
 
 だから、この急ピッチで進行する先島―南西諸島への新基地建設の事実ー南西シフト態勢の意味、「島嶼防衛戦」のもとに進む「東シナ海戦争」の現実を、広く知らせねばならない。
 この事実の認識によって、日中の軍拡停止ー軍縮(そして最終的には、南西諸島の「非武装地帯宣言」)を民衆の手で勝ち取ることができるだろう。

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*要点ー要塞化禁止条項
・日本の提案により、太平洋における各国の本土並びに本土にごく近接した島嶼以外の領土について、現在ある以上の軍事施設の要塞化が禁止された。
・日本ー千島諸島・小笠原諸島・奄美大島・琉球諸島・台湾・澎湖諸島、そして将来取得する新たな領土(内南洋のこと)の要塞化禁止、奄美大島以外の奄美群島は対象外、対馬は太平洋に面していないので条項の対象外
・アメリカーフィリピン・グアム・サモア・アリューシャン諸島の要塞化禁止、アラスカ・パナマ運河・ハワイ諸島は対象外
・イギリスー香港並びに東経110度以東に存在する、あるいは新たに取得する島嶼の要塞化禁止、カナダ・オーストラリア・ニュージーランドは対象外、東経110度以東なので、シンガポール(東経103度)は条項の対象外


*ワシントン四箇国条約本文
太平洋方面に於ける島嶼たる屬地及島嶼たる領地に關する四國條約(ワシントン・1921年12月13日、日本外交年表竝主要文書上巻,外務省,536-539頁)
亞米利加合衆國、英帝國、佛蘭西國及日本國ハ

一般ノ平和ヲ確保シ且太平洋方面ニ於ケル其ノ島嶼タル屬地及島嶼タル領地ニ關スル其ノ權利ヲ維持スルノ目的ヲ以テ之カ爲條約ヲ締結スルコトニ決シ左ノ如ク其ノ全權委員ヲ任命セリ(人名略)

第一條 締約國ハ互ニ太平洋方面ニ於ケル其ノ島嶼タル屬地及島嶼タル領地ニ關スル其ノ權利ヲ尊重スヘキコトヲ約ス締約國ノ何レカノ間ニ太平洋問題ニ起因シ且前記ノ權利ニ關スル爭議ヲ生シ外交手段ニ依リテ滿足ナル解決ヲ得ルコト能ハス且其ノ間ニ幸ニ現存スル圓滿ナル強調ニ影響ヲ及ホスノ虞アル場合ニ於テハ右締約國ハ共同會議ノ爲他ノ締約國ヲ招請シ當該事件全部ヲ考量調整ノ目的ヲ以テ其ノ議ニ付スヘシ
第二條 前記ノ權利カ別國ノ侵略的行爲ニ依リ脅威セラルルニ於テハ締約國ハ右特殊事態ノ急ニ應スル爲共同ニ又ハ各別ニ執ルヘキ最有效ナル措置ニ關シ了解ヲ遂ケムカ爲充分ニ且隔意ナク互ニ交渉スヘシ
第三條 本條約ハ實施ノ時ヨリ十年間效力ヲ有シ且右期間滿了後ハ十二月前ノ豫告ヲ以テ之ヲ終了セシムル各締約國ノ權利ノ留保ノ下ニ引続キ其ノ效力ヲ有ス
第四條 本條約ハ締約國ノ憲法上ノ手続ニ從ヒ成ルヘク速ニ批准セラルヘク且華盛頓ニ於テ行ハルヘキ批准書寄託ノ時ヨリ實施セラルヘシ千九百十一年七月十三日倫敦ニ於テ締結セラレタル大不列顛國及日本國間ノ協約ハ之ト同時ニ終了スルモノトス合衆國政府ハ批准書寄託ノ調書ノ認證謄本ヲ各署名國ニ送付スヘシ
本條約ハ佛蘭西語及英吉利語ヲ以テ本文トシ合衆國政府ノ記録ニ寄託保存セラルヘク其ノ認證謄本ハ同政府之ヲ各署名國ニ送付スヘシ

太平洋方面に於ける島嶼たる屬地及島嶼たる領地に關する四國條約所屬聲明
大正一〇年(一九二一年)一二月一三日華盛頓ニ於テ署名調印 大正一二年(一九二三年)八月一七日告示
http://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/pw/19211213.T1J.html

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参考文献『自衛隊の南西シフト―戦慄の対中国・日米共同作戦の実態』(第19章 先島―南西諸島の「非武装地域宣言」―かつて南西諸島は非武装地域だった――木一草も生えなくなる「島嶼防衛戦」)からの引用
 
 自衛隊の想定する「島嶼防衛戦」は、平時から有事へとシームレスに発展することが予想されるとしている。このシームレスという表現は、自衛隊の全ての文書に出てくる。
 これは何を意味するのか? 結論を言えば、島民・住民たちが、この戦争を避けて島外へ避難する時間的余裕が全くない、ということである。
 なるほど、国民保護法(武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律)によれば、住民避難が定められている。だが、この場合、政府が「武力攻撃事態」「武力攻撃予測事態」などを認定することが必要であるが、平時から緊急事態へ、有事事態へと切れ目なく移行するこの戦争では、住民避難は不可能だ。
 実際に、自衛隊制服組の島嶼防衛研究では、「島嶼防衛戦は軍民混在の戦争」になり、「避難は困難」とする結果が明記されている。研究の中では、その困難の中で、イスラエルのように各家に地下サイロを造るべき、という見解も出されている。

 実際の「島嶼防衛」の作戦面からも、住民避難は困難だ。この戦争の初期戦闘では、自衛隊が宮古海峡などの主要なチョーク・ポイントに機雷をばらまくことが、作戦上決定的である。つまり、先島諸島だけで10万人を超える住民たちを避難させる輸送手段は、ないということだ。
 実際にも、この住民避難の法律上の実施責任は、自治体であり、自衛隊はそれに「作戦上支障ない限り協力する」というものだ。
 このような、島民・住民の避難が不可能という状況下で、見てきたように「島嶼防衛戦」は、対艦・対空ミサイル部隊が島中を移動し、戦場化する。また、島嶼間の高速滑空弾や、島嶼間の巡航ミサイルなども、雨霰のごとく降り注ぐのだ。
 まさしく、先島諸島などの小さな島々は、一木一草残らず焼き尽くされ、破壊尽くされるだろう。

 南西諸島の「非武装地域宣言」を!

 このような、すさまじい戦争の中で、島々はどうすればいいのか? 結論から言えば、先島―南西諸島は、政府・自衛隊が行おうとするこの「島嶼防衛戦」に対し、世界に向かって「非武装地域宣言」を行い、一切の軍隊の駐留を阻むことだ。
 この宣言は、ハーグ陸戦条約第25条に定められた「無防守都市」であることを、紛争当事者に対して宣言することであり、国際的にも認められたものだ。かつて、フィリピンのマニラをはじめ、この宣言を行った都市も数多くある。

 あまり知られていないが、戦前の沖縄は、国際法上の「無防備地域」であった。これは、1922年、ワシントン条約(米英日仏)で締結された、「島嶼の要塞化禁止」に基づくものである。この条約(ワシントン体制)のもとで、奄美、沖縄本島、先島諸島(そしてサイパン、テニアン、グアムなど)は、1944年3月、沖縄本島、先島諸島への日本軍上陸までは、軍隊・基地は置かれなかったのだ(1930年代半ばからサイパンなどでは、秘密裡に基地建設)。
 この中でも、石垣島は、戦中の1年半という時期を除いて、明治以来およそ150年の間、完全な非武装地域であった。この事実の前に、自衛隊の言う「防衛の空白地帯」などは、単なる屁理屈にしかならない。

[参考条約の要約]
*ジュネーヴ条約追加第1議定書第 59条「無防備地区」……紛争当事国が無防備地区を攻撃することは、手段のいかんを問わず禁止する。紛争当事国の適当な当局は、軍隊が接触している地帯の付近またはその中にある居住地で、敵対する紛争当事国による占領のために開放されているものを無防備地区と宣言することができる。無防備地区は、次のすべての条件を満たさなければならない。
(a) すべての戦闘員ならびに移動兵器及び移動軍用設備が撤去されていること、
(b) 固定した軍用の施設または営造物が敵対的目的に使用されていないこと、
(c) 当局または住民により敵対行為が行われていないこと、
(d) 軍事行動を支援する活動が行われていないこと。

*ハーグ陸戦条約の第 25条「無防備都市、集落、住宅、建物はいかなる手段をもってしても、これを攻撃、砲撃することを禁ず」と定められている。

*日中平和友好条約による「武力による威嚇および覇権を確立」の禁止(1978年)
第一条 1 両締約国は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に、両国間の恒久的な平和友好関係を発展させるものとする。
2 両締約国は、前記の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し及び武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。
第二条 両締約国は、そのいずれも、アジア・太平洋地域においても又は他のいずれの地域においても覇権を求めるべきではなく、また、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国又は国の集団による試みにも反対することを表明する。

*参考資料 ワシントン会議と太平洋防備問題
http://www.nids.mod.go.jp/publication/kiyo/pdf/bulletin_j1-2_7.pdf

自衛隊施設外の陸上での史上発の日米共同訓練反対!ー種子島から

2018年09月11日 | 軍事・自衛隊
日米共同訓練反対!(種子島)
自衛隊施設外の陸上での史上発の日米共同訓練反対!
<抗議集会>
1.日時 2018年9月14日(金) 18時~集会とデモ
2.集会会場 中種子島中央公民館
http://syamin.chesuto.jp/c43609.html
#自衛隊 #南西シフト #沖縄 #宮古島 #石垣島 #奄美大島


水陸機動団と米海兵隊ーフィリピン軍との共同演習を批判する

2018年09月11日 | 軍事・自衛隊
水陸機動団と米海兵隊の「災害派遣」訓練というのは嗤ってしまいますが(水陸機動団の「国民的認知」のため)、場所がフィリピンであり、目的が書かれているように「日米及び日比防衛協力の強化」というのが重大です。

つまり、フィリピンを対中国包囲網態勢に、訓練・武器援助(既に中古品武器を援助)を通じて、とりこもうという魂胆です(中国もフィリピンに対抗的援助)。安倍政権(=アメリカ)の、東シナ海から南シナ海への介入、「インド太平洋戦略」に厳しい批判が必要です。

ーーなお、米軍はすでにフィリピンへ再登場し、クラーク基地を復活させ、スピッツ海軍基地の再強化へも乗り出しています。