古書肆雨柳堂

小説の感想。芥川龍之介、泉鏡花、中島敦、江戸川乱歩、京極夏彦、石田衣良、ブラッドベリ、アシモフ、ディック

『猿の惑星』ピエール・ブール

2006-05-14 22:51:32 | SF

 リメイク版も作られてくらい、映画で御馴染のSFです。

 主人公は宇宙飛行士ユリス・メルー。未知の宇宙への探検中、2名のクルーとともにと惑星ソロールに不時着します。地球と似ている惑星・・・人間もいる、しかし異なるのは惑星の支配者は猿だったのです。

 仲間とはぐれ、猿達にとらわれたメルー。ヒトの知能を調べる
実験場にサンプルとして牢に入れられました。彼はサルたちの言葉を真似、ピタゴラスの定理の証明を書くなどし、自分に知能があることをアピールします。
 数理は宇宙普遍の真理ということですね。

 それを察知したのがチンパンジーの女性ジラです。彼女は彼の知性を隠しながら、
彼を助けてやります。なぜ隠すのか?ソロールではサルはヒトから進化したというのが定説になっており、それがサル達の文明を支えているのです。
 その反証たるメルーはサル文明には不都合な存在なのです。

 ジラはメルーを知性ある存在としてサルのように尊重してくれました。そして彼女の恋人コルネリウスにメルーを紹介します。彼は文明の起源について研究していたのです。
 今までの調査から、ソロールの文明は一万年前に突然出現し、しかもすでに現在と同じレベルであったという結果を得ています。サルは模倣能力に優れている。ではその起源においては、何の文明を模倣したのか?これが最大の謎なのです。つまりサル以前に優れた文明を持った知的生物がいたのではないかと。

 つまりヒトなのですが、コレウネリウスそしてジラはサルが優位であるという心情と
学者としての良心のディレンマに悩みます。

 「サルは四本足によって知性が発達した。四本足によって巧みに木に登ることができ、物事を空間的に把握することができ、知性が発達した。しかし人間は大地の呪縛から逃れることができず、知能の発達が止まってしまった。」
 
 もっともな理屈ですが、われわれはこれは真実ではないと知っています。
とまれ、このことは我々が真と信じている学説にも同様の過ちがあるのではないか?という疑問を提示しています。

 万物の霊長というが、人間の文明の高度さ単に器用さが長じたもの。つまりサルマネとの違いは程度の違いで、本質的な違いはないのではないか?つまり魂や理性などは・・・



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