古書肆雨柳堂

小説の感想。芥川龍之介、泉鏡花、中島敦、江戸川乱歩、京極夏彦、石田衣良、ブラッドベリ、アシモフ、ディック

山本耀司 NHK視点論点 文学にみる戦争

2006-08-23 23:03:37 | その他

 この中で山本耀司が自分の過去における戦争の風景を語ります。
彼自身は戦争に参加した年代ではありません。
彼にとっての戦争は子供のころ見た、出征した父親とその死という思い出です。

 それを受け入れられずいるなか、
坂口安吾を読んだことを取り上げています。

 戦争は彼にアイデンティティを問うたようです。
 戦争の思い出を持つ山本耀司と、デザイナーとしての山本耀司が
この点で関わってきます。
 
「僕のとってまだ戦争は終わっていない。
 パリで最初のコレクションを発表してから25年。
 常に定冠詞のようにthe Japaneseと呼ばれ続け、
 そして今だにそう呼ばれる

 日本、日本人、Japanese。いやがおうにも濃くなる意識の中で
 なぜおれはこの仕事を続けているのだろうと自問自答する時。
 最近変なのは誰かに後ろから押されている感じがするのである。
 せっかく負けたのだから、
 あの馬鹿馬鹿しい戦争にせっかく負けたのだから
。」


Good serch,good life. 『秋葉原@DEEP』

2006-08-22 23:25:14 | ミステリ

 石田衣良著『アキハバラ@DEEP』と実社会の関りを発見したので
一つお話させていただきます。

 作中で主人公達はクルークというサーチエンジンを開発します。
これはAI型サーチエンジンで、四つ人格
ジャンパー(跳ねるもの)、ラウンダー(ぐるぐる回るもの)、
オポーザー(反対するもの)、ネイバー(となりに住むもの)
から成っています。
 これらの働きによって、ユーザーはマンネリに陥ることなく
新たな情報に触れられる、水先案内人のような存在。
ユーザーを育ててくれるサーチエンジンなのです。

 これだけ情報が氾濫する現在では、「検索格差」が予想されます。
かつてはパソコン等の技能・情報環境によって、
格差が生じる「情報格差」が問題とされていましたが、

 次は、膨大な情報から適切な情報を得る能力の有無によって
格差が生じうる段階がくるかもしれません。
それだけでなく、(クルークのようなサーチエンジンを用い)
新たな検索の展開を得ることにって、
受け取る利益に差が生じうるかもしれません。

 ところで毎日新聞に
 「検索コンテスト」が開催されていた、という記事がありました。
 しかも優勝者が専門エンジニアを差し置き、
一般サラリーマンが優勝したということです。
 さらに彼はこの能力生かすため、サイト運営会社に転職したそうです。

 つまり、これは検索能力が社会的に有用である技術である
と認知されていることを示しています。
 この優勝者はインタヴューで、検索のコツを述べておりました。
例えば「専門学校一覧」という情報が欲しい場合、
「○○専門学校一覧」で検索しても出てこないそうです。
それより、「○○専門学校、池袋、新宿・・・」と具体的な地名を
入れたほうがHITするそうです。

 う~んなるほど、検索もひとつの能力なんですね~

 歴史に残る書というのは、新しい価値観や生き方を提示するなど
もちろん小説はフィクションですが、実社会にコミットメントしている
点があると思います。 
 この点でこの作品も意義深い作品といえると思います。
 
 この作品で新たに提示しているのは、インターネットにおける検索が
人生を豊かにするという新たな価値感です。
「よい人生とはよい検索だ。」
 


『ケロロ軍曹』吉崎観音

2006-08-21 23:28:30 | 漫画

 今日は宇宙人についてお話したいと思います。
宇宙人モノといいますとウェルズの『宇宙戦争』以来、
侵略してくるのが定番ですね。

 宇宙人はいるのかな、と想像するのはワクワクしますが、
侵略されてはたまりません。
          
 こんど来た宇宙人はなんかカエルっぽいぞ。
でもあっさり子供につかまったり、ガンプラ作ったり頼りない。
まあ、侵略されずに大助かりですが。

 でもまがりなりにも宇宙を渡り、侵略してくるくらいですから、
技術力は侮れません。強力な兵器を持っています。

 最たるモノは『地球人一掃ミサイル』ですな。
ちなみに「地球人」と書いてポコペン人と読みますよ。
第6巻末「ケロロ軍曹百科」にこう書いてあります。

「地球の表面を3度焼き払う威力を持つ兵器。
しかし宇宙では破壊はダサイという風潮があり
使用される事はないだろう。」

 人類を滅亡させるのに一度で十分なのに
3度も焼き払えるなんて恐ろしいですね。
これは勝ち目がありません。
 
 って、核兵器だよー。
こんなもの宇宙人が持っているのはもっともですが
人類は自分で持っているんだもんな。
アイロニーが効いています。


『青い炎』 貴志祐介

2006-08-20 00:08:40 | ミステリ

ベストシーン
「静かな激怒が、ひたひたと心を満たしていく。
それは、今までの、真っ赤な炎のような怒りとは、異なっていた。
秀一の脳裏で輝いていたのは、鮮やかなブルーの炎だった。
最も深い思索を表す色
だが、その冷たい色相とは裏腹に、
青の炎は、赤い炎以上の高温で燃焼する。」(第3章末)

 動物に比して人間の行動は意識的といえます。
それを賢いと言い換えることもできます。

 しかしすべての人間が、
そして同一の人間がいつでも
意識的であるわけではありません。

 考えて行動することは非常に疲れます。
だからなのでしょうか、大抵のことは習慣で、
意識的でなくでなくともやり過ごすことができます。
 
 この点から言うと、
この作品の主人公、秀一はとても「賢い」少年です。

 「賢い」をこの意味としますと、
それは
大人や子供
知識の多寡
で左右されるわけではありません。

 この作品は離婚した横暴な元父を
家族から守るため、秀一が彼を殺害する事件を描いています。

 その過程で秀一は、完全犯罪を行うため、
法医学などの専門書を読み、知識を得ます。
しかしそれによって知識を得たから、
あるいはそれを理解できる能力があったから
秀一が「賢い」のではなく、

どうしようもない状況を、
あきらめるのではなく、
思考することを止めず、
自分で人生を切り拓いたから
そういえるのであり、
また魅力的なのである。

その評価は善悪の彼岸にあります。

 そのイメージを具体的に付加している小道具が
ロードバイク(自転車)です。
私もこれを読み、ロードバイクを買いました。


Wakkanai

2006-08-12 09:36:37 | English diary

06,Aug,4th

 I visited Wakkanai city ,the north end of Japan.
There are two famous capes,
Cape Souya,and Cape Nossyappe.

I went to Cape Nossyappe with bicycle.


『インファナル・アフェア』

2006-08-12 09:11:02 | その他

 10年前、同時期に潜入を命ぜられた少年がいました。
 一人は、潜入捜査官ヤン(トニー・レオン)
しかし一方は、マフィアから警察へのスパイでした。彼の名はラウ警部(アンディ・ラウ)。

 そして現代。大規模な麻薬取引の場で二人は相対します。正体を隠し、密かに自分の組織に情報を送る二人、「正体ばれるんじゃねーの?」と手に汗を握る
水面下の攻防が魅せる、ハードボイルドアクションです。

 舞台は西洋化が進んでいる返還前後の香港、警察署内ではイギリス人もおりますし、英語が飛び交っています。そのこともあり、ハリウッド映画と大差ないかな、と思いますが、その精神は異なっております。

 冒頭に仏典から引用された「無間地獄」の説明が出てきます。
 そう、この作品は二人の生き様から仏法の教えをとく仏教説話なのです。

 無間地獄とは八大地獄の一つ、阿鼻で、五逆・謗法の大悪を犯したものが
剣樹・刀山・鑊湯(かくとう)などの苦しみを間断なく受ける地獄のことです。

 運命のままにマフィアとして悪の世界に入っていたラウですが、ヤンの正体を知り、
内面に触れ、「善人でありたい」と改心します。
 そのためマフィアのボスの罪の真相を暴くこと、ヤンの身分を保証することを条件に自分にも善人としての道を歩ませてくれと、ヤンにお願いします。

 もちろんヤンは疑いを持ちますが・・・
銃を突きつけられ相対し、必死に懇願するラウ。 決意が表れています。
しかしそれを突き破る銃声が一発。「仲間」の潜入スパイが、ヤンを射殺したのです。
 「今日からお前がボスだ、頼むよ」当然のように言う、「仲間」。
 ラウが無間地獄に落ちた瞬間です。
 「善人でありたい」と決意しながら、運命はラウを悪の道に留めたのです。
これは報いなのでしょうか・・・