古書肆雨柳堂

小説の感想。芥川龍之介、泉鏡花、中島敦、江戸川乱歩、京極夏彦、石田衣良、ブラッドベリ、アシモフ、ディック

ローゼン・メイデン

2006-12-31 22:18:00 | その他

  パソコンでの通販で気を紛らす引きこもりの男子中学生、ジュン。
いつものように彼のもとに送られてきた商品
―――――それはお人形。

  いわゆるフランス人形。名前は真紅、「彼女」たちは生きているのです。
彼女たちは究極の人形の座を目指して闘っており、(比喩ではなくバトルします)
持ち主はそのパートナー(僕)となり、ジュンの生活は人形たちの喧騒に
巻き込まれていきます。

 最後の闘いの際、右腕を失い、真紅は絶望します。
「これではもう、ジャンクだと。」

 人間のようにしゃべり、動く彼女たちですが、人間と人形は決定的に違います。
それは人形はあらかじめ目的―――――人間に可愛がられるモノという目的を
持って作られるということです。
 不完全な人形は、その存在意義を失うのです。

このことは反語的に「 しかし人間はそうではない」と述べています。
周囲による自己規定(過度の期待)と自己認識との
違いに悩んでいたジュンは、」真紅の戦い様からそれを学び成長していきます。

 


『てのひらの迷路』 石田衣良

2006-12-16 19:14:04 | その他

石田衣良の短編集です。作品の前にどのように書いたか、締め切り前の苦しみとともに(?)述べられていて、半分エッセイのようでもあり、興味深い作品です。例えば『ナンバーズ』では母の死について、『レイン、レイン、レイン』では子供の頃から雨がすきだったこと、『地の精』では土地を購入したことがモチーフとなっています。

『完璧な砂時計』

 タイムキーパーという係りがテレビにはあるそうです。この作品の主人公はアナウンサーですが、時間に偏執的です。ですが、神経質な人という感じはなく、作品の雰囲気はファンタジーのように感じました。

 あること、この場合は時間の正確さ、について異常までのこだわりを持っていることは魔法を持っているのに等しいではないのでしょうか。

<o:p> </o:p>

『ウエイトレスの天才』

 客が何を注文したか全て覚えているウェイトレス。こういうのも「職人技」といえるでしょう。人々に広く知られることはなくとも、このような職人はどこにでもいるものなのでしょう。このような人は本当に尊敬できます。このような人とお話してみたいものです。

 食べるのが大好きな彼女。男性の前で小食ぶるより、より魅力的に思えます。

<o:p> </o:p>

『書棚と旅する男』

 仕事をやめ夢見ていた悠々自適の生活を始めた男。彼は船旅を楽しむことにしました。そこで一生を掛けて自分にとって最良の一冊を探すために本を読んでいる男性と出会います。自分に合った本を探す―このことは本好きなら共感できるでしょう。しかし彼はその一冊の候補をどんどん絞り、それ以外の本は捨てていくのです。私はなるべく本を捨てたくないので、これは真似できません。
 自分の書棚の本を増やしていくのと一冊に絞っていく。どちらが幸福な読書生活なのでしょう。


プルークボーゲン

2006-12-09 22:29:33 | English diary

<st1:date Year="2006" Day="12" Month="11">NOV 12th 2006</st1:date>

<o:p> </o:p>

Ski season has come!


One day in that term.
I’ve met a man come from
<st1:country-region><st1:place>Australia</st1:place></st1:country-region>.
He is ski instructor.

In winter, he works in <st1:country-region><st1:place>Japan</st1:place></st1:country-region>

in summer (in winter in <st1:country-region><st1:place>Australia</st1:place></st1:country-region>) he works in <st1:country-region><st1:place>Australia</st1:place></st1:country-region>.

<o:p> </o:p>

In general,we are teached in 3 steps,

プルークボーゲン、シュテームターン、パラレルターン.

Is that same in foreign country?

<o:p> </o:p>

I asked him.
All in all, it’s same.

プルーク is “snow plough”.”plough” is .

“plough” is King’s English,

In <st1:country-region><st1:place>USA</st1:place></st1:country-region> “plough” is plow.

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<o:p> </o:p>

常々疑問に思っていたのですが、ボーゲンって何?

シュテームターンのシュテームって何?

(ボーゲンはプルークボーゲンとも聞きますが・・・)

また、ボーゲン→シュテーム→パラレルターンという
教え方は世界標準なのか?

<o:p> </o:p>

そんな中、オーストラリアから来たスキーインストラクターと話す機会があったので、
聞いて見ました。
 やはりこの3ステップで教えるそうです。

そしてプルークは鍬。畑を耕す、牛のとかで引くあれですね。なるほど~

ところでploughはイギリス英語。やはりオーストラリアはイギリスの影響を受けてんだな。

<o:p> </o:p>

 あ~「ボーゲン」って何なのか聞くの忘れた!


少女には向かない職業

2006-12-02 21:22:27 | ミステリ

「中学二年生の一年間で、あたし、大西葵十三歳は、人をふたり殺した。」

と、え~!な衝撃的な告白で始まるお話。これで「あ~『少女に向かない職業』というのは殺し屋か」と分かります。
 「少女の殺し屋」・・・なんて魅惑的な設定!

しかしその後に

「それであたしが思ったのは、殺人者というのはつくづく、少女に向かない職業ということだ。(中略)少女の魂は殺人には向かない。誰か最初にそう教えてくれたらよかったのに。」と続きます。

 「少女の魂」、読み終わったあとこの一言が、胸に響きます。

<o:p> </o:p>

さらにこう続きます。

「だけどあの夏はたまたま、あたしの近くにいたのは、あいつだけ。宮乃下静香だけだったから。」
「宮乃下静香」に「さつじんしゃ」とルビがふってあります。

 実はGYAOでドラマ化されたものを見ていたので、静香が同級生の友達と知っていたのです。映画では二人は共感できる友達として描かれていたので、「あいつ」「殺人者」となっているのは大きな違いです。

 ドラマでは

「だけどあの夏、あたしたちの近くには誰もいなかった。」

と、二人の結びつきが強かったことが強調されています。友情以上のね。

<o:p> </o:p>

 葵は天然の茶髪であることもあり、お調子者で明るいキャラクターです。でも家には怪我をしてから無気力になり、暴力的になってしまった義父がいて、クラスでの明るい「あたし」とは想像できない暗い一面を持っているのです。

 ところで舞台は下関の島。

あたしはマックで友達たちと陽気におしゃべりする反面、関門海峡に面した、廃材なんかが置いてあるところで黄昏たりしています。DS片手に。

「あたしがこんなだなんて、サチ(友達)たちは思いもしないんだろうな。」

 そんな心を休める場所で、おかっぱでメガネを掛けていて本ばかり読んでいるクラスで目立たない感じの宮乃下静香に出会います。


I LOVE モーツァルト

2006-12-02 21:19:15 | その他

石田衣良によるモーツァルト案内である。『池袋ウエストゲートパーク』の主人公、マコトはBボーイファッションであるがクラシックを好んでよく聴いているが、クラシックはもっと気軽に楽しめるものですよ、という作者のメッセージが本書でよく分かる。

 クラシックのとっつきづらさは何なのであろう。偉大な作曲家たちの曲も当時では流行の曲だっただろうし、異端視されていたものもあるはずだ。学校でならうからよくないんはないんかな、なんか権威づけされていて。
 それと様々なコード(用語、取り決め)がわからないからではないだろうか。例えば『ティベルティメント へ長調 K138』まず「ティベルティメントってわかんねぇよ」とそこでストップしてしまう。ちみなみに「娯楽・気晴らし」を意味するイタリア語で、バラエティ番組のような娯楽用音楽らしい。

このように分かれば、タイトルを聴いて「これは俺に合いそうだな」と気軽に楽しめるのではないだろうか。このような解説もあり、よい入門書であると思う。


少女には向かない職業

2006-12-02 21:14:24 | ミステリ

「中学二年生の一年間で、あたし、大西葵十三歳は、人をふたり殺した。」

と、え~!な衝撃的な告白で始まるお話。これで「あ~『少女に向かない職業』というのは殺し屋か」と分かります。
 「少女の殺し屋」・・・なんて魅惑的な設定!

しかしその後に

「それであたしが思ったのは、殺人者というのはつくづく、少女に向かない職業ということだ。(中略)少女の魂は殺人には向かない。誰か最初にそう教えてくれたらよかったのに。」と続きます。

 「少女の魂」、読み終わったあとこの一言が、胸に響きます。

<o:p> </o:p>

さらにこう続きます。

「だけどあの夏はたまたま、あたしの近くにいたのは、あいつだけ。宮乃下静香だけだったから。」
「宮乃下静香」に「さつじんしゃ」とルビがふってあります。

 実はGYAOでドラマ化されたものを見ていたので、静香が同級生の友達と知っていたのです。映画では二人は共感できる友達として描かれていたので、「あいつ」「殺人者」となっているのは大きな違いです。

 ドラマでは

「だけどあの夏、あたしたちの近くには誰もいなかった。」

と、二人の結びつきが強かったことが強調されています。友情以上のね。

<o:p> </o:p>

 葵は天然の茶髪であることもあり、お調子者で明るいキャラクターです。でも家には怪我をしてから無気力になり、暴力的になってしまった義父がいて、クラスでの明るい「あたし」とは想像できない暗い一面を持っているのです。

 ところで舞台は下関の島。

あたしはマックで友達たちと陽気におしゃべりする反面、関門海峡に面した、廃材なんかが置いてあるところで黄昏たりしています。DS片手に。

「あたしがこんなだなんて、サチ(友達)たちは思いもしないんだろうな。」

 そんな心を休める場所で、おかっぱでメガネを掛けていて本ばかり読んでいるクラスで目立たない感じの宮乃下静香に出会います。


石田徹也遺作集

2006-12-02 21:08:20 | その他

初めて彼の作品と出会ったのは東京現代美術館の常設展だった思います。彼がメインの展覧会ではなかったのですが、この不気味な表情に衝撃を受け、これは面白い!と思い「石田徹也」とメモを取ったのです。
 その後たまたまテレビで彼のドキュメントもやっていて、この作品集を購入しました。・・・不気味。でも不気味というのは、何か本質を突いているからだと思います。自分の欠点を指摘されると腹がたつように。

 写真は『燃料補給のような食事』・・・まさにその通り!ウマイ!
 でも彼は2005年に既に夭逝しています。素晴らしい作品はもう創られない・・・。


I LOVE モーツァルト

2006-12-02 21:05:35 | その他

石田衣良によるモーツァルト案内である。『池袋ウエストゲートパーク』の主人公、マコトはBボーイファッションであるがクラシックを好んでよく聴いているが、クラシックはもっと気軽に楽しめるものですよ、という作者のメッセージが本書でよく分かる。

 クラシックのとっつきづらさは何なのであろう。偉大な作曲家たちの曲も当時では流行の曲だっただろうし、異端視されていたものもあるはずだ。学校でならうからよくないんはないんかな、なんか権威づけされていて。
 それと様々なコード(用語、取り決め)がわからないからではないだろうか。例えば『ティベルティメント へ長調 K138』まず「ティベルティメントってわかんねぇよ」とそこでストップしてしまう。ちみなみに「娯楽・気晴らし」を意味するイタリア語で、バラエティ番組のような娯楽用音楽らしい。

このように分かれば、タイトルを聴いて「これは俺に合いそうだな」と気軽に楽しめるのではないだろうか。このような解説もあり、よい入門書であると思う。

池袋ウェストゲートパークⅥ

2006-12-02 20:59:59 | その他

《灰色のピーターパン》

 フィギュアショップでマコトが出会ったのは、7万もするフィギュアをポンと買う名門小学校の細い黒縁メガネの男子小学生。その直後受けた依頼は偶然彼からのものだった。金払いも大人びているが、トラブルも子供とは思えない。彼がしている盗撮ビジネスの分け前を寄越せと高等部の不良に強請られているという、どこかのヤクザにでもありそうな話しだ。

<o:p> </o:p>

《野獣とリユニオン》

 もしあなたが暴行の被害者となり、その犯人が刑期を終え、同じ街に住んでいるのを見かけたらどうするか。復讐/寛容?
 フランス革命において市民社会が徹底した個人主義を標榜したように、今日の社会はどんな人間も生活を脅かされない権利がある。犯罪者が隣に住んでいたら、眉を顰めたくなるが、たとえ犯罪者であっても同様である、刑期を終えたならば罪を償ったのであり、自由に生活する資格がある。
 そうでなければ「犯罪者を更生させ、市民の一員として復帰させる」今日の刑法体系を否定することになる。これを否定するならば、「悪人は更生不可能だから、二度と許してはならない、追放か処刑すべきだ。」という非常に機会の失われた社会になってしまう。

 マコトがお膳立てした、犯罪者と被害者の握手、その見事な手際に酔いしれて下さい。


《駅前無認可ガーデン》

今回の舞台は駅前にある深夜営業の幼稚園である。連日キャバクラ嬢などが子供を預けにくる。お役所の通りの営業時間では彼女たちは子供育てることも、仕事を続けることもできない。現状を省みない規則は彼女や子供達を不幸にするだけである。

《池袋フェニックス計画》

「子供に住みやすい健全な街を」というスローガンで行われた池袋浄化作戦。つまり飲み屋や風俗店の取り締まりである。

 永遠のテーマであるが、人間は無菌状態では生きられない。

マコトに常連のエミーカが、実質より分かりやすい成果を求めているだけの行政の矛盾を鋭く指摘する。

「どうして、興行ビザでちゃんと入管に登録しているわたしたちが、お客にお酒つくるだけでつかまるのかなあ。外国人パブに踏み込んで、女の子十人も摘発するなら、極悪の窃盗団やカード偽造団捕まえるほうが、ずっとみんなのためになるよ。」